貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油

文字の大きさ
上 下
13 / 83
1章 囚われた生活

1.13 監禁の地から出る

しおりを挟む
 次の日には体調がだいぶ回復した。散歩に行きましょうとママが手を繋いで庭の外へ連れ行ってくれた。
 幼いときからいつも見ていた庭だ。だが今までにめったに出たことのない庭。
 外で事情聴取が続いているようだ。人のグループは大きく3つ。1つはダーヴィッドといつも行動を共にする3名。その3名に付随した部下5人。ダーヴィッド腹心の男がいないようだ。もちろんダーヴィッドもいない。
 他の人たちは、男女で二つだ。彼らは縛られてはいない。不安そうではあるがもう一つのグループに対して絶望した顔ではないので処分はあっても軽いと聞かされているのだろう。
 僕らがそちらのグループへ近づくと、あちら側が僕に気がついたようだ。
「坊ちゃま、ご無事だったのですね。倒れたと聞いて心配していました」
「なんだ、なにか用か」
 近くにいた兵士が僕らに声をかけてきた。
「そこの者達と少し話をしても良いでしょうか?」
「ああ、近づきすぎるなよ。お前達もこの縄を超えるなよ。超えると処分しなければならなくなる。良いな」
 注意を守れば話はしても良いようだ。
「ダーヴィッド様、いえダーヴィッドは悪いことをしていたと聞きました。私達はどうなるのでしょうか。私達はダーヴィッドと同じ罪で殺されるのでしょうか」
「直接罪を犯していないなら殺されないはずだけど。ただここの植物は貴重だから貴族を派遣してこのままにすると言っていたから、このままここに住んで仕事を続けるんじゃないかな」
「我々のうち3家族は、妻と子供がクライスバークに残されています。ここがクルスヴィストだとは知りませんでした。私がここに残ってしまうと残した家族が飢えてしまいます。どうすれば良いのでしょうか」
「それは、ちゃんと伝えたの?」
「はい。伝えました」
「じゃあ、大丈夫だよ。隊長は僕のおとうさまらしいから、きっと良くしてくれと思うよ」
「あの隊長様が坊ちゃまのおとうさま。それでここに攻めてこられたのですね。ようやくご自分のお子様を取り戻したと言うわけですか」
「まあ、そんな感じになるんじゃないかな。君達は僕に酷くあたったことも無いし、僕も助けてもらえるように助力するから、そこまで悲観せずに希望を持って。最悪でもお金だけでも届けてもらうからさ」
「確かにお金だけでも届けてもらえば当面は何とかなります。少し気が楽になりました」
「良かった。じゃあ印象を良くして、みなの希望が通りやすくするんだよ。その為に彼らに反抗的な態度は取らない。従順に従うんだ。よいね。必ず僕が助けるから」

 女子のグループのほうに近づくとエリーが声をかけてきた。
「クリスト様、歩けるぐらいに回復したんだねです。良かったねです。死にかけたと聞いた時は本当に心配しちゃってたんですよです」
「ああ、エリー。なんとかね」
「クリスト様、エリックは一緒に連れて行くと聞きましたよです。私も連れて行ってくださいなです」
 変な言葉使いだな。語尾に最後ですをつければ良いと思っているのか話し方がめちゃくちゃになっている。エリックの事も聞いているし丁寧に接する様に言われたんだろうな。
「まだどこに行くかも決まってないんだよ。それに貴族の屋敷の厨房なんかで働いてもよいのかい。ここの方が自由だと思うけど」
「クリスト様と一緒だと沢山お菓子が作れそう。です。私はお菓子を作りたいの。です。絶対、連れて行ってくださいです。です。」
「約束は出来ないよ。僕にどれだけの権限があるかわからないから。とりあえずエリーの事は覚えておくよ」
「はーい。です。おねがいしますね。です。」
 エリーは、ほっとした表情でこちらを見て笑顔で答えた。とりあえず言いたい事は言ったと言う顔だ。

 2日後、馬車に荷物を積み込み移動が始まった。先に移動するのは罪人と僕とウルレアールだけだ。エリック達の移動は僕の待遇が決まってからとなるので一旦置いていく。
 ただ見張りの騎士が数名残っているが彼らの行動は自由になった。もうじき収穫が始まるので暫くは今までの生活を続けるようだ。
 僕らはここから3日かけて移動するらしい。
 移動中はちゃんと宿屋に泊まった。なかなかのこう待遇だ。ただ動中それほど大きい街ではなかったので安宿だ。お風呂はないので、桶にお湯を入れてもらって体を拭くだけだ。
 そして3日後、城のある街に入った。罪人はそのまま牢へ移動した。僕とウルレアールは街の高級な宿屋に移動した。
 宿屋に入ると、お風呂があった。まずは体をしっかり洗われ、採寸されて服を手直し、綺麗な服に着替えた。
 夕方になるとオルトヴィアー様が女性を数名連れてやって来た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

処理中です...