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【13】内緒の飲み会

          ③

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 席に戻ってくると何やら携帯片手に3人がワイワイと盛り上がっている。堀が和希に気付くと「神楽さん、メール交換しましょう」と言ってきたので、それぞれお互い交換することになった。

「神楽さん、単身赴任だと寂しいですね?」

 隣の速水が聞いてきた。

「そんな事ないですよ。1人の方が気楽でこのまま暫く単身赴任がいいなぁと思ってます 笑」
「えー、そうなんですか?? 奥さんと離れて寂しくないんですか?」
「そうでもないですよ 笑」
「へぇー、1人で休みの日なにしてるんですか?」
「たまにゴルフに行ったり、韓流ドラマとか見てけっこう楽しくしてます。あっ、あとはたまに飲みにも行きますよ 笑」
「1人で飲みに行くんですか?」
「いえいえ、会社に飲み友が2人いて休みでもよく誘ってくれるんですよ」
「ふーん、休みの日まで飲みに行くって仲いいんですね!」

 隣で和希の話を聞いていた高橋が割り込んできた。

 「速水さん、神楽は既婚者なのであまり近寄ったらダメですよ!」
「高橋、今日は独身気分できてるんだよ!飲みに誘っといてそんなこと言うな しらけるやろ? 何処にもいるんですよ、こんなやつ。あたま数のために誘って『こいつ既婚者だから』って冷めるこというやつ 笑笑」 
 「いるいる!」と、2人が笑った。

 あははは、と、和希の話を流して高橋はお気に入りの速水に一生懸命話しかけていた。

「神楽さん、単身赴任だと夜ご飯はどうしてるんですか?」
「飲みに行かない日は自炊してますよ。難しいものは作れないですが 笑。あとは、大抵電子レンジ様が作ってくれますので 笑」

 堀の問いに返すと、

「あはははは、私も電子レンジ様によくお世話になります。じゃー外食はあんまりしないんですか?」
「うーん、週に2、3回くらいですかね? 行かない時は全然行かないんですけどね」
「そうなんですか!? もっと毎日飲み歩いてるのかと思いました 笑。 神楽さんマジメですね。うちの会社の単身赴任組は毎日のように午前様になるらしいので 笑」
「保険会社のみなさんは高給取りだから。僕はそんな甲斐性ないんで羨ましいですね 笑」

 お店に入ってそろそろ3時間経ったころ、

「お腹いっぱいになりましたね! そろそろ出ますか?」

 高橋が伝票を持つとレジに向かった。

 堀は化粧室へ行くと言って席を離れると、

 速水が「神楽さん、この次のも行かれますよね?」
「ごめんなさい。今から別の用事があって」

 和希は高橋が二次会で速水と2人になりたそうだったので気を利かせて断ることにした。由唯と澪の飲み会にも参加したかったのもある。

「仲のいい会社の飲み友さんとですか? 笑」
「あははは そんなとこです」

 お店を出ると高橋に精算しにいったが今日は俺が払っとくと言ったので、高橋のための飲み会みたいなもんだからなと言って甘えることにした。

「では、俺はこれで帰るぞ」
「おう。またなー」

 堀も二次会には参加しないと言って和希と一緒にJR大阪駅方面へ向かった。

「速水さん高橋と二人にして大丈夫でした?」
「あははは、はい。速水さんも帰るって言ってました」
「そうなんですか? もう一軒行きそうな感じだったのに。高橋ショック受けますね あはははは」
「高橋さん良い人なんですが、男としてはちょっと……笑」
「辛口ですね」と2人で笑った。

 そう言って買い物をすると言って和希とそこで別れた。

 和希は1人になると由唯にメールをした。

〈用事終わったから俺も合流する。京橋のいつものお店やな?〉

 大阪駅から電車に乗ったところでメールの着信が震えた。

 由唯だな……と思ったが速水からのメールだった。

〈今日は楽しかったです。二次会行けなかったのは残念ですが 笑。 今度また飲みに誘って下さい〉

 和希が何て返そうか考えていると由唯から返信がきた。

〈り。いつもの店 18時〉

『り』って 笑。俺と一緒やん。

 そのまま速水には返信せずに京橋に向かうことにした。
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