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第3章 学園編1
3.2 継承の儀
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朝、目が覚めるといつもと違う景色に驚いたが、そう言えば王城だったと思い出した。
今日は、継承の儀式をするらしい。朝からしっかりと体を洗われて昨日と同じ感じにつくりあげられた。そろそろ儀式の場へ出発するようだ。
儀式は王城の隣にある中央神殿の最奥の間を使うそうだ。付き添いでおかあさまも行けるところまで一緒に行くそうだ。神殿に入るとすでにシルクヴィスクレア様が到着していると言われた。
最奥の間に入る扉前に護衛らしき女性騎士が数名立っていた。おかあさまもここまでらしい。僕の護衛も扉の前で待つようだ。
神殿の巫女が扉を開けて中に入る様に指示する。巫女も入らないらしい。中を見ると女性が1人いるのがわかる。僕が中に入ると扉がしまった。
女性は後ろ姿だ。入った時から鑑定で確認しているのでシルクヴィスクレア様で間違いはない。
女性に声をかける。
「シルクヴィスクレア様、お待たせしました。クレストリア・フルトヴィストです」
女性が振り向くとそこにいたのはおかあさまと同じ顔の女性だった。双子とは聞いていたけど全く同じ顔だ。
「クレストリア。こんなに大きくなったのね。元気そうで良かったわ」
”こんなに大きくなった”。昔に会った事がある言いかた。ウルレアールを領地に帰した時に来ていたからその時の事だろうか。気が付いていたのか。
「3年前のウルレアールを連れて行ったときですか?」
「いえ、もっと前よ」
「もっと前ですか。僕は誘拐された前の事を覚えていません」
「あ、そういうことになっていたわね。でも良いのよ。私は貴方の事情を知ってます。それに会ったのは、あなたが産まれた頃の事よ。私の亡くなったランスターエルリックとあなたは生まれた日も近いのよ」
うーん、本当におかさまに良く似ている。声も顔も一緒だ。
あれ、声?
僕がおかあさまをおかあさまと思ったのは声だ。あれ。なんか開いてはいけない扉かも。だめだ。考えてはいけない。頭の中で何かが警告を出す。僕は何となく気になったことを頭の隅に追いやる。
「さあ、今日はあなたに継承の儀式を行います。今日のこの日を迎えられて私はとても嬉しいわ。私のランスターエルリックにも痣があったのだけど亡くなってしまったでしょ。他の子供には痣は出なかったし、もう継承の儀式を行う事は無いと思っていたけれど、あなたが生きていてくれて良かったわ」
そういってそっと抱きしめられた。感じはおかあさまと一緒だ。なぜか涙が出てくる。どうしたのだろう。
「あら、クレストリア。どうして泣いているの」
「わかりません。どうしてでしょう。おかあさまに抱かれている感じがしました。そのせいでしょうか」
「ふふ。そうね。私を母を思ってくれるのなら嬉しいわ。私のエルリックは亡くなってしまったから。一度だけ呼ばせてもらっても良いかしら。」
「はい」
ああ、そうか亡くなった自分の子供を思う母の感じを感じて無いのかな。そう思った。
「エルリック、私のエルリック」
そう言ってしっかりと抱き締められた。ふと自分のステータスを見ると変化があった。
名前 クレストリア・フルトヴィスト
真の名 ランスターエルリック・エルレドルア
なに、どういうことだ。
その瞬間にいろいろとおかしな情報があったその全てが繋がった。そして言葉に。
「おかあさま」
「エルリック」
時間にして1分ほどもなかっただろう。シルクヴィスクレア様が離れた。
「シルクヴィスクレア様。僕の鑑定能力は自分のステータスも見れます」
「そうなの」
「シルクヴィスクレア様が名前を呼んだ時にステータスに変化がでました。真の名が表示されました。僕はランスターエルリック・エルレドルアなのですね」
…
「そう、知ってしまったのね」
「はい」
「貴方が見つかった時にアンゼルム様から領主専用の方法を使って私の所にも連絡があったわ。でも貴方を迎え入れることができる状況ではなかったの。それに妹のシスティナが子供を亡くして精神が不安定だったのも知っていたわ。私たちが双子だったからなのか、同じ時に生まれた貴方達は2人とも痣をもって、同じ容姿だった。それは育った後も。入れ替えができるから預かりたいと言われたの」
少し間があいて、言葉が続く。
「まず、私の子供。つまりあなたが1歳の時に誘拐されたの。でもすぐに見つかった。でも育てたらすぐにわかるのよ。子供が入れ替わっていたと。でも気が付いた時までにも命を狙われるようなことがあったわ。だから自分の子供は死んだのだと思った。手元にいる子供は代理。それでもいなくなると心に穴が空きそうでわかっていながら育てたわ。それでも気をつけていても殺されたの。死因は毒殺だったわ。貴方が見つかったのはそれから少しした時よ。とても喜んだけど前の夫の子を迎え入れられる状況ではなかったわ。それに数日後にシスティナを母と呼んだと言われた。ショックだったけど安心もしたわ」
「だからウルレアールを渡す時に来ていたのですね。本当は僕を見に来てくれたのですか」
「そうよ。アンゼルム様にシスティナに渡したのだから声をかけるのはダメだけれど姿だけなら見ても良いと言われたの」
「そうですか」
「あなたは私を恨むかしら」
「いえ、悪いのはダーヴィッドだし」
「それも私のせいでもあるの」
「え」
「貴方を誘拐する様に仕向けたのは、私の領地で起きた政権争いのせいなの」
…?
不思議そうな顔でシルクヴィスクレア様を見る。
「貴方の父は、今の私の夫、弟と争っていたわ。私は貴方の父を政治のトップに据えることで領地の発展を願ったの。だけど保守派の抵抗は強く陰湿なものだったわ。夫が死ぬ前に教えてくれたの。自分達の子供を逃がしたと」
「どういうことですか」
「ダーヴィッドが城に忍び込み貴方を誘拐した、でもそれを手引きしたのは貴方の父なのよ。貴方の命を守るために誘拐するように依頼をしたそうよ」
「そんなはずは。僕はそれほどに恵まれた生活もしていません。僕は6度も魔力枯渇に陥り死にかけました。死んでいてもおかしくなかった状況を何度も向かえたのですよ。いつ殺されるか不安に思い、自分の価値を上げる努力をして殺されないように頑張って」
「ダーヴィッドはステータスを見る力に転移の能力を持っていた。効果的に魔力を吸い出されていたでしょう。魔力枯渇した時の助かる確率を見れたそうよ。できる限り長く潜る様に言ったそうよ」
そんな馬鹿な。と思うがきちんと8割の魔力を吸われていた。そういわれると鑑定能力も無ければそんなことは不可能だ。それは昔から疑問に思っていたことだ。
「あなたが私の子供だと知ってしまったし、もともと学園に通うまでに会わせる予定だったらしいけど、明日にもダーヴィッドにも会わせましょう。かれは王城の地下にいるわ」
「捕まっていたのですか」
「ええ、もう逃げる理由がないからと自ら王城に出頭したそうよ。陛下から知らされているのは限られた人だけ。貴方に渡す必要がある物を持っているから秘密裏に生かされていたのよ」
なんと、僕が知らないところでいろいろと。
「あまり時間をかけると良く無いわ。詳しい話はまた後にして、継承の儀式をしましょう」
そう言われて赤い絨毯の中央に移動した。
「シルクヴィスクレア・エルレドルアからクレストリア・フルトヴィストに力を継承する」
最初に名前を唱えた後で白と黒の神の名を呼んだ。
「あら、上手くいかないわ。クレストリア、念のために痣を見せて」
僕は言われた様に痣を見せる。
「継承を行う条件は満たしているはずなのに」
「名前じゃないですか。僕がランスターエルリック・エルレドルアと知ったから、あるいは知らなくてもランスターエルリック・エルレドルアと真名を言わないといけないのでは」
「ああ、そうね。その可能性は高いわ。おじいさまから継承の儀を教えられた時に王家が聖礼式前の幼名と名前を使っていた場合は幼名を使うと注意があったと言っていたわ。では、あらためて行きます。シルクヴィスクレア・エルレドルアからランスターエルリック・エルレドルアに力を継承する」
その言葉と共に魔法陣の枠が現れた。その後で神の名を呼ぶたびに赤い絨毯の上に紋様が現れる。そして2体の大神、6対の中神が光る。その後すべての小神の名前を呼ぶ。小神の幾つかは光らなかったが赤い絨毯のいたるところに紋様が現れた、半分以上の紋様がひかった。全ての神の名前を言い終えた後で長い祝詞を唱えると最後に周りが明るく光り僕の痣に光が吸い込まれた。
まぶしくて一瞬目を閉じた。
そして目を開くステータスが強制的に見せられた。
魔力の効率が上昇し、基本ステータスがポンと高くなった。そして毒耐性が向上。自動回復の能力が付加された。多少の怪我をしても回復魔法を使うことなく徐々に回復するらしい。
「さあ終りよ。エルリックは私の時とは比べ物になら無いぐらい多くの神から祝福を受けていたわね。受けた祝福を実感するのは学園に行って魔法の習得してからになるけど、他の人よりも簡単に習得できるとかそういった恩恵だけど実感は得にくいでしょう。それに成長すると現れる物もありますからね」
「とりあえず、今の現状で魔力の効率が上昇し、知力や体力などの基本ステータスがあがりました。毒耐性も向上してます」
「ああ、鑑定で見れるのね。では継承が上手く行ったのね。さあシスティナが心配しているでしょうから外へ出ましょう」
部屋を出るとおかあさまが心配そうに見ていた。僕とシルクヴィスクレア様を交互に見ている。おそらく本当の母親を知ったと思っているのだろう。
「おかあさま、継承の儀が終わりました。魔力の効率が上昇し、体力などの基本ステータスがあがりました。それに毒耐性も向上してます。ちょっと丈夫になりましたよ」
そういって力が増えたと言うポーズをして見せた。
「そう、良かった。お姉さまありがとうございました」
「システィナ。クレストリアは大事な甥だもの。礼を言われる様な事はないわよ」
「おかあさま、体のステータスが上がったせいでしょうか、お腹が空きました」
「え、そう。少しお昼には早いからお菓子を用意しましょう。お姉さまもいかがですか」
「そうね。私も魔力を使って疲れたし、行きましょう」
神殿の茶室を借りておかあさまが用意したお菓子を貰う。使うカップをシルクヴィスクレアの傍仕えが丁寧に確認している。最後にお茶を入れた後で並びを入れ替えて一つをシルクヴィスクレアの傍仕えが、もう一つを僕の傍仕えが飲んで確認していた。いやー、領主様への毒見はとても大変だな。ちなみに鑑定で毒を検出していないから大丈夫だと思っている。僕の鑑定能力は植物の調査で毒の検出精度が高いので、基本は毒見よりも鑑定の方が信じられる。
毒見が終り僕らの前にお菓子とお茶が用意された。用意したおかあさまが最初に手を付けて、僕らが手をつける。
「システィナ、昼食が終わった後でクレストリアを連れて王城の地下に行くわ。先ほど王に申請を出したから。あなたは付き添いますか?」
「地下へ、ですか。では」
「おかあさま、僕は大丈夫ですよ。なにがあってもおかあさまの子です。おかあさまが手放さない限り僕の母親はシスティナグラスリンク様しかいません。僕を受け入れてくれたのでしょう。いまさら手放さないくださいね」
「ええ、そうね。手放すわけが無いわ。そう。あなたはクレストリア。私は母。おねえさま、地下には行きます」
「わかったわ」
その後は、おかあさまが落ち着いてシルクヴィスクレア様に僕がお菓子のレシピを作ったり、新しいお茶を作り出した話を説明していた。
今日は、継承の儀式をするらしい。朝からしっかりと体を洗われて昨日と同じ感じにつくりあげられた。そろそろ儀式の場へ出発するようだ。
儀式は王城の隣にある中央神殿の最奥の間を使うそうだ。付き添いでおかあさまも行けるところまで一緒に行くそうだ。神殿に入るとすでにシルクヴィスクレア様が到着していると言われた。
最奥の間に入る扉前に護衛らしき女性騎士が数名立っていた。おかあさまもここまでらしい。僕の護衛も扉の前で待つようだ。
神殿の巫女が扉を開けて中に入る様に指示する。巫女も入らないらしい。中を見ると女性が1人いるのがわかる。僕が中に入ると扉がしまった。
女性は後ろ姿だ。入った時から鑑定で確認しているのでシルクヴィスクレア様で間違いはない。
女性に声をかける。
「シルクヴィスクレア様、お待たせしました。クレストリア・フルトヴィストです」
女性が振り向くとそこにいたのはおかあさまと同じ顔の女性だった。双子とは聞いていたけど全く同じ顔だ。
「クレストリア。こんなに大きくなったのね。元気そうで良かったわ」
”こんなに大きくなった”。昔に会った事がある言いかた。ウルレアールを領地に帰した時に来ていたからその時の事だろうか。気が付いていたのか。
「3年前のウルレアールを連れて行ったときですか?」
「いえ、もっと前よ」
「もっと前ですか。僕は誘拐された前の事を覚えていません」
「あ、そういうことになっていたわね。でも良いのよ。私は貴方の事情を知ってます。それに会ったのは、あなたが産まれた頃の事よ。私の亡くなったランスターエルリックとあなたは生まれた日も近いのよ」
うーん、本当におかさまに良く似ている。声も顔も一緒だ。
あれ、声?
僕がおかあさまをおかあさまと思ったのは声だ。あれ。なんか開いてはいけない扉かも。だめだ。考えてはいけない。頭の中で何かが警告を出す。僕は何となく気になったことを頭の隅に追いやる。
「さあ、今日はあなたに継承の儀式を行います。今日のこの日を迎えられて私はとても嬉しいわ。私のランスターエルリックにも痣があったのだけど亡くなってしまったでしょ。他の子供には痣は出なかったし、もう継承の儀式を行う事は無いと思っていたけれど、あなたが生きていてくれて良かったわ」
そういってそっと抱きしめられた。感じはおかあさまと一緒だ。なぜか涙が出てくる。どうしたのだろう。
「あら、クレストリア。どうして泣いているの」
「わかりません。どうしてでしょう。おかあさまに抱かれている感じがしました。そのせいでしょうか」
「ふふ。そうね。私を母を思ってくれるのなら嬉しいわ。私のエルリックは亡くなってしまったから。一度だけ呼ばせてもらっても良いかしら。」
「はい」
ああ、そうか亡くなった自分の子供を思う母の感じを感じて無いのかな。そう思った。
「エルリック、私のエルリック」
そう言ってしっかりと抱き締められた。ふと自分のステータスを見ると変化があった。
名前 クレストリア・フルトヴィスト
真の名 ランスターエルリック・エルレドルア
なに、どういうことだ。
その瞬間にいろいろとおかしな情報があったその全てが繋がった。そして言葉に。
「おかあさま」
「エルリック」
時間にして1分ほどもなかっただろう。シルクヴィスクレア様が離れた。
「シルクヴィスクレア様。僕の鑑定能力は自分のステータスも見れます」
「そうなの」
「シルクヴィスクレア様が名前を呼んだ時にステータスに変化がでました。真の名が表示されました。僕はランスターエルリック・エルレドルアなのですね」
…
「そう、知ってしまったのね」
「はい」
「貴方が見つかった時にアンゼルム様から領主専用の方法を使って私の所にも連絡があったわ。でも貴方を迎え入れることができる状況ではなかったの。それに妹のシスティナが子供を亡くして精神が不安定だったのも知っていたわ。私たちが双子だったからなのか、同じ時に生まれた貴方達は2人とも痣をもって、同じ容姿だった。それは育った後も。入れ替えができるから預かりたいと言われたの」
少し間があいて、言葉が続く。
「まず、私の子供。つまりあなたが1歳の時に誘拐されたの。でもすぐに見つかった。でも育てたらすぐにわかるのよ。子供が入れ替わっていたと。でも気が付いた時までにも命を狙われるようなことがあったわ。だから自分の子供は死んだのだと思った。手元にいる子供は代理。それでもいなくなると心に穴が空きそうでわかっていながら育てたわ。それでも気をつけていても殺されたの。死因は毒殺だったわ。貴方が見つかったのはそれから少しした時よ。とても喜んだけど前の夫の子を迎え入れられる状況ではなかったわ。それに数日後にシスティナを母と呼んだと言われた。ショックだったけど安心もしたわ」
「だからウルレアールを渡す時に来ていたのですね。本当は僕を見に来てくれたのですか」
「そうよ。アンゼルム様にシスティナに渡したのだから声をかけるのはダメだけれど姿だけなら見ても良いと言われたの」
「そうですか」
「あなたは私を恨むかしら」
「いえ、悪いのはダーヴィッドだし」
「それも私のせいでもあるの」
「え」
「貴方を誘拐する様に仕向けたのは、私の領地で起きた政権争いのせいなの」
…?
不思議そうな顔でシルクヴィスクレア様を見る。
「貴方の父は、今の私の夫、弟と争っていたわ。私は貴方の父を政治のトップに据えることで領地の発展を願ったの。だけど保守派の抵抗は強く陰湿なものだったわ。夫が死ぬ前に教えてくれたの。自分達の子供を逃がしたと」
「どういうことですか」
「ダーヴィッドが城に忍び込み貴方を誘拐した、でもそれを手引きしたのは貴方の父なのよ。貴方の命を守るために誘拐するように依頼をしたそうよ」
「そんなはずは。僕はそれほどに恵まれた生活もしていません。僕は6度も魔力枯渇に陥り死にかけました。死んでいてもおかしくなかった状況を何度も向かえたのですよ。いつ殺されるか不安に思い、自分の価値を上げる努力をして殺されないように頑張って」
「ダーヴィッドはステータスを見る力に転移の能力を持っていた。効果的に魔力を吸い出されていたでしょう。魔力枯渇した時の助かる確率を見れたそうよ。できる限り長く潜る様に言ったそうよ」
そんな馬鹿な。と思うがきちんと8割の魔力を吸われていた。そういわれると鑑定能力も無ければそんなことは不可能だ。それは昔から疑問に思っていたことだ。
「あなたが私の子供だと知ってしまったし、もともと学園に通うまでに会わせる予定だったらしいけど、明日にもダーヴィッドにも会わせましょう。かれは王城の地下にいるわ」
「捕まっていたのですか」
「ええ、もう逃げる理由がないからと自ら王城に出頭したそうよ。陛下から知らされているのは限られた人だけ。貴方に渡す必要がある物を持っているから秘密裏に生かされていたのよ」
なんと、僕が知らないところでいろいろと。
「あまり時間をかけると良く無いわ。詳しい話はまた後にして、継承の儀式をしましょう」
そう言われて赤い絨毯の中央に移動した。
「シルクヴィスクレア・エルレドルアからクレストリア・フルトヴィストに力を継承する」
最初に名前を唱えた後で白と黒の神の名を呼んだ。
「あら、上手くいかないわ。クレストリア、念のために痣を見せて」
僕は言われた様に痣を見せる。
「継承を行う条件は満たしているはずなのに」
「名前じゃないですか。僕がランスターエルリック・エルレドルアと知ったから、あるいは知らなくてもランスターエルリック・エルレドルアと真名を言わないといけないのでは」
「ああ、そうね。その可能性は高いわ。おじいさまから継承の儀を教えられた時に王家が聖礼式前の幼名と名前を使っていた場合は幼名を使うと注意があったと言っていたわ。では、あらためて行きます。シルクヴィスクレア・エルレドルアからランスターエルリック・エルレドルアに力を継承する」
その言葉と共に魔法陣の枠が現れた。その後で神の名を呼ぶたびに赤い絨毯の上に紋様が現れる。そして2体の大神、6対の中神が光る。その後すべての小神の名前を呼ぶ。小神の幾つかは光らなかったが赤い絨毯のいたるところに紋様が現れた、半分以上の紋様がひかった。全ての神の名前を言い終えた後で長い祝詞を唱えると最後に周りが明るく光り僕の痣に光が吸い込まれた。
まぶしくて一瞬目を閉じた。
そして目を開くステータスが強制的に見せられた。
魔力の効率が上昇し、基本ステータスがポンと高くなった。そして毒耐性が向上。自動回復の能力が付加された。多少の怪我をしても回復魔法を使うことなく徐々に回復するらしい。
「さあ終りよ。エルリックは私の時とは比べ物になら無いぐらい多くの神から祝福を受けていたわね。受けた祝福を実感するのは学園に行って魔法の習得してからになるけど、他の人よりも簡単に習得できるとかそういった恩恵だけど実感は得にくいでしょう。それに成長すると現れる物もありますからね」
「とりあえず、今の現状で魔力の効率が上昇し、知力や体力などの基本ステータスがあがりました。毒耐性も向上してます」
「ああ、鑑定で見れるのね。では継承が上手く行ったのね。さあシスティナが心配しているでしょうから外へ出ましょう」
部屋を出るとおかあさまが心配そうに見ていた。僕とシルクヴィスクレア様を交互に見ている。おそらく本当の母親を知ったと思っているのだろう。
「おかあさま、継承の儀が終わりました。魔力の効率が上昇し、体力などの基本ステータスがあがりました。それに毒耐性も向上してます。ちょっと丈夫になりましたよ」
そういって力が増えたと言うポーズをして見せた。
「そう、良かった。お姉さまありがとうございました」
「システィナ。クレストリアは大事な甥だもの。礼を言われる様な事はないわよ」
「おかあさま、体のステータスが上がったせいでしょうか、お腹が空きました」
「え、そう。少しお昼には早いからお菓子を用意しましょう。お姉さまもいかがですか」
「そうね。私も魔力を使って疲れたし、行きましょう」
神殿の茶室を借りておかあさまが用意したお菓子を貰う。使うカップをシルクヴィスクレアの傍仕えが丁寧に確認している。最後にお茶を入れた後で並びを入れ替えて一つをシルクヴィスクレアの傍仕えが、もう一つを僕の傍仕えが飲んで確認していた。いやー、領主様への毒見はとても大変だな。ちなみに鑑定で毒を検出していないから大丈夫だと思っている。僕の鑑定能力は植物の調査で毒の検出精度が高いので、基本は毒見よりも鑑定の方が信じられる。
毒見が終り僕らの前にお菓子とお茶が用意された。用意したおかあさまが最初に手を付けて、僕らが手をつける。
「システィナ、昼食が終わった後でクレストリアを連れて王城の地下に行くわ。先ほど王に申請を出したから。あなたは付き添いますか?」
「地下へ、ですか。では」
「おかあさま、僕は大丈夫ですよ。なにがあってもおかあさまの子です。おかあさまが手放さない限り僕の母親はシスティナグラスリンク様しかいません。僕を受け入れてくれたのでしょう。いまさら手放さないくださいね」
「ええ、そうね。手放すわけが無いわ。そう。あなたはクレストリア。私は母。おねえさま、地下には行きます」
「わかったわ」
その後は、おかあさまが落ち着いてシルクヴィスクレア様に僕がお菓子のレシピを作ったり、新しいお茶を作り出した話を説明していた。
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