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【第四章「吉原の死闘」】
四十 小吉の剛刀~鬼神丸国重~
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※ ※ ※
「うらぁ!」
小吉の剛刀が浪人者を刀ごと吹き飛ばした。
「さすが勝様」
「なんと恐ろしい。相手の刀は真っ二つですな」
火事と聞いて大門へ逃げる客たちと逆行するように廓内へ駆けてきた浪人者の一団を、小吉と道場の者たちは迎え撃っていた。
小吉は吉原見物に来ていた道場の弟子たちと合流したのだ。
「にしても骨のねえ連中だぜ。骨がねぇから女に惚れて身を持ち崩したときに女のせいにしやがる」
抜刀した浪人たちは遊女を殺すから道を通せと小吉たちに怒鳴ってきた。
それに対して小吉は「なら俺が相手だ」と言い放ったのだ。
そこからは、乱戦である。
しかし、浪人たちの敵う相手ではなかった。
小吉と道場の者たちは、泰平の江戸の世において異例の強さを誇っている。
「戦のねぇ世の中なのに剣をやる物好きどもだかんな! こういう機会でもねぇと暴れられねぇってもんよ! おらおらぁ! かかってこい!」
ひとり残った浪人者は道端で鬼神に出会ったように怯えていたが、悲鳴にも似た叫び声をあげて斬りかかってきた。
「甘ぇ! 反吐が出らぁ!」
小吉は剛刀――鬼神丸国重を翻して容易く浪人者の刀を弾き飛ばす。
「このナマクラ侍が! てめぇなんぞ斬ったら刀が汚れらぁ!」
小吉は峰打ちで浪人者を昏倒させた。
「さすが勝様。強すぎますな」
「暴れん坊旗本ですな」
道場の連中は小吉の活躍を芝居でも見物するように感想を口にしていた。
「おいコラ見せ物じゃねぇぞ! おめぇら減らず口叩いてる暇あったらほかの見世に賊が侵入してねぇか見回ってきやがれ!」
小吉から一喝されて、道場連中は「はい!」と声を揃えて散っていった。
「ふん……! ったく、戦いの風を感じて来てみたはいいが雑魚ばかりじゃねぇか」
小吉はつまらなそうにつぶやくと刀を鞘に納めた。
そこらじゅうに浪人どもがうめき声をあげながら転がってるが、あとで役人に説明させればいいだろう。
「梅のほうに強敵がいったかもしれねぇな……ん?」
ふと殺気を感じた小吉は、ひょいっと横によけた。
遅れて手裏剣が通過する。
「おっと危ねぇ。まだいやがったか」
手裏剣の飛来してきた方向を見上げると、茶屋の屋根に黒装束がいた。
「おっ、忍者か」
「いかにも。拙者は呂蔵。天に代わって地の汚れを清める者でござるよ」
「……へっ、寝言は寝てから言うもんだぜ。でも、ちったぁ骨はありそうだな。浪人どもよりは楽しめそうか」
小吉は不敵な笑みを浮かべると、刀を水平に構えた。
「勝流の剣術。冥土の土産に見ておきな」
「うらぁ!」
小吉の剛刀が浪人者を刀ごと吹き飛ばした。
「さすが勝様」
「なんと恐ろしい。相手の刀は真っ二つですな」
火事と聞いて大門へ逃げる客たちと逆行するように廓内へ駆けてきた浪人者の一団を、小吉と道場の者たちは迎え撃っていた。
小吉は吉原見物に来ていた道場の弟子たちと合流したのだ。
「にしても骨のねえ連中だぜ。骨がねぇから女に惚れて身を持ち崩したときに女のせいにしやがる」
抜刀した浪人たちは遊女を殺すから道を通せと小吉たちに怒鳴ってきた。
それに対して小吉は「なら俺が相手だ」と言い放ったのだ。
そこからは、乱戦である。
しかし、浪人たちの敵う相手ではなかった。
小吉と道場の者たちは、泰平の江戸の世において異例の強さを誇っている。
「戦のねぇ世の中なのに剣をやる物好きどもだかんな! こういう機会でもねぇと暴れられねぇってもんよ! おらおらぁ! かかってこい!」
ひとり残った浪人者は道端で鬼神に出会ったように怯えていたが、悲鳴にも似た叫び声をあげて斬りかかってきた。
「甘ぇ! 反吐が出らぁ!」
小吉は剛刀――鬼神丸国重を翻して容易く浪人者の刀を弾き飛ばす。
「このナマクラ侍が! てめぇなんぞ斬ったら刀が汚れらぁ!」
小吉は峰打ちで浪人者を昏倒させた。
「さすが勝様。強すぎますな」
「暴れん坊旗本ですな」
道場の連中は小吉の活躍を芝居でも見物するように感想を口にしていた。
「おいコラ見せ物じゃねぇぞ! おめぇら減らず口叩いてる暇あったらほかの見世に賊が侵入してねぇか見回ってきやがれ!」
小吉から一喝されて、道場連中は「はい!」と声を揃えて散っていった。
「ふん……! ったく、戦いの風を感じて来てみたはいいが雑魚ばかりじゃねぇか」
小吉はつまらなそうにつぶやくと刀を鞘に納めた。
そこらじゅうに浪人どもがうめき声をあげながら転がってるが、あとで役人に説明させればいいだろう。
「梅のほうに強敵がいったかもしれねぇな……ん?」
ふと殺気を感じた小吉は、ひょいっと横によけた。
遅れて手裏剣が通過する。
「おっと危ねぇ。まだいやがったか」
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「おっ、忍者か」
「いかにも。拙者は呂蔵。天に代わって地の汚れを清める者でござるよ」
「……へっ、寝言は寝てから言うもんだぜ。でも、ちったぁ骨はありそうだな。浪人どもよりは楽しめそうか」
小吉は不敵な笑みを浮かべると、刀を水平に構えた。
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