貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油

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1章 囚われた生活

1.7 4歳になった。それでもまた死にかけた

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 魔力がなければ家がつぶれるし、隠蔽が切れるとここにいることがばれて盗賊たちは殺される。だからダーヴィッドは僕から魔力を吸い上げる。その魔力で家を維持し、隠蔽の魔法を使い続ける。さらに人が増えると屋敷の部屋を増やす。それだけなら毎日の日常なので特に問題はない。そう魔力枯渇にならないならば魔力の提供は特に負担では無い。偶に熱は出るが最近は体が元気になったのか一月に1回程度しか熱が出なくなった。大きくなるにしたがって元気になる。

 その問題の魔力枯渇だが、いつも限界を超えて魔力を吸われるのは秋だ。秋の収穫時期には貴族が活発に移動するらしい。隠蔽魔法を強くしてみつからないようにするから魔力が必要なようだ。それに強い魔獣が近くに来た時の屋敷に周囲には魔獣が侵入できないような結界がはってあるらしい。それも僕の魔力でまかなっているそうだ。冬の前には食料を求めた魔獣が増えるので魔力消費が増えるのはしょうがないらしい。
 そして今年もまたまた魔力枯渇に陥った。もうじゃんけんでは勝てないのにどうしよう。
「僕の運はステータス上限まで来ている。もう運での勝負は出来ないよ。どうするの?」
「この世界は何でも思ったものを出せる?」
「剣の勝負をしたければ剣が出るし、魔法を撃ちたければ魔法が出せるよ」
へー、魔法が出せるのか。剣も魔法も習っていないしこんな小さい時期に勝って能力が伸びても意味なくないか?
「小さな時に剣で勝てば能力の伸びが変わるんだよ。今少しステータスが上がって終わりじゃない。そのかわりすぐに抜けるのは無理だろうけど」
「そう。今やっても無駄にはならないのか。じゃあまずは剣の勝負だ」
「ようやく正当な勝負だね。さて生きている間に帰れるとよいね」
 願うと確かに剣が出てきた。戦う前に何度か試す。消して出して消して出して。大きさは変えられるのか?
 小さなナイフ。大きな剣。願えば変わる。小さなナイフを持ったまま大きくなれ。そう願えば剣は大きくなった。まあこれなら大丈夫かな。
「じゃあ、僕の剣が君に当たれば僕の勝ちでよいよね」
「ああ、良いよ。そのかわり僕の剣が先に当たれば、もう一度スタート位置に戻るまでは無効だ」
「OK。1回づつの勝負だね」
 まずは正当に剣の打ち合いをする。相手も僕も習っていないのに出来る。我ながら不思議だ。異世界知識なのだろうが体が自然と動く。そして相手も僕だが同じように体が動いている。実力は拮抗。若干相手側の方が上手い気がする。確かにこのままだと勝負が付かないような。このまま時間が過ぎると死ぬな。
 そろそろ決着をつけよう。
 手に持っている剣を短い小刀に作り変える。
「そんな短い剣で勝つつもりかい。僕はこの形からは変えないよ。負けてあげるつもりは無いからね」
「行くよ」
 僕は気合を入れて小刀を持って突きを放つ。リーチが違う。このまま手を伸ばしても当たらない。ものすごい手前で突き出す。相手は疑問に思うだろう。避ける必要も無い位置で突きをしているのだ。変な顔で見るが次の瞬間には何がおきたのか解らない顔をしている。届かない位置からの突きが終わると相手の体を貫いていた。
 手に持っている剣は相手よりも更に長い剣。突きを出した瞬間に小刀を長い刀に作り変えた。長さ50cmの刀が急に2mになったのだ。それはびっくりするだろう。
「勝ったよ」
「そうみたいだね。びっくりしたよ。まさか剣を作り変えるとは思ってなかったよ」
「ふふ。勝ちは勝ちだろう。戦闘中に長さを変えてはいけないというルールは作ってなかったからね」
「そうだね。とりあえずおめでとう。そしてバイバイ。さっさと帰りな」
 なんとか今回も勝った。だがあのまま戦っていたら現実世界の僕は体力の消耗で死んでいただろう。今回、僕は3日ほど寝ていたらしい。それほど打ち合っている時間は長くないと思っていたけどどうやら結構長い時間倒れていたみたいだ。
 この数年で料理人のエリックとはかなり仲良くなった。毎日料理の手伝いをしているし、僕が偶に思いついたように新しい料理を作る。そして2人でレシピを改良し満足の行くものが出来たら木札にまとめる。
 4歳の冬は秋に収穫した唐辛子味のカプラの実や、胡椒味のサブァの実は食べる分だけを避けて乾燥させ石臼で挽いてから壷にしまった。
 そして春になると種を植えてもらう。
 3歳の春はたたみ数枚分だった農園が4歳の春にはだいぶ広くなったらしい。そろそろここに住んでいる人だけでは育てきれないほどに大きな畑になっているそうだ。
 自分達では食べれないほどに増えるわけだが。どうするつもりだろう。
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