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第5章
第93話
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明けて翌日、気分よく爽快な気持ちで掛布団を足元の方に畳んで綺麗にして、敷布団からゆっくりと体を起こす。ユリアさんの故郷では昔から布団を使って寝起きしているとは聞いたことがあったが、見た目もその感触も実家で使っていたものと遜色がなかった。さらには元々は来客、しかも、ただの来客ではなく地位の高い者や存在自体が一段も二段も上の存在の者が宿泊するようなので寝具を含めて全てが里の中で作られている最高級の家具たちが設置されている。なかでも女性陣はこの里が加工する最高級の木材によって生まれた檜風呂に満足の笑みを浮かべていた
今日も俺が一番最初に起きてきたようだ。この借りている綺麗な庭園のある屋敷の広い庭に出る。そこに相変わらずの万能の空間拡張されたテントを設置する。今までは俺一人で使用していたので一人用のテントの大きさだったが、姉さんたちも一緒に行動するようになった事で出入りに関して俺なりに気を遣ってテントの外観と出入り口の大きさや広さを変更した。元々はただのテントでいいと思っていたのだが、故郷の里の錬金術師の力を借りた際に調子に乗ってテントの方にも色々と手を加えたのだ。その手を加えた結果の機能の一つが外観の変化だ
「皆して調子に乗って飲み過ぎてるから朝はかる…………」
「カイル、ガッツリとして食べ応えのある朝食を頼む。腹が減ったぞ。………もしかして朝食はこれか?」(モイラ)
「カイル君、気を遣って貰って嬉しんだけどね。私たち、今は身体機能の方は特に制限してないから、消化器官の方も普段の何倍に戻っているわ。だから、大丈夫よ」(リナ)
「…………そうでした。いつもの感覚でいたので、自然と軽いものを作ってましたね」
「昨日の食堂から食事を貰ってくる?」(ユリア)
「いえ、大丈夫ですよ。少し時間かかるけど、いいよね?姉さん」
「構わん。食事に関してはお前に一任している。これに関しては私たちは文句を言う権利はない。だから、好きにやれ」(レイア)
「了解」
姉さんがそう言ってくれたので、皆が起きてくる前に準備していた軽めの朝食は綺麗に包装や保存できるようにして完成した料理用の空間拡張・時間凍結された少し大き目の鞄に仕舞いこんでいく。これらは後々自分で処理したり、再びメリオスに戻った際に孤児院の子供たちやスライムアニマルたちに振舞ったりする事になる。そのまま二十分ほどしてから姉さんたちには熱々の出来たての料理の数々を作っては食卓に出しを繰り返す
姉さんたちは次から次に食卓に出される料理を次々にその小さい口に入れて平らげていく。モイラさんがガッツリとと言う事なので俺も朝から相当量の料理を作っていく。結局、皆が満足したのは作り始めてから大体二時間くらいになった。まあ、それでもこの世界の朝は早いので二時間たったといってもまだまだ日が昇って直ぐの時間帯には変わりない。転生直後から早寝早起きの規則正しい生活だったために朝早く起きることも簡単になり、次第にそれが普通になっていった
「昨日も言ってたけど、本当にいいの?」(ユリア)
「ああ、問題ない。働かざる者、食うべからずだ。それに、我々が最初に言われたように客人であって同じ隠れ里に住む仲間なのだ。仲間の為に手伝いがしたいと思う事は当たり前だろう。ユリアもそこまで私たちに気を遣う事はない。まあ、モイラほど無遠慮なのも困るがな」(レイア)
「……そうね。じゃあ、少し食後の休憩をしてからお爺様の所に往きましょう。全員で一緒の仕事をするの?それとも、別々?」(ユリア)
「………別々でいこう。適材適所だ。私たちに食堂の調理補助など出来ると思うのか?」(レイア)
「…………そうね。私の方からそれとなく伝えるわ。必然的にカイル君には調理関係が中心になるけど、いいかしら?」(ユリア)
「ええ、構いません」
それぞれがそれぞれの食後の休憩の過ごし方をする。モイラさんはテントの外に出て、庭で一人でシャドーボクシングなどしている。今は身体機能が竜人族基準の高性能になっているので気持ち悪くなって食べたものを戻したり、なんていう事はなくなるそうなので十分に慣らしとして体を動かしているようだ。本人からしてみれば体操みたいなものだという
リナさんとユリアさんとセインさんの三人はメリオスの戻ってからの孤児院の子供たちとの交流について話し合っている。この三人は俺が孤児院の子供たちと交流をし始めた事に興味を持ち、最初は俺と一緒に訪れていたが次第に何人かだったり俺以外の全員だったりと姉さんたちも孤児院を訪れるようになった。リムリットさんやエマさんとも同じ女性ということもあって直ぐに意気投合し仲良くさせてもらっているそうだ。特にモイラさんはリムリットさんと色んな面で似た者同士であったために姉さんたちの中で殊更に仲が良い。たまに二人で抜け出す事もあるので、戻ってきたときには背中に鬼を背負ったエマさんに説教されている姿をよく見る。エマさんのその姿に子供たちもスライムアニマルたちでさえも体を寄せ合って震えていた
姉さんはメリオスを発つ前に冒険者ギルドに立ち寄ってギルドマスターと暫く離れる事を話し合ったようで、その手にはいくつかの何かの詳細な情報の書かれた書類がある。その書類は魔術競技大会襲撃事件に関する各都市のギルドマスターたちの会議の内容が纏められたものなどらしい。ギルドマスターは姉さんたちに好意的でいてくれるのでメリオスを短期間で何度も離れる事に愚痴を一つも言わないらしい。まあ、高ランク冒険者のパーティーの一つが都市の命運を左右するなどあってはならないという考えらしく、余程のことがなければメリオスに拘束などしないと言われた事があるようだ。今回の遠出に関しても快く送り出してくれたようであった
「じゃあ、往きましょうか」(ユリア)
暫く自分たちの時間を過ごした後に、ユリアさんのお爺さんであるラディスさんのご自宅に伺う事にした。ユリアさんがラディスさんのお屋敷の扉を開けて土間に入る。ユリアさんたち狐人族の里は基本的に日本の昔の農村と一緒で物理的にも魔術的にも施錠をしていない。里の住民全てが信頼の絆で結ばれているので、扉自体は誰でも開けることが出来るようになっている
「お爺様~、起きていらっしゃいますか~?」(ユリア)
ユリアさんの玄関先での問いかけに数秒してから訪れたのはラディスさんではなかった。現れたのはユリアさんに顔立ちのよく似た二人組の男女だった。髪色も瞳の色もユリアさんと同じで、その背には六本の尻尾が揺らめいている
「ユリア、お帰りなさい。レイアさんたちもお久しぶりね」(ユリアさん似の女性)
「うん、ユリアも皆もよく来たね。そして、君がカイル君かい?私はマレク、そして妻のセラ。ユリアからも他の皆からもよく話は聞いているよ。ゆっくりと日々の疲れを癒して、お祭りを楽しんでいってくれ」(ユリア似の男性)
「お父様、お母様。お爺様は?」(ユリア)
「ああ、父さんは朝早くからお二方の所に往ったよ。その後にお祭りの関係者を回って全体の調整をしているはずだよ。ユリアは父さんに用なのかい?」(マレク)
「はい、そうです。レイアたちや私も何かしらのお手伝いでもさせてもらえればと。それをお爺様に相談しようとこちらに来させてもらいました」(ユリア)
ユリアさんがそう言うとマレクさんとセラさんが一度互いに顔を見合わせて、その後に笑顔になって頷く
「お爺様は今は忙しいようだからね。申し訳ないが、代わりに私と妻の方で手が足りなさそうな所にユリアたちを割り振るという事でいいかな?」(マレク)
「はい、それで構いません」(ユリア)
「では、女性陣はこちらに。お手伝いはあの事以外の方がよいですよね?それとも今年はそちらの方に向かいますか?」(セラ)
セラさんの問いかけに女性陣はサッと目を反らす。そんな反応に、その目を反らした中に自分の娘も含まれていることにセラさんは小さく困ったように笑う。セラさんの様子から見るに料理などの家庭的なスキルを磨かずに外の世界に出した事を少し後悔しているのかもしれない
「では、カイル君は聞いている通りに調理関係の方で手伝ってもらってもいいかな?」(マレク)
「はい、大丈夫です」
「では、私についてきてくれ」(マレク)
俺は歩き出すマレクさんについていく。女性陣の方はセラさんがマレクさんの向かう方向とは別の方向に進んでいく。さて、少しでも役に立つよう頑張りますか
今日も俺が一番最初に起きてきたようだ。この借りている綺麗な庭園のある屋敷の広い庭に出る。そこに相変わらずの万能の空間拡張されたテントを設置する。今までは俺一人で使用していたので一人用のテントの大きさだったが、姉さんたちも一緒に行動するようになった事で出入りに関して俺なりに気を遣ってテントの外観と出入り口の大きさや広さを変更した。元々はただのテントでいいと思っていたのだが、故郷の里の錬金術師の力を借りた際に調子に乗ってテントの方にも色々と手を加えたのだ。その手を加えた結果の機能の一つが外観の変化だ
「皆して調子に乗って飲み過ぎてるから朝はかる…………」
「カイル、ガッツリとして食べ応えのある朝食を頼む。腹が減ったぞ。………もしかして朝食はこれか?」(モイラ)
「カイル君、気を遣って貰って嬉しんだけどね。私たち、今は身体機能の方は特に制限してないから、消化器官の方も普段の何倍に戻っているわ。だから、大丈夫よ」(リナ)
「…………そうでした。いつもの感覚でいたので、自然と軽いものを作ってましたね」
「昨日の食堂から食事を貰ってくる?」(ユリア)
「いえ、大丈夫ですよ。少し時間かかるけど、いいよね?姉さん」
「構わん。食事に関してはお前に一任している。これに関しては私たちは文句を言う権利はない。だから、好きにやれ」(レイア)
「了解」
姉さんがそう言ってくれたので、皆が起きてくる前に準備していた軽めの朝食は綺麗に包装や保存できるようにして完成した料理用の空間拡張・時間凍結された少し大き目の鞄に仕舞いこんでいく。これらは後々自分で処理したり、再びメリオスに戻った際に孤児院の子供たちやスライムアニマルたちに振舞ったりする事になる。そのまま二十分ほどしてから姉さんたちには熱々の出来たての料理の数々を作っては食卓に出しを繰り返す
姉さんたちは次から次に食卓に出される料理を次々にその小さい口に入れて平らげていく。モイラさんがガッツリとと言う事なので俺も朝から相当量の料理を作っていく。結局、皆が満足したのは作り始めてから大体二時間くらいになった。まあ、それでもこの世界の朝は早いので二時間たったといってもまだまだ日が昇って直ぐの時間帯には変わりない。転生直後から早寝早起きの規則正しい生活だったために朝早く起きることも簡単になり、次第にそれが普通になっていった
「昨日も言ってたけど、本当にいいの?」(ユリア)
「ああ、問題ない。働かざる者、食うべからずだ。それに、我々が最初に言われたように客人であって同じ隠れ里に住む仲間なのだ。仲間の為に手伝いがしたいと思う事は当たり前だろう。ユリアもそこまで私たちに気を遣う事はない。まあ、モイラほど無遠慮なのも困るがな」(レイア)
「……そうね。じゃあ、少し食後の休憩をしてからお爺様の所に往きましょう。全員で一緒の仕事をするの?それとも、別々?」(ユリア)
「………別々でいこう。適材適所だ。私たちに食堂の調理補助など出来ると思うのか?」(レイア)
「…………そうね。私の方からそれとなく伝えるわ。必然的にカイル君には調理関係が中心になるけど、いいかしら?」(ユリア)
「ええ、構いません」
それぞれがそれぞれの食後の休憩の過ごし方をする。モイラさんはテントの外に出て、庭で一人でシャドーボクシングなどしている。今は身体機能が竜人族基準の高性能になっているので気持ち悪くなって食べたものを戻したり、なんていう事はなくなるそうなので十分に慣らしとして体を動かしているようだ。本人からしてみれば体操みたいなものだという
リナさんとユリアさんとセインさんの三人はメリオスの戻ってからの孤児院の子供たちとの交流について話し合っている。この三人は俺が孤児院の子供たちと交流をし始めた事に興味を持ち、最初は俺と一緒に訪れていたが次第に何人かだったり俺以外の全員だったりと姉さんたちも孤児院を訪れるようになった。リムリットさんやエマさんとも同じ女性ということもあって直ぐに意気投合し仲良くさせてもらっているそうだ。特にモイラさんはリムリットさんと色んな面で似た者同士であったために姉さんたちの中で殊更に仲が良い。たまに二人で抜け出す事もあるので、戻ってきたときには背中に鬼を背負ったエマさんに説教されている姿をよく見る。エマさんのその姿に子供たちもスライムアニマルたちでさえも体を寄せ合って震えていた
姉さんはメリオスを発つ前に冒険者ギルドに立ち寄ってギルドマスターと暫く離れる事を話し合ったようで、その手にはいくつかの何かの詳細な情報の書かれた書類がある。その書類は魔術競技大会襲撃事件に関する各都市のギルドマスターたちの会議の内容が纏められたものなどらしい。ギルドマスターは姉さんたちに好意的でいてくれるのでメリオスを短期間で何度も離れる事に愚痴を一つも言わないらしい。まあ、高ランク冒険者のパーティーの一つが都市の命運を左右するなどあってはならないという考えらしく、余程のことがなければメリオスに拘束などしないと言われた事があるようだ。今回の遠出に関しても快く送り出してくれたようであった
「じゃあ、往きましょうか」(ユリア)
暫く自分たちの時間を過ごした後に、ユリアさんのお爺さんであるラディスさんのご自宅に伺う事にした。ユリアさんがラディスさんのお屋敷の扉を開けて土間に入る。ユリアさんたち狐人族の里は基本的に日本の昔の農村と一緒で物理的にも魔術的にも施錠をしていない。里の住民全てが信頼の絆で結ばれているので、扉自体は誰でも開けることが出来るようになっている
「お爺様~、起きていらっしゃいますか~?」(ユリア)
ユリアさんの玄関先での問いかけに数秒してから訪れたのはラディスさんではなかった。現れたのはユリアさんに顔立ちのよく似た二人組の男女だった。髪色も瞳の色もユリアさんと同じで、その背には六本の尻尾が揺らめいている
「ユリア、お帰りなさい。レイアさんたちもお久しぶりね」(ユリアさん似の女性)
「うん、ユリアも皆もよく来たね。そして、君がカイル君かい?私はマレク、そして妻のセラ。ユリアからも他の皆からもよく話は聞いているよ。ゆっくりと日々の疲れを癒して、お祭りを楽しんでいってくれ」(ユリア似の男性)
「お父様、お母様。お爺様は?」(ユリア)
「ああ、父さんは朝早くからお二方の所に往ったよ。その後にお祭りの関係者を回って全体の調整をしているはずだよ。ユリアは父さんに用なのかい?」(マレク)
「はい、そうです。レイアたちや私も何かしらのお手伝いでもさせてもらえればと。それをお爺様に相談しようとこちらに来させてもらいました」(ユリア)
ユリアさんがそう言うとマレクさんとセラさんが一度互いに顔を見合わせて、その後に笑顔になって頷く
「お爺様は今は忙しいようだからね。申し訳ないが、代わりに私と妻の方で手が足りなさそうな所にユリアたちを割り振るという事でいいかな?」(マレク)
「はい、それで構いません」(ユリア)
「では、女性陣はこちらに。お手伝いはあの事以外の方がよいですよね?それとも今年はそちらの方に向かいますか?」(セラ)
セラさんの問いかけに女性陣はサッと目を反らす。そんな反応に、その目を反らした中に自分の娘も含まれていることにセラさんは小さく困ったように笑う。セラさんの様子から見るに料理などの家庭的なスキルを磨かずに外の世界に出した事を少し後悔しているのかもしれない
「では、カイル君は聞いている通りに調理関係の方で手伝ってもらってもいいかな?」(マレク)
「はい、大丈夫です」
「では、私についてきてくれ」(マレク)
俺は歩き出すマレクさんについていく。女性陣の方はセラさんがマレクさんの向かう方向とは別の方向に進んでいく。さて、少しでも役に立つよう頑張りますか
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