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【4】澪のトキメキナイト
①
しおりを挟む今夜の飲み会では彼氏がいなくても今は楽しいと言ったが、実は澪には少し気になっている人がいた。気になっていると言っても《好き》と言うわけではない。今は何となく気になるというだけだ。
この時は……まだ。
今夜はまっすぐ帰ろうと電車に乗ったのだが、窓越しに見えるネオンを見ていると、心のすき間を照らされているような気持ちになり少し寂しさを感じた。
(もう少し飲んで帰ろうかなぁ)
時間はすでに23時を過ぎていたが、最寄り駅の1つ手前の天満駅で降りた。
改札を出て左側の線路沿いから行きつけのお店【ROKU】へ向かった。
(今夜はいるかな……?)
いつもは『今日も混んでるかなぁ?』などと考えながら【ROKU】へ向かうのだが、一次会であんな話をしたからか今夜はいつもと違い心が浮わついていた。
お店の前までくると、すぐにはドアを開けずガラス越しにお店の中を覗くとテーブル席に30歳位の男性3人とカウンターに2人の若い女性客が座っていた。
「よかった。今日はそんなに混んでない」
ひとこと言葉にした澪だったが、心は(今夜は来てないのかな……。それとも、もう帰ったかな?)と思いながらドアを開けた。
「こんばんはー」
「あっ、澪さんいらっしゃい」
コートを脱ぎながら1つ空けてカウンター席に座った。
「東山さん、いつものお願いします。よかったら東山さんも一杯どうぞ」
いつものお決まりの台詞だ。
「有り難うございます。今日は何処で飲んできたんですか?」
「会社の飲み会の帰りなの」
「へぇーそうなんですか? あっ、いただきます!」
マスターの東山と乾杯すると、ようやく喉を潤した。
その時、お店のドアが開いて、澪はお店の入口に目をやった。
(あっ……)
澪の心が高ぶった。
お店に入ってきた男性は、店内を見回すと、澪の横にきて「隣いいですか?」と聞いてきた。
緊張しながら「どうぞ」と答えた。
東山が尾崎に「今日は遅いですね?」と言うと、男性は「今日は疲れたよ」と言って、生ビールを注文した後、コートをハンガーにかけて澪の右隣に腰かけた。
すぐに「どうぞー」とビールが出されると、それを受け取る男らしい大きな手を見て澪はドキッとときめいた。
心の中を覗かれてないかな? と気になったがとっさに「お疲れ様です」とグラスを持ち、会釈してごまかした。
スーツをお洒落に着こなしたこの男性は、45歳前後、背は180cmはないだろうか? 髪は短髪で爽やかな印象を与え、細身に映るがたくましさを感じさせる。
「尾崎さんも何処かで飲んできたんですか?」
東山が尾崎と呼んだ男性に声を掛けると
「あー、ちょっと軽くね」と答えた。
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