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【14】それぞれの扉

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 澪は由唯が帰るのを見届けると和希の真ん前に席を移動した。

「じゃー飲み直そうかー」

 和希はそう言うと澪の空いたグラスに氷と焼酎を入れて澪に渡した。

「由唯、『私から好きになることはない』って言いきるとこが凄いな。なんか寂しいやつやな」
「若い時の恋愛がトラウマになってて、好きになるのが怖いらしいわ。好きになる気持ちをストップしてしまうとか言うてた……」
「そうなん? トラウマになってるんや」
「でも、『好き』という感情をコントロールなんかできるんかなー?」
「なっ。俺もそう思うわ。人を好きになるっていうのは、気付いたら好きになってるんちゃうの? コントロールなんかするもんちゃうで」
「うんうん。私もそう思う。好きになるというのは頭で考えるんじゃないもん。心がキューッとなってドキドキして、どうすることもでけへんねん。これが恋ちゅーもんやんなー」
「尾崎さんのことか? 笑」
「あはははは」
「澪もうまくいったらいいなぁー」
「ありがとう」
「由唯もあーいう風に言ってるけど、幸せになってほしいなぁ。澪も由唯も最高の女やからなー」
「和希、酔っぱらってんのか? 笑」
「あはははは。ほろ酔いや。でも、ほんまにそう思ってる 笑」
「さっき由唯がおる時に言うたったらよかったのに」
「あかんあかん! 調子に乗りよる 笑」
「あははは、和希? 由唯は大丈夫や。和希に言われても何とも思わんわ 笑」
「まじかー?」
「あははははははははははは」
「おい、笑いすぎや」

 それから1時間ほど経ったところで和希がそろそろ帰ろうと言ったが……

「じゃー、ここは出ようか?【2軒目酒場】に行こう」
「まじでー⁉︎ ほんま澪凄いなー」

 和希が言うのと同時に澪は店員に「チェックしてー」と言っていた。

 和希と澪はその後、【2軒目酒場】で飲み直し今夜もタクシーで帰ることになったのは言うまでもない。
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