21 / 28
第20章(紗里)彼女の資格
しおりを挟む
「ねえ、ちょっといいかな」と紗里は言った。
紗里は彰の部屋にいた。時間は既に22時を過ぎている。紗里は水色のクッションの上に座っていて、彰はベッドに座っていた。紗里と彰の間には小さな丸テーブルがあり、その上にはワインのボトルとグラスが2つ、そして角チーズがあった。
「どうかした?」と言って、彰はチーズを口に入れる。
「私達は付き合ってる」
「うん、そうだね」
「手をつないだこともある」
「あるね」
「でも、それしかない」
「不満?」
「いや、私は少しも不満じゃない。それでいいと思ってる。本当に」
「じゃあ、いいんじゃないかな?」
「彰君はそれでいいの? つまりその、男の子としては、いろいろしたいのかもしれないと思って」
「ああ、そういうことか。そうだな。いつかできたらいいなとは思う。でも急ぐようなことでもないし、それにそういうことにはそれなりに責任が伴う。紗里がそれをしようと思った時、その時でいい」
「そういうもの?」
「人によるんじゃないかな。紗里のことはもちろんすごく好きだ。だから、それをしたいとも思う。でも俺にはそれなりに経験があるし、我慢できないっていうことはない。もし俺の彼女が積極的にそれをしたいのであれば、もちろんそれを受け入れる。でも紗里のようにさしてそれを望んでいないのであれば、別にそれは必要ない」
「へえ。なんだ、せっかく心配してあげたのに」
「ありがとう。気持ちは嬉しいよ。俺はもしかしたら他の人よりも、少しばかり性欲が少ないのかもしれない」
「いいんだか悪いんだか」
「俺としてはそんな感じ」
「安心した。それなら彰君の言葉に甘えさせてもらおうと思う。付き合い続けるのなら、いつかは私も勇気を出すよ。きっとその行為には、意味があると思うから。でも、しばらくはまだ待っていてほしい」紗里はそう言って、ワインを飲んだ。
彰は紗里に向かって微笑んで、言った。
「そうしようか。ところでさ、いつまで君付けなの?別に構わないけれど」
紗里は数秒黙っていたが、やがて口を開いた。
「……彰」
「はい。彰です」
「ああ、やっぱり何か違う。違和感がある。今更変えられないし、これからも彰君って呼ぶ」
「まあ好きに呼んでくれればいい」そう言って彰は携帯を掴み、そしてベッドに寝転んだ。
紗里は横になった彰を見やる。彰は仰向けになって、携帯の画面を見ていた。
きっとおそらく、彰君は本心を言ってくれたのだと思う。加奈と同じように、彰君もまた、人を気づかって嘘をつくようなタイプではない。彰君はもちろん気づかいはできる人だけれど、本心を隠してまでするべきじゃないと考えているだろうから。
彰君は私に何も求めない。私のことばかりを考えてくれる。どうしてそんなに優しいのだろう。私は彰君に何かを与えることができているのだろうか。私は付き合ったのだ。彰君の彼女になったのだ。彼女の役目を果たさなくては、彰君の愛を受ける資格がない。
彼女の役目とは何だろう。彰君は何か望みがあれば言ってくれるはずだ。でも言ってこないということは、おそらく彰君自身にも彰君の望みを理解できていないのだろう。
彰君は本当に何も望んでいない、という可能性もある。ただ私が彼女であるという事実と、私と遊んだり、私といろいろな話をしたりすることだけでいい、と。あるいはそうかもしれない。でも、それはいつか終わりがくる。いくらなんでも、私が私として存在しているだけで満足だなんて、そんな彼氏などいるはずがない。いていいはずがない。
それならば、性的な満足をさせてあげるのが彼女の役目なのだろうか。いや、それも浅はかだ。実際、それを望む男の子はたくさんいるのだろう。しかし彰君はそこに重点を置いていない。何より、私自身がそういったことに対して抵抗がある。そういうことはきっと、どちらかが我慢してまでするようなことではないはずだ。
つまり私の役目は、彰君本人でさえも自覚していない彰君の望みを探し出し、そして私がそれをフォローする、ということになる。
なんと大変なのだろうか。世の中の女子達よ、栄光あれ。
「そんな難しい顔して、どうしたの?」と彰が言った。
紗里はいつからか彰に見られていたことにようやく気がついた。
「いや、世の中の女子達は大変なんだろうな、って思ってたの」
「どうだろうね」
「一応きいてみるけれど、彰君にとって、彼女って何?」
「彼女とは何か……。そうだな、難しい。安心、かな」
「安心?」
「そう。俺が好きな人、つまり今は紗里のことだけれど、その人が俺のことを好きでいてくれているっている証だから」
「……そっか。そうか。なるほどね。なるほどだ」
ああ、私は恵まれていたんだ。彰君はずっと私のことを好きでいてくれて、でもそれは一方通行で。だから私が彼女になったということは、それが一方通行ではなくなったということ。彰君の立場にしてみれば、やっぱりそれは価値のあることなんだ。私は最初から彰君の気持ちを貰っていたから、その本当の意味は理解できていないのかもしれない。
でも、そう。それはあくまで一時的なもの。彰君だってやがて、それだけでは満足できなくなる。彼女として、私が彰君にとっての価値になれるように努力しなくてはいけない。それは間違いないはずだ。
「また難しい顔してるね」と彰。
「あ、ごめんなさい」
「いやいや。まあ、関係はゆっくり作っていくものだと思うよ。紗里が何を考えているのかはわからないけれど」
「彰君、エスパー?」
「はは、そうかもしれない。お父さんは手品師をやっていたことがあるらしいし」
「遺伝だ……。でもすごいね、お父さん。私マジック好きなんだ」
「今はお父さんにとって、手品は趣味らしい。もうそれを仕事にしているわけじゃないからね。いつか俺のお父さんに会うことがあれば、きっと何か見せてくれると思うよ」
「琵琶湖と一緒に」
「そう。紗里もきっと気に入る」
彰君は、私にとって初めての彼氏。だからどうしても考えてしまう。もしかしたら私は、彰君と結婚することだってあるかもしれない。もちろん現実的に考えているわけではないけれど、それでも現状、結婚相手として一番可能性が高い人なのだから。
でも、彰君と結婚した人はきっと幸せになれるような気がする。たとえそれが私ではなかったとしても。
「彰君は、いいお父さんになれるよ」と紗里。
「ん? 俺のお父さんじゃなくて、俺がお父さんになったらの話?」
「そう」
「ああ。子供と一緒に遊ぶのは楽しそうだ。でも、教育って考えたらどうだろう。子供を上手く導いてくれるお母さんが必要だな」
「そうやって皆、力を合わせるんだよ。きっと。だから夫婦なんだ」
「え、紗里、何かを悟ったの?」
「ふふっ、私もエスパーかもしれないね」
「エスパーだらけだ」
紗里はふと携帯の画面を見る。そして立ち上がって言った。
「もうだいぶ遅いね。私は帰るよ。30分の電車に乗りたいから」
「もう遅いし、泊まってもいいんだよ」
「彰君が良くても、私はその権利がないと思ってるから。泊まるなら、そういうことをする覚悟を持つべきなの」
「別に気にしなくていいのに」
「まあ、私の意地みたいなものだから。とにかく失礼するよ」
「それじゃ、駅まで送ろう」そう言って彰はベッドから起き上がる。
「いいよ、大丈夫」
「いや、歩きたいからさ。散歩ついで」
「……わかった。ありがとう」
紗里は厚手のカーディガンを羽織り、そして白のバッグを持った。彰は何も持たずに、そのまま玄関へと歩く。
紗里と彰はそうして部屋を出るのであった。
紗里は彰の部屋にいた。時間は既に22時を過ぎている。紗里は水色のクッションの上に座っていて、彰はベッドに座っていた。紗里と彰の間には小さな丸テーブルがあり、その上にはワインのボトルとグラスが2つ、そして角チーズがあった。
「どうかした?」と言って、彰はチーズを口に入れる。
「私達は付き合ってる」
「うん、そうだね」
「手をつないだこともある」
「あるね」
「でも、それしかない」
「不満?」
「いや、私は少しも不満じゃない。それでいいと思ってる。本当に」
「じゃあ、いいんじゃないかな?」
「彰君はそれでいいの? つまりその、男の子としては、いろいろしたいのかもしれないと思って」
「ああ、そういうことか。そうだな。いつかできたらいいなとは思う。でも急ぐようなことでもないし、それにそういうことにはそれなりに責任が伴う。紗里がそれをしようと思った時、その時でいい」
「そういうもの?」
「人によるんじゃないかな。紗里のことはもちろんすごく好きだ。だから、それをしたいとも思う。でも俺にはそれなりに経験があるし、我慢できないっていうことはない。もし俺の彼女が積極的にそれをしたいのであれば、もちろんそれを受け入れる。でも紗里のようにさしてそれを望んでいないのであれば、別にそれは必要ない」
「へえ。なんだ、せっかく心配してあげたのに」
「ありがとう。気持ちは嬉しいよ。俺はもしかしたら他の人よりも、少しばかり性欲が少ないのかもしれない」
「いいんだか悪いんだか」
「俺としてはそんな感じ」
「安心した。それなら彰君の言葉に甘えさせてもらおうと思う。付き合い続けるのなら、いつかは私も勇気を出すよ。きっとその行為には、意味があると思うから。でも、しばらくはまだ待っていてほしい」紗里はそう言って、ワインを飲んだ。
彰は紗里に向かって微笑んで、言った。
「そうしようか。ところでさ、いつまで君付けなの?別に構わないけれど」
紗里は数秒黙っていたが、やがて口を開いた。
「……彰」
「はい。彰です」
「ああ、やっぱり何か違う。違和感がある。今更変えられないし、これからも彰君って呼ぶ」
「まあ好きに呼んでくれればいい」そう言って彰は携帯を掴み、そしてベッドに寝転んだ。
紗里は横になった彰を見やる。彰は仰向けになって、携帯の画面を見ていた。
きっとおそらく、彰君は本心を言ってくれたのだと思う。加奈と同じように、彰君もまた、人を気づかって嘘をつくようなタイプではない。彰君はもちろん気づかいはできる人だけれど、本心を隠してまでするべきじゃないと考えているだろうから。
彰君は私に何も求めない。私のことばかりを考えてくれる。どうしてそんなに優しいのだろう。私は彰君に何かを与えることができているのだろうか。私は付き合ったのだ。彰君の彼女になったのだ。彼女の役目を果たさなくては、彰君の愛を受ける資格がない。
彼女の役目とは何だろう。彰君は何か望みがあれば言ってくれるはずだ。でも言ってこないということは、おそらく彰君自身にも彰君の望みを理解できていないのだろう。
彰君は本当に何も望んでいない、という可能性もある。ただ私が彼女であるという事実と、私と遊んだり、私といろいろな話をしたりすることだけでいい、と。あるいはそうかもしれない。でも、それはいつか終わりがくる。いくらなんでも、私が私として存在しているだけで満足だなんて、そんな彼氏などいるはずがない。いていいはずがない。
それならば、性的な満足をさせてあげるのが彼女の役目なのだろうか。いや、それも浅はかだ。実際、それを望む男の子はたくさんいるのだろう。しかし彰君はそこに重点を置いていない。何より、私自身がそういったことに対して抵抗がある。そういうことはきっと、どちらかが我慢してまでするようなことではないはずだ。
つまり私の役目は、彰君本人でさえも自覚していない彰君の望みを探し出し、そして私がそれをフォローする、ということになる。
なんと大変なのだろうか。世の中の女子達よ、栄光あれ。
「そんな難しい顔して、どうしたの?」と彰が言った。
紗里はいつからか彰に見られていたことにようやく気がついた。
「いや、世の中の女子達は大変なんだろうな、って思ってたの」
「どうだろうね」
「一応きいてみるけれど、彰君にとって、彼女って何?」
「彼女とは何か……。そうだな、難しい。安心、かな」
「安心?」
「そう。俺が好きな人、つまり今は紗里のことだけれど、その人が俺のことを好きでいてくれているっている証だから」
「……そっか。そうか。なるほどね。なるほどだ」
ああ、私は恵まれていたんだ。彰君はずっと私のことを好きでいてくれて、でもそれは一方通行で。だから私が彼女になったということは、それが一方通行ではなくなったということ。彰君の立場にしてみれば、やっぱりそれは価値のあることなんだ。私は最初から彰君の気持ちを貰っていたから、その本当の意味は理解できていないのかもしれない。
でも、そう。それはあくまで一時的なもの。彰君だってやがて、それだけでは満足できなくなる。彼女として、私が彰君にとっての価値になれるように努力しなくてはいけない。それは間違いないはずだ。
「また難しい顔してるね」と彰。
「あ、ごめんなさい」
「いやいや。まあ、関係はゆっくり作っていくものだと思うよ。紗里が何を考えているのかはわからないけれど」
「彰君、エスパー?」
「はは、そうかもしれない。お父さんは手品師をやっていたことがあるらしいし」
「遺伝だ……。でもすごいね、お父さん。私マジック好きなんだ」
「今はお父さんにとって、手品は趣味らしい。もうそれを仕事にしているわけじゃないからね。いつか俺のお父さんに会うことがあれば、きっと何か見せてくれると思うよ」
「琵琶湖と一緒に」
「そう。紗里もきっと気に入る」
彰君は、私にとって初めての彼氏。だからどうしても考えてしまう。もしかしたら私は、彰君と結婚することだってあるかもしれない。もちろん現実的に考えているわけではないけれど、それでも現状、結婚相手として一番可能性が高い人なのだから。
でも、彰君と結婚した人はきっと幸せになれるような気がする。たとえそれが私ではなかったとしても。
「彰君は、いいお父さんになれるよ」と紗里。
「ん? 俺のお父さんじゃなくて、俺がお父さんになったらの話?」
「そう」
「ああ。子供と一緒に遊ぶのは楽しそうだ。でも、教育って考えたらどうだろう。子供を上手く導いてくれるお母さんが必要だな」
「そうやって皆、力を合わせるんだよ。きっと。だから夫婦なんだ」
「え、紗里、何かを悟ったの?」
「ふふっ、私もエスパーかもしれないね」
「エスパーだらけだ」
紗里はふと携帯の画面を見る。そして立ち上がって言った。
「もうだいぶ遅いね。私は帰るよ。30分の電車に乗りたいから」
「もう遅いし、泊まってもいいんだよ」
「彰君が良くても、私はその権利がないと思ってるから。泊まるなら、そういうことをする覚悟を持つべきなの」
「別に気にしなくていいのに」
「まあ、私の意地みたいなものだから。とにかく失礼するよ」
「それじゃ、駅まで送ろう」そう言って彰はベッドから起き上がる。
「いいよ、大丈夫」
「いや、歩きたいからさ。散歩ついで」
「……わかった。ありがとう」
紗里は厚手のカーディガンを羽織り、そして白のバッグを持った。彰は何も持たずに、そのまま玄関へと歩く。
紗里と彰はそうして部屋を出るのであった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

記憶がないなら私は……
しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。 *全4話

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる