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第145話
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粗暴な男の身体に刻まれた切り傷がパックリと開き、真紅の鮮血が勢いよく噴き出す。普通ならば、これ程の一撃を食らえば致命傷となる。だが相手は一流の魔法使いにして一流の戦士だ。この程度で仕留められると考えるのは危険。このまま追撃したい気持ちを抑え込み、粗暴な男から大きく距離を取る。
そして、その選択は正しかった。粗暴な男から距離を取って後ろに下がった数秒後、俺が立っていた空間が突如漆黒の爆炎に包まれた。それは正しく、粗暴な男の爆裂魔法による爆炎だった。爆炎は勢いよく燃え盛り、そのまま上空へ向けて黒き火柱を立ち上らせる。
(俺に切られる前、左拳による爆裂魔法で迎撃しようとしていた。だが俺の身体も、ロングソードの剣身も、左拳には触れていない。なので、爆裂魔法は発動せずに不発に終わるはずだった。しかし、実際には爆裂魔法が発動している。つまり、爆裂魔法の本質とは魔力で生み出す爆弾による攻撃であって、魔法の発動に際して何かに触れているいないは関係ないという事か)
そうであるのならば、最初から見せていた爆裂魔法の発動の仕方は、一つのフェイクであったという事か。何かに触れる事で発動する魔法であると相手に認識させ、相手が振れない様に対策して攻めて来た所に、隠していた牙で相手を喰らうという流れか。
だが、無傷の俺を見た時の驚きなどは、決して演技とは思えぬものだった。わざわざ相手の攻撃をその身に受ける必要もない。恐らくは、無傷であった事や俺の一振りを食らった事は、粗暴な男には想定外の事だったのかもしれない。粗暴な男が全身に纏っていた魔力の防御壁は、魔力量から考えても非常に頑丈なものである事は間違いない。俺の一振りくらい、難なく止められると甘く考えたのだろう。
「――――チッ!!外したか」
粗暴な男はそう言って、口の中の血を地面に向かって吐き捨てる。おいおい、あれだけ大量の血が噴き出していたのに、もう血が止まってるのか?それに、傷口も僅かに塞がっている様に見えるぞ。一体どうなってんだ?
「ハハハ、驚くよな。必死こいて接近して一撃を与えたと思ったら、僅かな時間で血が止まって、傷も塞がってるんだからよ。それにこうして話している間にも、お前に切られた傷は治ってんだ」
「…………それは回復魔法なのか?」
「回復魔法だと?この力はそんなチンケなものじゃねぇよ。これは、この力は、――――我らが偉大なる主様にいだたいたものだ」
「偉大なる、主だと?」
「そうさ。神々よりも尊き存在であり、全てを漆黒の闇に染める闇そのもの。いずれこの世界の全てを手にする、偉大なる御方だ。その主様からいただいた力で、お前を焼き尽くしてやるよ!!」
禍々しく冷たい魔力が、粗暴な男を中心にして周囲に吹き荒れる。そして、吹き荒れた魔力が収まると、粗暴な男の肌が漆黒のものに変わっていた。さらにガントレットとグリーブの色合いが、より深い闇を思わせる様に濃くなっている。
「主様の力の前に平伏し、絶望しながら死んでいけ!!」
そう言いながら、粗暴な男はその場で腰を回転させて、目にも止まらぬ速さで右拳を放つ。その瞬間、導火線に火が付き、もの凄い勢いでこちらに向かって火が迫ってくるイメージが脳裏に浮かぶ。そして、導火線の先にある爆発物は、粗暴な男ではなく俺だ。
「逃げても無駄だぜ!!大人しく死を受け入れ、その身を灰燼と化せ!!」
粗暴な男の高らかな宣言と同時に、導火線の火が爆発物に到達するイメージが脳裏に浮かぶ。胸の前の空間が揺らめき、魔力が爆発して漆黒の爆炎が溢れ出す。空気が焼き爆ぜ、肌を焼く熱風が吹き荒れる。漆黒の爆炎が襲い掛かり、俺の視界を漆黒で埋め尽くす。
そして、その選択は正しかった。粗暴な男から距離を取って後ろに下がった数秒後、俺が立っていた空間が突如漆黒の爆炎に包まれた。それは正しく、粗暴な男の爆裂魔法による爆炎だった。爆炎は勢いよく燃え盛り、そのまま上空へ向けて黒き火柱を立ち上らせる。
(俺に切られる前、左拳による爆裂魔法で迎撃しようとしていた。だが俺の身体も、ロングソードの剣身も、左拳には触れていない。なので、爆裂魔法は発動せずに不発に終わるはずだった。しかし、実際には爆裂魔法が発動している。つまり、爆裂魔法の本質とは魔力で生み出す爆弾による攻撃であって、魔法の発動に際して何かに触れているいないは関係ないという事か)
そうであるのならば、最初から見せていた爆裂魔法の発動の仕方は、一つのフェイクであったという事か。何かに触れる事で発動する魔法であると相手に認識させ、相手が振れない様に対策して攻めて来た所に、隠していた牙で相手を喰らうという流れか。
だが、無傷の俺を見た時の驚きなどは、決して演技とは思えぬものだった。わざわざ相手の攻撃をその身に受ける必要もない。恐らくは、無傷であった事や俺の一振りを食らった事は、粗暴な男には想定外の事だったのかもしれない。粗暴な男が全身に纏っていた魔力の防御壁は、魔力量から考えても非常に頑丈なものである事は間違いない。俺の一振りくらい、難なく止められると甘く考えたのだろう。
「――――チッ!!外したか」
粗暴な男はそう言って、口の中の血を地面に向かって吐き捨てる。おいおい、あれだけ大量の血が噴き出していたのに、もう血が止まってるのか?それに、傷口も僅かに塞がっている様に見えるぞ。一体どうなってんだ?
「ハハハ、驚くよな。必死こいて接近して一撃を与えたと思ったら、僅かな時間で血が止まって、傷も塞がってるんだからよ。それにこうして話している間にも、お前に切られた傷は治ってんだ」
「…………それは回復魔法なのか?」
「回復魔法だと?この力はそんなチンケなものじゃねぇよ。これは、この力は、――――我らが偉大なる主様にいだたいたものだ」
「偉大なる、主だと?」
「そうさ。神々よりも尊き存在であり、全てを漆黒の闇に染める闇そのもの。いずれこの世界の全てを手にする、偉大なる御方だ。その主様からいただいた力で、お前を焼き尽くしてやるよ!!」
禍々しく冷たい魔力が、粗暴な男を中心にして周囲に吹き荒れる。そして、吹き荒れた魔力が収まると、粗暴な男の肌が漆黒のものに変わっていた。さらにガントレットとグリーブの色合いが、より深い闇を思わせる様に濃くなっている。
「主様の力の前に平伏し、絶望しながら死んでいけ!!」
そう言いながら、粗暴な男はその場で腰を回転させて、目にも止まらぬ速さで右拳を放つ。その瞬間、導火線に火が付き、もの凄い勢いでこちらに向かって火が迫ってくるイメージが脳裏に浮かぶ。そして、導火線の先にある爆発物は、粗暴な男ではなく俺だ。
「逃げても無駄だぜ!!大人しく死を受け入れ、その身を灰燼と化せ!!」
粗暴な男の高らかな宣言と同時に、導火線の火が爆発物に到達するイメージが脳裏に浮かぶ。胸の前の空間が揺らめき、魔力が爆発して漆黒の爆炎が溢れ出す。空気が焼き爆ぜ、肌を焼く熱風が吹き荒れる。漆黒の爆炎が襲い掛かり、俺の視界を漆黒で埋め尽くす。
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