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第185話
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魔法と近しいものでありながら、魔法とは根本的に性質が異なる理で、魔に連なる者共が扱ってきた外法。それが暗き闇だと、長き時を生きてきたケルノス様は言った。確かに、あの粗暴な男と身体を使っていた存在が使用していた暗き闇は、この世界の魔法とは似ている様で違うと感じた。
それに粗暴な男と理知的な男は魔法陣を展開していたが、身体を使っていた存在は、魔法陣を一切展開する事なく暗き闇を扱っていた。攻撃に防御にと一瞬で切り替え、自由自在に暗き闇の形状を変化させ、どの様な状況でも対応してきた。しかも、どの攻撃も威力は非常に高く、防御も何ものをも通さぬ程に硬かった。この世界に存在する魔法には、一つの属性にあそこまでの万能性はない。
「魔に連なる者共というのは、魔物の事なんでしょうか?」
『確かに、魔物という存在も魔に連なるものではある。しかし今私が言っているのは、魔物についての事ではない。古き時代より生き続けている存在であり、人という生き物の暗き感情や欲を糧にして成長する、陽の差さぬ闇の世界の住人だ』
「闇の世界の住人、ですか?それは一体?」
『世界には、私の様に人以外の存在もいる。それは人に寄り添って生きる善の存在もいれば、人を食い物にして楽しむ悪の存在もいる。闇の世界の住人とは、後者の人を食い物にする悪の存在の事だ』
「なる程。そんな悪の存在である人外の者たちが扱うのが、外法である暗き闇だという事ですか」
『そうだ。そしてその悪の存在の者たちの一人が、かつてこの地で大きな騒ぎを起こした。この地の人の中にも暗き闇の力に魅入られ、その者に付き従い騒ぎを起こしていった。そんな中この地に生きる一人の男が立ち上がり、善の存在の者たちと手を取り合い、悪の存在とそれに付き従う者たちと相対した』
「その立ち上がった一人の男って、周りから勇者と呼ばれていませんでしたか?」
『うむ、確かにその様に呼ばれていたな。私たちには、何故あの男が勇者と呼ばれていたのか、意味がよく分からなかったがな』
間違いない。ケルノス様が語ってくれた話は、アイオリス王国に古くから伝わる物語、古の勇者と邪悪なる黒き闇との戦いに非常に酷似している。この世界が魔法の存在する世界なので、過去にはそういった戦争や戦いが本当にあったとは思っていたが、多少なりとも誇張された物語だろうと考えていた。だがあの物語が一切の誇張なしだとすれば、あの暗き闇の力は予想よりも遥かに強大だ。闘技場における、まだ全力ではなかったという発言を最後に残していた事も考えるに、暗き闇の力についてかなり上方修正しなければいけないな。
『ここまでの私の説明で、暗き闇や悪の存在についてはある程度は理解出来たと思う。そこで聞きたいのが、何故ウォルターから暗き闇の残滓を感じたのかという事だ。ウォルター、君が暗き闇と出会った時の事を教えてくれ』
「分かりました。ただ、少しだけ話が長くなりますが宜しいですか?」
『構わない。寧ろ、より細かく話してくれると助かる」
「了解です。始まりは…………」
俺はケルノス様に、あの闘技場での急襲から始まり、粗暴な男と理知的な男との戦闘、そして粗暴な男の身体を使った何者かの存在の事を語っていく。最初は穏やかに聞いていたケルノス様だったが、粗暴な男の身体を使った何者かの存在との戦闘や、一方的に話してきた言葉について語ると、顔つきや雰囲気が真剣なものに変わっていった。ケルノス様のその反応から、奴は勇者の物語に出てくる邪悪なる黒き闇と同一の存在、魔に連なる悪の存在そのもので間違いなさそうだ。
それに粗暴な男と理知的な男は魔法陣を展開していたが、身体を使っていた存在は、魔法陣を一切展開する事なく暗き闇を扱っていた。攻撃に防御にと一瞬で切り替え、自由自在に暗き闇の形状を変化させ、どの様な状況でも対応してきた。しかも、どの攻撃も威力は非常に高く、防御も何ものをも通さぬ程に硬かった。この世界に存在する魔法には、一つの属性にあそこまでの万能性はない。
「魔に連なる者共というのは、魔物の事なんでしょうか?」
『確かに、魔物という存在も魔に連なるものではある。しかし今私が言っているのは、魔物についての事ではない。古き時代より生き続けている存在であり、人という生き物の暗き感情や欲を糧にして成長する、陽の差さぬ闇の世界の住人だ』
「闇の世界の住人、ですか?それは一体?」
『世界には、私の様に人以外の存在もいる。それは人に寄り添って生きる善の存在もいれば、人を食い物にして楽しむ悪の存在もいる。闇の世界の住人とは、後者の人を食い物にする悪の存在の事だ』
「なる程。そんな悪の存在である人外の者たちが扱うのが、外法である暗き闇だという事ですか」
『そうだ。そしてその悪の存在の者たちの一人が、かつてこの地で大きな騒ぎを起こした。この地の人の中にも暗き闇の力に魅入られ、その者に付き従い騒ぎを起こしていった。そんな中この地に生きる一人の男が立ち上がり、善の存在の者たちと手を取り合い、悪の存在とそれに付き従う者たちと相対した』
「その立ち上がった一人の男って、周りから勇者と呼ばれていませんでしたか?」
『うむ、確かにその様に呼ばれていたな。私たちには、何故あの男が勇者と呼ばれていたのか、意味がよく分からなかったがな』
間違いない。ケルノス様が語ってくれた話は、アイオリス王国に古くから伝わる物語、古の勇者と邪悪なる黒き闇との戦いに非常に酷似している。この世界が魔法の存在する世界なので、過去にはそういった戦争や戦いが本当にあったとは思っていたが、多少なりとも誇張された物語だろうと考えていた。だがあの物語が一切の誇張なしだとすれば、あの暗き闇の力は予想よりも遥かに強大だ。闘技場における、まだ全力ではなかったという発言を最後に残していた事も考えるに、暗き闇の力についてかなり上方修正しなければいけないな。
『ここまでの私の説明で、暗き闇や悪の存在についてはある程度は理解出来たと思う。そこで聞きたいのが、何故ウォルターから暗き闇の残滓を感じたのかという事だ。ウォルター、君が暗き闇と出会った時の事を教えてくれ』
「分かりました。ただ、少しだけ話が長くなりますが宜しいですか?」
『構わない。寧ろ、より細かく話してくれると助かる」
「了解です。始まりは…………」
俺はケルノス様に、あの闘技場での急襲から始まり、粗暴な男と理知的な男との戦闘、そして粗暴な男の身体を使った何者かの存在の事を語っていく。最初は穏やかに聞いていたケルノス様だったが、粗暴な男の身体を使った何者かの存在との戦闘や、一方的に話してきた言葉について語ると、顔つきや雰囲気が真剣なものに変わっていった。ケルノス様のその反応から、奴は勇者の物語に出てくる邪悪なる黒き闇と同一の存在、魔に連なる悪の存在そのもので間違いなさそうだ。
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