貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油

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第2章 上級貴族の息子

2.20 ウルレアールの結婚

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 春が終わり夏に。最近は人並みの8歳児と程度に体力もついてきた。
 季節がよいので、子供達を集めて夏の行事が行われるそうだ。勉強の進みも確認し集団で学んだ方が良い事を教えてくれる。これから真夏になる前の1ヶ月だけ城へ勉強に行くのだ。勉強が終わると8歳。
 その1月後に秋の領主会議。いよいよウルレアールが戻ってくる。本物のクリストにも会える。
 夏の学習部屋では国語、地理の勉強が中心だ。貴族の言い回しは難しくてなかなか理解に苦しむ表現が多い。
 それに今回は神学の勉強も行われる。お祈りの練習もある。春、夏、秋、冬のそれぞれのお祈りを覚えるのだ。
 久しぶりに同級生や、上級生が集まってくる。
 ヒルベルト以外では特に仲が良い友達が出来ていたわけではないので、満遍なく色々な階級の人と会話した。
 午後からの運動で僕の体力がかなりついていたのでようやく皆と同じように運動ができた。
 そして、夏の勉強部屋は順調に終り僕の誕生日になった。ようやく8歳だ。
 そして1ヶ月が順調に過ぎて明日から領主会議が始まる。

 おとうさまとおかあさまと一緒に城へ行くが2人は転移で移動しない。こちら側でウルレアール達の受け入れをするからしい。
 領主夫妻が転移した次の日にウルレアール達が転移してくるそうだ。僕らは到着時間に合わせて転移部屋で待っていた。転移装置が光るとそこにはウルレアールと子供が1人、それに傍仕えの女性が2人居た。
 ここで挨拶はせずにすぐに転移部屋から応接室に移動した。
 僕は、おとうさまとおかあさまそれに婚約したジェイラス・ランバートと一緒にウルレアールに挨拶をした。あちらからはウルレアールの現状の説明がありクリストの紹介があった。
 初めて会ったクリストは僕とは全然似ていない男の子だった。僕よりも一つ上と言っていていたが体はずいぶん大きくウルレアールと同じく青い髪、青い眼。僕はおかあさまに似た金の髪に青い眼だ。
 これから暫くは僕の家に滞在し領主達が帰還後にジェイラス・ランバートと結婚し、ランバート家に入るらしい。
「はじめましてクレストリア様、これから一月同じ屋根の下でお世話になるそうです。どうぞよろしくお願いします」
 クリストは中級貴族になるので、上級の僕に丁寧な挨拶をしてきた。
「クリスト、ウルレアールにはずいぶんと世話になったんだ。その人の子供である君とは仲良くしたいと思っている、一月後も交流をしてくれると良いのだが」
「まあ、クレストリアそんな先をことを気にする前にまずは明日の事を決めましょうね」
「あ、そうでした」
「クリストはクレストリアの一つ上になるけれど家にいる間のお勉強は同じ教師の下で勉強をしてね。明日も午前中はお勉強。午後に剣術の練習があるわ。その後は自由時間よ。クレストリアは植物の調査をしているけどあなたも好きな事をしていて良いわよ」
「え!お勉強…」
「クレストリアは勉強好きなのよ。かなり進んでいると聞いているからあなたの年で不足は無いと思うわ」
「あのシスティナ様、この半年この子の面倒を見ていたのですがクレストリア様の進捗とは合わないようです。勉学は、アイリーン様と一緒にさせて頂け無いでしょうか」
「まあ、アイリーンはクレストリアよりも一つ下よ。それで良いの?」
「ええ、クリストは実家でもあまり面倒を見てもらえていなくて、私が戻ってからようやく文字の練習を始めたところなのです」
「まあそうなの。それではしかたが無いわね。アイリーンの先生の方へ連絡をしましょう。そろそろ荷物の整理が終わったようね。では移動しましょう」
 僕らは馬車に乗ってちょっとの距離を移動して家に向かった。自宅の前でクリストが家の大きさを見て驚きを通り越した顔で家を見ていた。
「でかい。ほんとにここに住むのですか?」
「一月だけよ。その後はクスケットの家と同じぐらいの家になるのよ」
「ジェイラスは、今回、領主から新しい家を頂いたのだ。一般的な中級の家より少しだけ大きい家だ。大領地であるエルレドルア領から輿入れだ。それにエルレドルア領主からも今回の輿入れについては費用も頂いている。生活面で不自由はさせない。ジェイラスは領主の近衛隊の副隊長だ。領主に会う機会も多い。なにか負都合があればすぐに申し出るように」
「はい。お気使いありがとうございます」
「では、名残惜しいだろうがジェイラス。婚姻前にあまり女性に長く接するのは良く無い。そろそろ別れなさい。明後日には時間を取ってある。また日を改めるように」
「はい、オルトヴィアー様。ではウルレアールをよろしくお願いします」
そう言ってジェイラスはいかにも騎士らしい足取りで帰って行った。
「ジェイラスはまじめすぎるな。ウルレアール、私は明日から領主会議に行かなければなら無い。後の事はシスティナに頼んである。以前居た時は見合いばかりで女性達との社交があまり出来なかっただろう。結婚の準備で忙しいだろうがシスティナが同じ中級貴族を紹介するそうだ。上級貴族は大半が領主会議に行っているから、そちらとの交流は結婚後になるそうだ」
「システィナ様、よろしくお願いします」

 そして、次の日からお客さまの居る生活が始まった。午前中はクリストはアイリーンと一緒に勉強をはじめた。午後は僕と一緒に剣術の練習。その後の自由時間、クリストはアイリやヒルニムスと遊んでいることが多かった。僕は偶にみんなに呼ばれて遊んだりだった。
 偶にヒルベルトが来てくれたので、その時はみんなで激しく遊べた。僕の体力はだいぶついたけど、男の達の全力遊びにはついていけない。ヒルベルトが来てくれて助かった。
 ウルレアールは連日おかあさまと一緒に出かけたり、家でお茶会が開かれていた。とても忙しいそうだった。
 そしてあっと言う間に一月が過ぎ領主会議が終わった。
 すぐに結婚式が行われた。7歳の聖礼式を向かえ無いと対外的な行事にでれないらしくクリストと仲良くなったアイリーンは結婚式が見たかったと残念がっていた。

 中級貴族の結婚式に領主夫妻が出る事はめったにないが、ジェイラスは近衛隊の副隊長。上級に近い中級だ。領主夫妻が出る事があってもおかしくは無い。
 まあ領主夫妻が結婚式にでたがゆえに中級貴族ではなく上級貴族並の豪華な結婚式だったと言う以外は極普通に終わった。
 そしてウルレアールとクリストは家を出ていった。
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