上 下
56 / 89
【17】最強ブロガー

          ①

しおりを挟む

 和希が離婚して大阪に戻ってきてから1週間が過ぎた月曜日、由唯と澪はランチの時に和希の話になった。

「和希、淡々と仕事してるけど離婚してから暗いよなー?」

 澪がサラダのトマトを口に放り込みながら言った。

「そう? 離婚したのにいつもと変わらない感じでいるからよく平気でいるなーって私は思っててんけど」

 由唯はフォークにくるくるとパスタを巻きながら答える。

「そんな事ないって。絶対元気ないと思うで」
「そう? あんまり気にならんかったなー」
「あっ! そういえば和希の誕生日、今週末やったな? 何かやったる?」
「そうやわー。離婚話で忘れてたわ。うん。そうしよう! 誕生日会やったろ」
「たぶんこの数年誕生日会なんてやってもらった事ないんちゃう 笑」
「由唯ー。和希が聞いたら泣くで? 笑」
「うんうん 笑。じゃーお店は私の方で探しとくなー」
「うん。澪よろしく! 和希の予定聞いて報告するわ」

 事務所に戻ると、デスクで和希が仕事をしていた。周りに人がいない事を確認すると和希の耳元で話し掛けた。

「今週の金曜日なんか予定ある? 飲み会しようかと思って!」

 由唯が近付いてきたのに気づかなかったようで和希はビックリして由唯を見た。

「びっくりするやん急に……。金曜日? えーっと何もないから大丈夫やで」
「じゃーお店決めたら言うわー」
「あれ? いつもの京橋の店とちゃうん?」
「まだ決めてないけど、たまには違う所にしようかなぁと思って」

 和希は、ふーんとした顔をした。

「わかった。じゃーまた教えて」

 と言うと書類にまた視線を戻した。

 由唯は、そのまま澪のところに行き周りに聞こえないように小さな声で話した。

「澪の言うとおり、和希いつもと何か違うかも」

「なっ?」と声を出さずに口パクで返事すると、由唯も、うん、と頷いた。
 
 そう言われれば報告にくる部下の話を聞いてる姿もどこか覇気がないような気がしてきた。

 由唯は和希の方をもう一度みて(和希、しっかりしろよ!)と心の中でエールを送った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

私と継母の極めて平凡な日常

当麻月菜
ライト文芸
ある日突然、父が再婚した。そして再婚後、たった三ヶ月で失踪した。 残されたのは私、橋坂由依(高校二年生)と、継母の琴子さん(32歳のキャリアウーマン)の二人。 「ああ、この人も出て行くんだろうな。私にどれだけ自分が不幸かをぶちまけて」 そう思って覚悟もしたけれど、彼女は出て行かなかった。 そうして始まった継母と私の二人だけの日々は、とても淡々としていながら酷く穏やかで、極めて平凡なものでした。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...