貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油

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第3章 学園編1

3.17 お披露目

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 今日は、学園に通う王子や王女達と領主会議に向かっている。どうやら今日が僕のお披露目らしい。夕方の領主会議で紹介され、そのまま夜会に少し出席する。
 領主会議に行くと久しぶりにアンゼルム様を見かけた。あちらからにこりと笑顔で返答があった。
 まず王様から僕の事が紹介した。おばあさまは後見人として僕の隣に立っている。
「陛下、なぜこの時期にヴィルヘルム王子とは別の王子を立てるのですか。その真意をお聞きしたい。我々もそれによって今後の対応を考える必要があります」
「クレストリアが13歳になるまでは今の状態を維持するつもりだが、その時にヴィルヘルムの王位継承順位を下げようと思っておる。体調の事も理由だが。魔力量は圧倒的にクレストリアの方が優秀なのだ」
「多少の優劣ならば、前王の子であるヴィルヘルム王子をたてる。それが貴方を王に押した私との盟約だったはずだ」
 第1夫人 アマーリエエリザの親で最大領地を持つクライスバーク領の領主が厳しい目で陛下をにらんだ。陛下よりも年上でこの場を仕切っているのが陛下ではなくこの人だと言っても過言ではないぐらいの雰囲気だ。
「多少ならばと言う約束通りだ。アンゼルム、クリスティーナ、今のクレストリアの魔力量がどのくらいか教えられるか」
「はい、陛下。去年の段階で私の2倍。今は3倍にも届こうとしていると思われます」
「なんだと、アンゼルムは若手領主の中で最高位に近い魔力量であっただろう、だから王家かのクリスティーナを嫁に出した。それを今の段階で上回ると言うのか」
 そう言われて、鑑定で全体を見回していて結果を比べるとわかった。確かにアンゼルム様が少しだけ他の領主よりも魔力量が多い。そしてこの威張っているクライスバーク領の領主はアンゼルム様よりもさらに魔力量が多い。陛下と同じ全属性で魔力量も多いのだから、そもそも陛下を押して王家の政変を納めなずに自分が王位につくことも可能だったのだろう。
「クレストリアの能力は、その片鱗を見せ始めているが、もうしばらくは様子を見たいと考えておる。予定通りならば13歳になった段階で正式な養子とし王太子候補とするつもりだ」
 言い切ったな。一呼あいた後でクライスバーク領の領主が声を出す。
「御意。陛下のお心のままに」
 そして、クライスバーク領の領主が急に態度を改めて、臣下の礼をとった。
 あれ、もしかして演技ですか。そりゃそうだ。こんな場でもめるはずないか。
 その後は王子、王女を含めた食事会が行われ、食事が終わると僕らは学園の領に帰された。すこしだけクリスティーナ様と話した時に、属性判定する装置で魔力を測ったら持っていなかった属性にうっすらと色がにじみ出てきたらしい。小さい方の像は魔力を注ぎ終わるころらしい。
 魔石を作った時にまだ虹色にならないが効果が出てきているので頑張ると言っていた。
 クリスティーナ様で結果も見えてきた。アンゼルム様は、領主会議中は領地に魔力を使えないのでこの期間の間に白の属性を付けるために像へ魔力を奉納するそうだ。回復薬も用意しているらしい。
 アンゼルム様からは僕の護衛で中央に来てもらったレイマルティナ・ファルケンマイヤーに同じ同級生のヴィエラシャルル・サンジェストの家から婚約の打診が来ていると教えてもらった。今年の学園が終わったらお互いの家同士で話し合いがあるらしい。

 領に戻ってから、レイマルティナにその話をしたら、今回学園に行く前から話が出てきていたらしい。結婚は親が決めるので、そこまで嫌な相手でなければ断ることはないらしく、ずいぶんとあっさりとしているなと思ったが、夜にビアンカが休みの日にはデートだと喜んで出かけてますよと教えてくれた。

 その日の夜に布団の中で領主会議でも僕が王になると話されていたことを思い出す。
 どうしてこうなったのだろうかと疑問に思う。そして逃げる事の出来ない運命を恨む。
 では幼い時に死んだ方がましだったのかと言えばそういうわけでもない。
 少なくとも僕の死んだ記憶にない父親はそのための僕を生かしてくれたはずだ。その父親の意志を尊重するためにも運命を受け入れるべきなのだろうか。この寮で過ごす中で、時折王女達と話した時にも思ったが、僕は幼少期に王となるような教育を受けていないこともあり、今の僕は民に対する重い責任感や使命を持っていない。そういった意識がほとんど無い。聖礼式以降で領主候補生として教育を受け、領民を幸せにしなければと思うようになっては来たが、国を背負うような意識は無い。他領の貴族の為に何かをする気も全く起きない。
 こんな状態で王を目指して良いのか疑問だ。だが、周りの期待もあり裏切ることは良くないように感じている。覚悟は無いが亡くなった父親の期待を裏切ることがないように生きたいとは思っている。
 結局、いくら悩んでも明確な答えは無い。明日急に王になるわけでもない。まだだからこれからなのだろう。とりあえずすぐに逃げ出す決意も無く、結局は流れに任せることにしようと思った。
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