転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし

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23.事態の収集と始まり

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「え、ぁ……?」

予想もしていなかった事態に俺の頭の中は混乱していた。
え?え?え?何が起こっている?
キースが俺に、キスして……?んん?!

「……どうしようね……」

キースは俺の顔の上で困ったように微笑んだ。
片手が俺の頬を撫でる。それ以上に進むわけではなく、ただ俺と視線を合わせているだけだ。

「…………兄様…………」

何かを言わなくては、と思えば思うほど言葉は何も出てこなくて、そう言うだけで俺は精一杯だった。
頭の中は思考が右往左往で驚愕しきりだが、俺も動けないままだ。
……まず頭の中を整理すべきだ。どうしてキースはこんなことをする?
……いや、さすがに前世が童貞な俺でもわかる。
──リアムに好意があるからだ。それがいつからなのかは分からないが……。
ゲームの中だとキースはリアムには興味を示していなかった。
しかしリアムはリアムではなく、俺だ。
俺は俺が安穏に暮らすために世界を変えてきた自覚はある。
つまり、キースの変貌は俺がもたらした結果の産物で、悪く言えば、自業自得。

「兄様……」

俺はもう一度、キースを呼ぶ。
キースはやはり困ったように微苦笑を浮かべたままで、動かない。
俺に好意かぁ……。
人に好かれることは悪いことではないと思う。が……。

男なんだよなああああああああああああああ!
俺もキースも男なんだよなああああああああ!

しかもこれ、あれでしょ?俺が受けってやつでしょ?
突っ込まれてしまうやつだよねぇ……!
真夜の原稿をそれはそれは山ほど手伝ってきた俺は、結構詳しいよ!
いや、突っ込む方なら良いというわけじゃないけれども……それなりに葛藤とかあるじゃないですか、やっぱり。
キースのことは嫌いではない。そりゃ、今まで一緒に過ごしてきた仲だし。
しかし、そういう意味で好きかどうかと言えば今のところはNOだ。
そういう対象で考えたことなんてないわけだし。
またねぇ……レジナルドとかリンドンみたいにイケイケGOGO!というわけじゃないんだろうな、この兄は。その証拠に今だって無理やり襲ってくるわけではない。
……押し倒されはしたが。押し倒されているが。

「困ったね。意外と冷静なんだね、リアムは……」
ふ、と笑ってキースは上体を上げる。
俺の頬にあった手が動いて、前髪を撫でた。

「……驚いてます、よ。びっくりしました……」

そうだ、俺はだいぶん吃驚している。
ああ、でも……レジナルドやリンドンのような驚愕は確かにないかもしれない。
小さいころからの慣れなのか何なのか……。

「そう?余裕そうに見えるよ?……この調子であの二人を手玉に取っているわけじゃないよね?」

あの二人とは、まさに先ほど俺は思い浮かべた二人のことだろう。
いやいやいや。ないないないない。
口が動く前に俺は無意識に首を振っていた。

「どちらも、好きじゃないです」

加えて俺ははっきりと言う。
どちらにしても、一友人としての節度ある付き合いならば問題はないだろうし良い処も多いのかもしれない。
しかし……だ。仮にレジナルドは未だに揶揄ってるだけの可能性も高いにしても、リンドンは明らかに違う意味で俺を狙ってきているので、友人として付き合うのも今のところは難しい。
あちらにそういう気がなくなれば別であるが……。
キースは少しばかり驚いたように瞬いた。

「はっきりと言うんだね?」
「そりゃぁ……誤解されても嫌ですし。そうじゃないと他に婚約者を、とか言いませんよ。僕はあの二人と結婚する気はないです」
「ふふ、ちょっと可哀想な気もするけれど……では、僕は?もう、わかっているよね?」

俺の髪を撫でていたキースの手が降りて、耳元に来る。耳の裏を指先が辿っていくと、もどかしい擽ったさが生じて、俺は息を詰めた。
難しいことを聞いてくるなぁ……こえ、どう答えるのが正解なんだろうか。
もういっそのこと、身を任せ……いややいやいやいや!さすがにそれはなぁ!
ただ、頭をかすめるのは先日ノエルと話した一件だ。

キースのエンド。

俺にしてもノエルにしても未だに思い出せないでいる。
あのゲーム自体、正直リアムに関してはろくでもないエロエンドしかないわけだが、ノエルに関して言えば当たり前だがハッピーエンドなのだ。裏はともかく。
俺が主人公という立場になっているのであれば、攻略者のルートから外れたところでおかしなことは起こらないとは思うが……どうにも引っかかる。
俺がキースを拒むことが吉と出るのか凶と出るのか判断ができない現状では、おいそれと答えを出すわけにもいかない。
そういう打算を退けたとしても、幼いころから一緒にいた兄という存在は、下手に親愛の情があるものだから困る……。

「……嫌いじゃ、ないです、よ……兄弟としてはその、好きですし……」

俺が卓越した恋愛技能を持っていればいっそのこと口八丁手八丁でキースを手玉に取りたいところだが、如何せん、前世も今世も童貞まっしぐらな俺にはそう言ったことはできそうにもない。恋愛経験が少なすぎる。なので、俺は自分の考えそのままに答えるしかなかった。
キースはそれを聞いて、瞠目した後にくすくすと笑い出す。

「なんとも曖昧な答えだね。きっぱりと嫌われるよりはいいのか……いや、いっそ嫌ってくれた方が僕としては無理やり自分の物にできるんだけどねぇ」

キースは撫でていた場所からまた手を移動させて、俺の片手を握った。そして俺を起こすように手を引いた。体勢が変わり、俺たちは座って対面となる。
これは……襲うのはやめた、ということだろうか?

「兄様、優しいから無理じゃないです?」

キースを見上げつつ俺は首を傾げた。
キースがまた、はは、と笑う。

「……リアムが知らないだけだよ。僕はあまり手段は選ばないほうだからね。夜なんかは気を付けた方がいい。僕に良いようにされているかもしれないよ?」
「まさか」

今度は俺が笑ってそう言った。
目の前にいるキースはいつもと同じ笑顔になっており、握る手とは反対の手で乱れた俺の髪を撫でるように梳いていく。
とりあえず貞操の危機っぽいものは避けれたようだが……。

「今はもう少し優しい兄でいた方がよさそうだね……でもこれで気付いてくれたとは思うからはっきりと言っておくけど、君に婚約者を探す気はないからね?僕は一緒に住んでいる分、有利なようだから……存分に口説かせてもらうとしよう」

握っていた手を自分の口元に持っていくと、俺の手の甲にキースが口づけを落とした。
う、わー……そういうの素でやんのか……。
しかし、困ったな。これ、どうやって断ればぁ……?
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