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第3章 学園編1
3.19 領地対抗戦
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朝から領地対抗戦の対抗戦が始まった。僕らのリーグはもっと後なので現在は席で観戦している。僕の左側にヴィルヘルム王子が座って、1年生の二人に解説をしてくれるらしい。
最初のリーグは上位領地の第4位シルヴィスト領と6位のステラリア領が入った戦いだ。
ステラリア領の女性なのにエイレーネアテナ様が率いているようだ。
「ステラリア領は、女性の領主候補生が率いているんですね」
「ああ、あそこは毎年エイレーネアテナ様が王をしているよ。強いよあそこは」
開始とともに半数を割いて水魔法をたたき込み時間を稼ぎ、神の盾を作り出してから防御に徹している。彼女の近くに文官と思われる2名が魔道具に魔力を流し込み投擲が得意な護衛騎士に渡し、護衛騎士が次々に魔道具を投げ込んでいる。
「ああやって防御態勢を整えて、魔道具を投げ込みながら相手の戦力を削り、チームが減るのを待ってから攻撃に変わるんだ。投擲する魔道具は普通、攻撃系魔道具を投げ込むけど、煙の後にあんなに涙を流したり、くしゃみをしたり毎年変わった攻撃をするんだよ」
どうやらヴィルヘルム王子の解説がさらさらと出ない理由は今年も初めての意味不明魔道具のせいだったようだ。
攻撃も進み、想定通り上位領地だけが残った。
「ここからがエイレーネアテナ様が聖女と言われるゆえんの戦い方だね。神々への祈りが届いた素晴らしい姿が見れるよ」
その後の戦いで見せたエイレーネアテナ様はとてもすごかった、神具を使った癒しの魔法、加護を与えて騎士を送り出し指示を出す姿はとても美しかった。
最後に、シルヴィスト領がエイレーネアテナ様の盾に向けて攻撃したが全ての攻撃がはじかれた。敵の前衛がエイレーネアテナ様に集まる中で、ステラリア領の前衛、中衛の全員がシルヴィスト領の王を攻撃してサークル外に出し決着がついた。
「ステラリアの勝ちだったね。次の次がクレストリア様が出番だね、そろそろいどうするのかな」
「はい」
「クレストリア様、お怪我をなさらないように」
「ええ、では行ってきます」
訓練場に降りて、クルスヴィストのメンバーが集まるところへ移動した。会場はすでに次の試合が始まった。
朝の組み合わせ表で僕らは一番の強敵であるアダマンジャルン領の第1チームとの対戦が決まっていた。
作戦の指揮官は最上級生。
「では作戦の復習です。最初の配置は4‐5-3-4の攻めの型で行く。開始と共にクレストリア様がアダマンジャルン領を残して他の王を退場させます。前衛は、開始と共にアダマンジャルンの前に出なさい。別働隊は退場で混乱する左側領地中央を突破。その後でアダマンジャルンの後ろへ回り込め、攻撃後に合図で一度撤退する。敵が回復を始めるために薬箱を開いたら爆発の魔道具を投擲できる兵士と一緒にクレストリア様が転移、薬を破壊後に戻ってください。それまではクレストリア様は神の盾は使わず魔力回復をしっかりと行ってください。その後はこちらが限界まで防御に徹し、制限時間5分前に後衛以外のすべての戦力で全力反撃。では、クリストリア様からお声掛けをお願いします」
「皆、敵はアダマンジャルン領の第1チーム。強敵だ。臆する必要は無い。胸を借りるつもりで最善を尽くそう」
周りを一回り皆を顔を見る。
「さあ戦いの時だ。持てる力を存分に発揮し敵を撃つぞ。いざ出立」
お決まりの文句を言って皆が入場の位置に入る。前のチームが全員いなくなり、入場。
すべての領地の準備が終わり開始の魔道具が音を響かせた。
音の鳴り終わりと共に僕は転移。敵の王を捕まえて隣の領地へ転移。前の王を置いて新たな王を捕まえて転移。最後に自分の領地へ戻る。
こちらのチームは計画通り前衛がアダマンジャルン領の戦いを仕掛け、別働隊は混乱する負けチームの中をかいくぐって横からアダマンジャルン領の後衛に攻撃を仕掛けた。
審判も何が起きたのか理解が送れたらしく、少し遅れてから負けの判定の笛が連続で鳴り響いた。アダマンジャルン領は何が起きたかわからず動揺したまま別の領に向かった兵士を急いで戻している。
こちらは後衛で準備した魔道具を投擲し始め、中衛あたりにダメージを出す。
なし崩し的に始まった戦闘だがさすがに上位領地の中でも最強と言われるチームだけありすぐに立て直しされた。
こちらが有利だったのは僅かに1分程度だったのではないだろうか。開始から2分で数名の騎士が戦闘不能となった。やはり上位領地は魔力の多い上級貴族が多く1対1の能力はあちらが上だ。なんといっても16名全員が上級貴族で最終学年と一つ下で構成されているのだから。普通に戦えば勝負にならない。
拮抗が崩れた瞬間に撤退の合図。あちらも開始直後、まだ時間があるので不用意な追いかけはないようだ。
ヒルベルトが作った神の盾に全員が入り回復薬を使う。
僕の隣に投擲する騎士がスタンバイ。敵の騎士たちは怪我をした騎士の手当てを行うために薬箱を開けた。
「行くよ」
「はい」
箱の近くに転移し騎士が魔道具を投擲。直後に領地に戻る。
どーんと爆発音が聞こえた。
「うわ、薬箱がやられた。回復薬が全滅だ」
「まだ転移ができるんじゃないか。王のサークル内の転移禁止魔法陣はどうなってる。急げ。皆は自分の手持ち分で回復しろ」
こちらはけが人が少なくヒルベルトが癒しを行っていた。僕も回復薬を飲んで魔力を補充する。そして神の盾を僕が交代して発動させ、ヒルベルトの近くに陣取る。
息をついた騎士たちは順次飛び立って。ここからは2-3-7-4の中衛を増やした防御側体制で防御に徹する。
敵は怪我をした騎士を癒しで治し前線に復活してきた。予備の回復薬ないので神聖魔法を使う回復者の魔力が亡くなった時点で復活者が消えるはずだ。持久戦になれば有利になるはず。
あちらは持久戦を嫌って一気に攻撃を仕掛けてきた。徐々にこちらが押されているがほぼ全員が防御に集中しているので回復薬を使いなんのでとか持ちこたえている。
当初は最長1時間の戦いで50分は持ちこたえる予定だったが予想よりも消耗が激しい。開始から10分たらずでこちらも用意した回復薬が底を尽きつつあった。
「当初の想定よりもペースが速い。こちらのダメージも多いが、あちらも疲労が早い。現状でお互いに最終局面と言えるだろう。あちらはすでに数名の戦闘不能者がいる。作戦通りいったん敵の全力攻撃を受け止める。その後でクレストリア様とヒルベルト様を残し残り全員で攻める。魔力の減った敵は二人一組で捕縛して行け、戦闘不能者を10名出せば勝ちだ。敵の王は無視だ。ルールを盾に勝ちを貰う」
「守りは任せて、全力攻撃でも耐えられる。合図とともに一番魔力量の多い前衛は僕が捕縛する。後は頼むよ」
そして予定通り全員がサークル内にいる状態で敵の前衛がゆっくりと魔力を溜めて攻撃をしてきた。それでも神の盾は少し光るだけで完全に攻撃を防いだ。連続で別の前衛がもう一度魔力攻撃してきた。それでもびくともしない。リーダーからの合図が出たので、盾から飛び出て全員が攻撃を開始。僕も盾を解除し立て続けに魔力を溜めていた一番最初に攻撃をしてきた前衛を一人魔力を込めた捕縛網で捕まえた。
残っている敵の前衛3人を二人一組で捕縛。前衛が捕まると、回復してきていなかった中衛も捕まって行く。おそらく王と後衛はまだ元気だったのだろうが、残りの騎士数が5名以下になった時点で戦いが終了した。
1回戦優勝は、初めてに近い偉業らしい。領主のアンゼルムからも祝いの言葉を貰い、僕らは中央の場所へ戻った。
「クレストリア、おめでとう」
「クレストリア様、1回戦突破、おめでとうございます。明日の第2試合が楽しみですね」
「キャサリンエリザ様、残念だけど我々は2回戦は出ませんよ」
「え、そうなの。折角クルスヴィストが優勝できそうなのに。貴方が出なくても大丈夫なのですか」
「いえ、僕らが出ないだけではなく、クルスヴィストは棄権します」
「まあ、どうして。あのまま転移を使えば優勝もできるでしょ。少なくとも2位になれるわ」
「あの方法で優勝しても、それは単に僕の功績であってクルスヴィストの功績にはならない可能性がある。それにクルスヴィスト領にはもう1戦できる力が残ってません。上位領地は明日の2回戦に向けて予備の騎士が居ますが、クルスヴィスト領は予備の騎士もいないし回復薬もさっきで全部使い切りました。それでも5位で十分な結果です。今年、転移魔法を使う作戦を見せましたから、来年は対策してくるでしょ。事前に転移禁止の魔道具を持ち込んで魔力を込めれば対応できますからね。だから来年はもっと準備をして挑むそうですよ」
「そうなの、下位領地は大変なのね。ではこの後はゆっくり観戦するのね」
「はい。来年の為にもしっかり勉強させてもらいます」
その後の試合も見た。様々な魔道具がつかわれた。それでも死者が出るような攻撃魔道具が禁止されているので、ユニークな魔道具が使われていて面白かった。
1回戦の優勝者は、クライスバーク領の第1チーム、アダマンジャルン領の第2チーム、エルレドルア領、ステラリア領、そしてクルスヴィスト領となった。
そして次の日。
アダマンジャルン領の第2チームは第1チームの敗戦後に第1チームに参加した選手は第2チームに移動できないが、予備騎士は移動できるので最終的にはきちんと戦力を整えたチームになっていた。
午前中の最初に試合が行われた。優勝はなんとステラリア領だった。最後にアダマンジャルンとステラリアとの戦いだったが、第1チームで出場していた精鋭3名が欠けていたのが響いたようだ。それに薬箱が焼けたので在庫も減っていたらしい。
思わぬところでステラリア領へ貢献してしまったようだ。
午後からは、領地毎の展示が行われ、卒業生が作った魔道具を並べられた。対抗戦とは異なり、これは中央も参加できる。
ただ、中央は人数が少ないので卒業生だけでなく、4、5年生も出すようだ。中央は元々文官志望が多いので、こちらの展示がメインのようだ。
ヴィルヘルム王子は、卒業課題として魔力を消費しないレンズの研究を行っていた。眼鏡は遠視と近視の両方が完成したが、使ってみると朝、晩で見え方が違い、人の視力が違うことが影響している為だと書いてあった。結果的には近視については魔道具の方が便利。遠視については、そこまで視力補正を必要としないので魔力の消費なく使えて便利だとまとめてあった。
そして応用としてキャサリンエリザ様は、レンズを複数枚の組み合わせる研究をしていた。具体的には望遠鏡と顕微鏡だ。
完成した望遠鏡と、身体強化を活用した視力強化の魔術を比較していた。結果は、視力強化の魔術の方が使い勝手が良いが、視力強化は全員が簡単に習得できる技術ではない。特に街を守る平民の兵士は魔力が無いので魔力を必要としない望遠鏡の優位性が説明されていた。
そして顕微鏡については、今までの概念を打ち破りミクロの世界を覗けることがとても画期的だったらしい。視力強化で拡大してみる技術は確立していないらしい。 魔力を使った照明器具を組み合わせることで、微生物の確認や植物や動物の細胞を調べる事ができる。今回の展示内で急に何かがわかったわけではないが、今後の顕微鏡を使った新たな研究分野の確立が必要だと書いてあった。
これらの研究を評価されたのかどうかはわからないが、ヴィルヘルム王子が優秀賞。キャサリンエリザ王女は最優秀を貰っていた。
ちなみに僕は1年生の最優秀賞を貰えた。アデリートメアリー様は次点で優秀賞だ。少しだけ僕の方が魔法の成績が良かったらしい。
次の日が今年の最終日になる。
卒業者の卒業式があった。それが終わると僕らの修了式がありあっという間に1年生が終わった。
最初のリーグは上位領地の第4位シルヴィスト領と6位のステラリア領が入った戦いだ。
ステラリア領の女性なのにエイレーネアテナ様が率いているようだ。
「ステラリア領は、女性の領主候補生が率いているんですね」
「ああ、あそこは毎年エイレーネアテナ様が王をしているよ。強いよあそこは」
開始とともに半数を割いて水魔法をたたき込み時間を稼ぎ、神の盾を作り出してから防御に徹している。彼女の近くに文官と思われる2名が魔道具に魔力を流し込み投擲が得意な護衛騎士に渡し、護衛騎士が次々に魔道具を投げ込んでいる。
「ああやって防御態勢を整えて、魔道具を投げ込みながら相手の戦力を削り、チームが減るのを待ってから攻撃に変わるんだ。投擲する魔道具は普通、攻撃系魔道具を投げ込むけど、煙の後にあんなに涙を流したり、くしゃみをしたり毎年変わった攻撃をするんだよ」
どうやらヴィルヘルム王子の解説がさらさらと出ない理由は今年も初めての意味不明魔道具のせいだったようだ。
攻撃も進み、想定通り上位領地だけが残った。
「ここからがエイレーネアテナ様が聖女と言われるゆえんの戦い方だね。神々への祈りが届いた素晴らしい姿が見れるよ」
その後の戦いで見せたエイレーネアテナ様はとてもすごかった、神具を使った癒しの魔法、加護を与えて騎士を送り出し指示を出す姿はとても美しかった。
最後に、シルヴィスト領がエイレーネアテナ様の盾に向けて攻撃したが全ての攻撃がはじかれた。敵の前衛がエイレーネアテナ様に集まる中で、ステラリア領の前衛、中衛の全員がシルヴィスト領の王を攻撃してサークル外に出し決着がついた。
「ステラリアの勝ちだったね。次の次がクレストリア様が出番だね、そろそろいどうするのかな」
「はい」
「クレストリア様、お怪我をなさらないように」
「ええ、では行ってきます」
訓練場に降りて、クルスヴィストのメンバーが集まるところへ移動した。会場はすでに次の試合が始まった。
朝の組み合わせ表で僕らは一番の強敵であるアダマンジャルン領の第1チームとの対戦が決まっていた。
作戦の指揮官は最上級生。
「では作戦の復習です。最初の配置は4‐5-3-4の攻めの型で行く。開始と共にクレストリア様がアダマンジャルン領を残して他の王を退場させます。前衛は、開始と共にアダマンジャルンの前に出なさい。別働隊は退場で混乱する左側領地中央を突破。その後でアダマンジャルンの後ろへ回り込め、攻撃後に合図で一度撤退する。敵が回復を始めるために薬箱を開いたら爆発の魔道具を投擲できる兵士と一緒にクレストリア様が転移、薬を破壊後に戻ってください。それまではクレストリア様は神の盾は使わず魔力回復をしっかりと行ってください。その後はこちらが限界まで防御に徹し、制限時間5分前に後衛以外のすべての戦力で全力反撃。では、クリストリア様からお声掛けをお願いします」
「皆、敵はアダマンジャルン領の第1チーム。強敵だ。臆する必要は無い。胸を借りるつもりで最善を尽くそう」
周りを一回り皆を顔を見る。
「さあ戦いの時だ。持てる力を存分に発揮し敵を撃つぞ。いざ出立」
お決まりの文句を言って皆が入場の位置に入る。前のチームが全員いなくなり、入場。
すべての領地の準備が終わり開始の魔道具が音を響かせた。
音の鳴り終わりと共に僕は転移。敵の王を捕まえて隣の領地へ転移。前の王を置いて新たな王を捕まえて転移。最後に自分の領地へ戻る。
こちらのチームは計画通り前衛がアダマンジャルン領の戦いを仕掛け、別働隊は混乱する負けチームの中をかいくぐって横からアダマンジャルン領の後衛に攻撃を仕掛けた。
審判も何が起きたのか理解が送れたらしく、少し遅れてから負けの判定の笛が連続で鳴り響いた。アダマンジャルン領は何が起きたかわからず動揺したまま別の領に向かった兵士を急いで戻している。
こちらは後衛で準備した魔道具を投擲し始め、中衛あたりにダメージを出す。
なし崩し的に始まった戦闘だがさすがに上位領地の中でも最強と言われるチームだけありすぐに立て直しされた。
こちらが有利だったのは僅かに1分程度だったのではないだろうか。開始から2分で数名の騎士が戦闘不能となった。やはり上位領地は魔力の多い上級貴族が多く1対1の能力はあちらが上だ。なんといっても16名全員が上級貴族で最終学年と一つ下で構成されているのだから。普通に戦えば勝負にならない。
拮抗が崩れた瞬間に撤退の合図。あちらも開始直後、まだ時間があるので不用意な追いかけはないようだ。
ヒルベルトが作った神の盾に全員が入り回復薬を使う。
僕の隣に投擲する騎士がスタンバイ。敵の騎士たちは怪我をした騎士の手当てを行うために薬箱を開けた。
「行くよ」
「はい」
箱の近くに転移し騎士が魔道具を投擲。直後に領地に戻る。
どーんと爆発音が聞こえた。
「うわ、薬箱がやられた。回復薬が全滅だ」
「まだ転移ができるんじゃないか。王のサークル内の転移禁止魔法陣はどうなってる。急げ。皆は自分の手持ち分で回復しろ」
こちらはけが人が少なくヒルベルトが癒しを行っていた。僕も回復薬を飲んで魔力を補充する。そして神の盾を僕が交代して発動させ、ヒルベルトの近くに陣取る。
息をついた騎士たちは順次飛び立って。ここからは2-3-7-4の中衛を増やした防御側体制で防御に徹する。
敵は怪我をした騎士を癒しで治し前線に復活してきた。予備の回復薬ないので神聖魔法を使う回復者の魔力が亡くなった時点で復活者が消えるはずだ。持久戦になれば有利になるはず。
あちらは持久戦を嫌って一気に攻撃を仕掛けてきた。徐々にこちらが押されているがほぼ全員が防御に集中しているので回復薬を使いなんのでとか持ちこたえている。
当初は最長1時間の戦いで50分は持ちこたえる予定だったが予想よりも消耗が激しい。開始から10分たらずでこちらも用意した回復薬が底を尽きつつあった。
「当初の想定よりもペースが速い。こちらのダメージも多いが、あちらも疲労が早い。現状でお互いに最終局面と言えるだろう。あちらはすでに数名の戦闘不能者がいる。作戦通りいったん敵の全力攻撃を受け止める。その後でクレストリア様とヒルベルト様を残し残り全員で攻める。魔力の減った敵は二人一組で捕縛して行け、戦闘不能者を10名出せば勝ちだ。敵の王は無視だ。ルールを盾に勝ちを貰う」
「守りは任せて、全力攻撃でも耐えられる。合図とともに一番魔力量の多い前衛は僕が捕縛する。後は頼むよ」
そして予定通り全員がサークル内にいる状態で敵の前衛がゆっくりと魔力を溜めて攻撃をしてきた。それでも神の盾は少し光るだけで完全に攻撃を防いだ。連続で別の前衛がもう一度魔力攻撃してきた。それでもびくともしない。リーダーからの合図が出たので、盾から飛び出て全員が攻撃を開始。僕も盾を解除し立て続けに魔力を溜めていた一番最初に攻撃をしてきた前衛を一人魔力を込めた捕縛網で捕まえた。
残っている敵の前衛3人を二人一組で捕縛。前衛が捕まると、回復してきていなかった中衛も捕まって行く。おそらく王と後衛はまだ元気だったのだろうが、残りの騎士数が5名以下になった時点で戦いが終了した。
1回戦優勝は、初めてに近い偉業らしい。領主のアンゼルムからも祝いの言葉を貰い、僕らは中央の場所へ戻った。
「クレストリア、おめでとう」
「クレストリア様、1回戦突破、おめでとうございます。明日の第2試合が楽しみですね」
「キャサリンエリザ様、残念だけど我々は2回戦は出ませんよ」
「え、そうなの。折角クルスヴィストが優勝できそうなのに。貴方が出なくても大丈夫なのですか」
「いえ、僕らが出ないだけではなく、クルスヴィストは棄権します」
「まあ、どうして。あのまま転移を使えば優勝もできるでしょ。少なくとも2位になれるわ」
「あの方法で優勝しても、それは単に僕の功績であってクルスヴィストの功績にはならない可能性がある。それにクルスヴィスト領にはもう1戦できる力が残ってません。上位領地は明日の2回戦に向けて予備の騎士が居ますが、クルスヴィスト領は予備の騎士もいないし回復薬もさっきで全部使い切りました。それでも5位で十分な結果です。今年、転移魔法を使う作戦を見せましたから、来年は対策してくるでしょ。事前に転移禁止の魔道具を持ち込んで魔力を込めれば対応できますからね。だから来年はもっと準備をして挑むそうですよ」
「そうなの、下位領地は大変なのね。ではこの後はゆっくり観戦するのね」
「はい。来年の為にもしっかり勉強させてもらいます」
その後の試合も見た。様々な魔道具がつかわれた。それでも死者が出るような攻撃魔道具が禁止されているので、ユニークな魔道具が使われていて面白かった。
1回戦の優勝者は、クライスバーク領の第1チーム、アダマンジャルン領の第2チーム、エルレドルア領、ステラリア領、そしてクルスヴィスト領となった。
そして次の日。
アダマンジャルン領の第2チームは第1チームの敗戦後に第1チームに参加した選手は第2チームに移動できないが、予備騎士は移動できるので最終的にはきちんと戦力を整えたチームになっていた。
午前中の最初に試合が行われた。優勝はなんとステラリア領だった。最後にアダマンジャルンとステラリアとの戦いだったが、第1チームで出場していた精鋭3名が欠けていたのが響いたようだ。それに薬箱が焼けたので在庫も減っていたらしい。
思わぬところでステラリア領へ貢献してしまったようだ。
午後からは、領地毎の展示が行われ、卒業生が作った魔道具を並べられた。対抗戦とは異なり、これは中央も参加できる。
ただ、中央は人数が少ないので卒業生だけでなく、4、5年生も出すようだ。中央は元々文官志望が多いので、こちらの展示がメインのようだ。
ヴィルヘルム王子は、卒業課題として魔力を消費しないレンズの研究を行っていた。眼鏡は遠視と近視の両方が完成したが、使ってみると朝、晩で見え方が違い、人の視力が違うことが影響している為だと書いてあった。結果的には近視については魔道具の方が便利。遠視については、そこまで視力補正を必要としないので魔力の消費なく使えて便利だとまとめてあった。
そして応用としてキャサリンエリザ様は、レンズを複数枚の組み合わせる研究をしていた。具体的には望遠鏡と顕微鏡だ。
完成した望遠鏡と、身体強化を活用した視力強化の魔術を比較していた。結果は、視力強化の魔術の方が使い勝手が良いが、視力強化は全員が簡単に習得できる技術ではない。特に街を守る平民の兵士は魔力が無いので魔力を必要としない望遠鏡の優位性が説明されていた。
そして顕微鏡については、今までの概念を打ち破りミクロの世界を覗けることがとても画期的だったらしい。視力強化で拡大してみる技術は確立していないらしい。 魔力を使った照明器具を組み合わせることで、微生物の確認や植物や動物の細胞を調べる事ができる。今回の展示内で急に何かがわかったわけではないが、今後の顕微鏡を使った新たな研究分野の確立が必要だと書いてあった。
これらの研究を評価されたのかどうかはわからないが、ヴィルヘルム王子が優秀賞。キャサリンエリザ王女は最優秀を貰っていた。
ちなみに僕は1年生の最優秀賞を貰えた。アデリートメアリー様は次点で優秀賞だ。少しだけ僕の方が魔法の成績が良かったらしい。
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