貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油

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第2章 上級貴族の息子

2.8 注文

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 そして最後に僕から質問。
「バッカス、幾つか材料について質問したいのだけど」
 まずは上小麦粉について質問したが、今この家で使っている小麦粉以上に白い上物は領内には無い。小麦は城では自分達で精麦しているが、市販品の大半はこの領地で精麦している。精麦機(せいばくき)が全て一緒なので同じぐらいの白さにしかならないという事だった。王都の方ではもっと白い小麦粉があるが、この領地の小麦粉の3倍以上するらしい。流通代をいれるともっと高くなる。
 他にも、砂糖は流通しているがこの領地では作っていないことがわかった。砂糖の変わりになる物はハチミツでそれも領内では作っていない。すべて輸入だそうだ。
 最後にインクについて聞いた。家にあるインクも黒だけで結構値段が高いらしい。そしてこのインクは羊皮紙にはすらすらかけるが木札には書きにくい。そしてインクにつけて使うペンは何種類も取り扱っているが、日常に使う筆は無いらしい。
 僕の部屋からスヤキヤ実で作ったインク、魔獣の毛で作った筆兼壷の蓋を見せて作り方を教えた。
「これと同じ物なら今までのインクよりも安くならない?」
「なります。我々の間では木札を使った連絡が多いので、これは大変ありがたいインクです」
「じゃあ、これを作って欲しい。とりあえず使っている分がもうすぐ終わるので一つ売って」
「かしこまりました。ですがこれはかなり広範囲に影響のある商品です。羊皮紙に書けないので既存のインクとの住み分けはできますが、我々の商会だけで取り扱うには利益が莫大になりすぎます」
「へー、そんなに売れるんだ」
「ええ、売れると思います。これを一つ作って坊ちゃまに売る分には問題ありませんが、他の方にも売ってもよろしいのでしょうか」
「かまわないよ。ただそうだね精麦機(せいばくき)が欲しいんだ。中古で良いから売ってくれないかな。それとこの家に持ってきた時に組み立てを見たい。その後で職人に改良を指示するからそれも作って微調整もして欲しい」
「えっと、精麦機(せいばくき)ですか?」
「そうだよ。精麦機と暫くの間、そういった機械の変更できる職人を暫く貸して欲しい。もちろんお金は払うよ。インクも好きにしてかまわないから。それにしてもインクの事は黙ってもって帰って作って売ればばれないのに、きちんと説明してくれるなんてバッカスは親切だね」
「はは、後で利益をわけろと言われては困りますからね。最初から決めていた方が良いのですよ坊ちゃま」
「無用な言い合いを避けるのが商人へのメリットなのかな。それでどうだろう」
「精麦機(せいばくき)は、お譲りしますがおおよその概算ですがこのぐらいの値段になります。ほぼ新品です。さすがにお貴族さまにお譲りして明日壊れては困りますから。それと職人は2名手配しましょう。それとインクについては、貴族さまがお持ちの商会ギルド用の契約魔術を使って頂きたいと思います」
 そう言われて、おかあさまを見ると、ちょっと不思議な顔をしていた。まあ普通貴族の奥様が売れる商品を考え出すことは無いからね。
「商会ギルドの契約書ですが、偶に聞きますが使われるのは年に1度ほどしかありませんよね。領主への申請も必要でしょう。その様な必要性があるのですか。7歳の子供が作った物ですよ」
「え、坊ちゃまは7歳ですか。貴族のお子様はやはり賢いのですね」
「あ、まあ僕は7歳は7歳だけど、スヤキヤの実を食べれば服が汚れるんだから、染やインクに使えるなんて普通に思いつくでしょ」
「スヤキヤの実は、服を汚してダメにしても食べたいと思える甘い部分は多くありませんからあまり食べません。そもそも市場ではあまり売られていません。確かに秋になれば森に沢山なっていますが、鳥が食べる実としか思っていませんでした。むしろ上級貴族であるクレストリア様がどうしてスヤキヤの実を知っているのが不思議です」
「そう、一般認識だとそうなんだ。僕は、いろいろな植物を集めて葉、茎、根、実などばらばらにして調べるのが好きなんだよ。全部で200種類ぐらいは調べたかな」
「なるほど。納得しました。すばらしいご趣味ですね。ではスヤキヤの実から作るインクについてはこちらで検証をいたします。製品に出来るようならご連絡しますので契約魔術の申請をお願いしてもよろしいでしょうか」
「ええ、私から申請すれば問題なく通るでしょう。では連絡を待っています」
「精麦機と職人のこともあります。なるべく早く連絡したいと思います」
 そういって、バッカスは下町へと帰って行った。
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