悪役令嬢だからってここまでする ⁉︎

02.

漂い、霧散しそうな意識を手繰り寄せる。

ーー必要、それ ?

何処からともなく、声。

ーーうん。でないと、あたし、私が消えちゃうと思われる。

ーーそうか。

思案げな声を聞く。

あたし、わたしは私だーー。


私はーー









「……さん。……さん 」

「……さん。もう聴こえてないかな。待たせすぎだよね 」


ーーうん。待った気がする。
……て誰だろ。わからない。わから、ない。


「……は君だよ。ごめんね、書類片付けてたら、千年経っててさ 」


千年 ?

は ?

「ここは傷付いた魂の浄化場所だから、皆数百年もすると昇天するんだけどなぁ」

「心残りがある? 」

あ、るーーの、かな?

こてんと、ない首を傾げてみる。

「成る程ねぇ……あの世界は過酷だよ 」

?

「だけど君なら或いはーー 」

な、にをーー


「生きてみる? 」


みる。



「じゃあ、魂の転送を試みるよ 」


うん? うん。


「願わくば、君に幸多きあらんことを 」

あ、りがと


魂に暖かな光が降り注いで、わたしは至福の眠りについた。

やはり、天の国だったんだね。

素晴らしく居心地が良かった。

浄化されてたんだ、私。

てか千年放置とか、笑える。


神様て、時間の感覚、おかしくない? 



私の疑問に誰も応えることなく、そこで私の意識は途切れたーー。











そこまで思い出して、顔面蒼白だよ。

あんなフワフワした所で話した結果が最低最悪の悪役令嬢に転生て……神様、泣いてもいいですか。

私、既に婚約者から嵌められて差し出されて蹂躙されて詰んでますが。

転生て、幼少期に思い出すんじゃないの⁉︎



ーーあああぁぁ。
覚めたくない、覚めたくない。
やめて、意識を浮上させないで。
過酷な現実なんて見たくない。

あんな、あんな踏み躙り方ないーー。

いやいやいや。
信じたい、ライドリアン様ーー。

私は貴方を、貴方だけを

いや

いや


いや

下半身がじくじくと痛い。
痛い、痛い、痛い。

お腹が痛くて気持ち悪い。吐きそう。

終わったーー ?
あの地獄の行為は終わったの?

私は解放された? あの狂人から。


公爵家からの捜索が来てもいい筈。
お父様は精鋭をお持ちだから。

私を奪取する為に動いてーー

目覚めたくないのに、強制的に浮上させられる意識。

もう、大丈夫な筈、でしょう。


なのに私は、まだこんなにも震えている。