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第2章 上級貴族の息子
2.12 お菓子の準備
しおりを挟む「えっと……あの……僕が本当に芸能人になれるんですか?」
ずっと見られているこの沈黙の時間が気恥ずかしくて、僕は適当に質問を投げかけた。
「あなたのやる気と努力次第です。あなたはやる気がありますか?」
やる気……聞かれても即答できない。そもそも、この話を信じていいのかさえ、わからない。僕、騙されてない?
「でも、これだけは知っていてください。あなたは努力すれば、必ず実ります」
無表情で言い切る彼女に僕は驚き、聞き返した。
「必ずなんて……」
「必ずです」
この世の中、必ずなんて事はないと言おうとした僕の言葉を遮ると、揺るがない自信に満ちた声でキッパリと言い放つ。
なんでこの人は、初めて会った僕の将来に自信が持てるのだろう……でも……誰かに期待されるという事が少し嬉しい気がする。あんなに真っ直ぐな目で僕を見てくれて……
「本当……ですか?」
「本当です。もし、あなたが芸能界に興味があるなら、頑張れるなら、あなたの人生を我が事務所に預けて下さい」
僕はこの女性の真剣な眼差しに魅入られ、気がつくと頭を下げていた。
「よろしくお願いします」
「マネージャーの五十嵐です。お名前は……? 葉月輝良……いい名ですね。そのまま使っていきましょう」
五十嵐さんは僕がさっき簡易的に書いた履歴書を見ながら、話を続ける。
「二人三脚で頑張っていきましょう。必ず、私があなたをトップアイドルに押し上げます」
アイドル……不思議だ、この人が言うと本当にアイドルになれそうな気がする。この人の自信は、僕にも自信をくれる……でも……
僕が、今、直面している問題が頭をよぎる。
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