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本編

7.1 クリスとして生きる

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 僕はクリスとして新たな人生を歩む。
 そう考えると前の3代をまたいで一緒に居たアウロスの存在は大きかった。僕が神徒として動いたのは、もしかしたら彼がいたからかもしれない。
 お互いに、依存しあっていたのかもしれない。僕は神徒として、彼は使徒として。
 だがそうして動いた事は、結果的に今の生活にもつながっている。
 母上と父上から聞いた情報を整理すると、元を辿るとアースヴェルギウス王子が広めた農業改革によって、この地の生活は格段に豊かになったそうだ。
 父上が子供の頃は、まだ改革は展開されていなかった。だが、アースアシュリーのおかげでこの地にも改革がもたらされ、近年の食糧事情の改善によって生活が豊かになったそうだ。
 グッジョブ、前世の僕。

 どうやら、同国内を侵略されたが、その後目立った動きがなく、侵攻が停止。
 恐らくは北の地の侵攻が止まっている事が要因の一つだ。
 再び侵攻すると、3国が総戦力を集め戦う事を決めたからだ。
 現状は、子爵領までの侵攻状態のまま平和条約を結び侵攻を止める方向に向かっているらしい。
 ならば、平穏が楽しめそうだ。

 侵略された状態は喜べないが、平和で平穏な生活を送れるのは良き事だ。

 僕は、そんな平穏な情況を知り安心して2歳児と共に遊んでいる。意外にこの子供達が集まる環境が心地よいのだ。
 天使な子供達と触れ合っていると、自分の汚れた心が癒される。特に同じ年齢の女の子、それに一つ上の女の子と遊ぶのが楽しい。
 かつての妹との事を思い出させる。
 そういえば、弟もいたな。だが、ここの男子どもはなんだか汚いのだ。
 鼻水をだらだらと流しながら駆け回っている。女子と比べても元気なのだが、容赦なく暴れまわっている。自分もこんなに汚いのだろうか、どうしても一緒にいる事がなじめない。

 うーん、悪い。一緒に育つのは無理。
 悪いけど、女子と一緒にいるから、君たちは君たちで遊んでくれ。

 そうして、僕は女子の方へと退避し、大人しく過ごしていた。

 子供達の母親が2人ほど来ているが、母上は調子が悪く自分たちの部屋で休んでいる。風邪がうつってはいけないと、母の部屋から追い出され、皆と一緒に過ごしている。
 だが、今日は部屋の中がいつもよりも暗い。照明の魔法が少ないせいだろう。なにげに無意識で無詠唱の照明魔法を使った。
 突然、部屋の中が明るくなった。洗礼式を行っていないのに魔法が発動したのだ。無詠唱だったので僕が発動させたのはばれていない。二人の母親は誰が照明の魔法を使ったのか不思議がっている。お互いに違うと言っている。この場には洗礼式を終えた5歳までの子供がいるので、誰かの魔法が偶然発動したのだろうと言っていた。
 ふう、詮索されずに済んだ。
 今、天井には3つの照明魔法が灯っている。二つは元からあったもの。中央に増えたのが僕の照明魔法で作った物。ただ、元からあった二つよりも大きくて明るい。
 現状で大人よりも効果が高いようだ。
 今までの転生では洗礼式を迎えた時に魔法を使う『かぎが外れた』と言う印象があった。そのかぎが最初から外れていたのか、それとも『かぎが外れる』ような感じが、単にそういう印象を持っただけなのか。
 とにかく、現状で魔法が使える。便利ではあるが、クリスという新しい人生を歩むのにこの特別な力は必要なのだろうか。
 神様から何も聞いていないが、これもプレゼントなのか。
 不思議だ、どういう意図があるのか解らないが洗礼式まではばれないように魔法を使おう。

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