26 / 96
5.8 子爵家の息子として生まれる
しおりを挟む
僕の魔法特訓はかなり順調に進んでいる。
戦略級の攻撃魔法や防御魔法は、父上とほぼ同等、系統によっては僕の方が効果が高いぐらいだ。総魔力量も僕の方が多く、魔法の訓練はほぼ終わりだ。現状、戦略級以上の天災級と呼ばれる魔法があるらしいが、それはこの国には存在しないので勉強できない。
占領された土地からの流出者は去年の秋から冬にかけて大量に発生してしまった。あらかじめ受け入れ態勢は取っていたが、想定以上の人の増加で、食料を持ってくる人がもう少し少なければ足りなくなるところだった。
これほどの人が逃げ出し、逃げ先がこことわかると、問題が起きそうな気がして困っている。だが逃げてくる者達を受け入れないわけにはいかない。
今年が問題だ。入手した情報では不作では無い。昨年よりは実りが多く、例年通りだと。
今年は人の脱出は少ないだろうと考えている。
秋になった。 秋の収穫祭も無事に終わり、こちらの農作物は良く取れた。想定よりも多い収穫に喜んでいた。それに鉄鉱石も順調に鉄にでき、王都へも多くの鉄を送り出せた。余剰もあるので、農具、生活用品を鉄器で作り改善を進めている。
例年通りならばもうじき雪が降り始める。長い冬が始まるのだ。
戦略の常識から考えるとこの時期に戦争は無い。
攻めるのに数日だとしても、雪で帰れなくなる。そうすると食料が足りない。仮設のテントで冬を越すことなどできない。だから戦争は無い。
そんな思い込みをしていた中で、皆は冬越しの準備に勤しんでいた。
伝令が駆け抜ける。
しまった、油断してしまった。敵に裏をかかれた。
どういうつもりか解らないが、1万もの大軍がこちらに向かっている。平時のあちらの戦力が数千と聞いていたが、1万の軍隊をいつ用意したのか。
こちらの兵力は兵士が500人、それに平民の動員数が1千人程度。
相手側がいつも2千人程度の兵力を残していたので、攻める事は不可能だが、防衛だけならギリギリだった。
それが5千となると防衛すら不可能だ。
「どうやら、あれらは我々貴族や兵士を皆殺しにしてここの建物や食料を当てにしているのだろう。そうでなければ冬を越す手段がない。1万の行軍なら到達まで時間がかかるだろう。この街の収容限界がそもそも1万人だ。
相手側はその情報を元に移動していると思われる。
そうなると、戦いを行わない労働の担い手達も殺される可能性がある。だから街全員、皆で退避しよう。街を明け渡すしかない」
伝令を出し、荷車に荷物を詰め込み急いで脱出の用意をする。
街の維持に必要な最小の人を残して、僕らは街を出た。
貴族、および貴族に準じる者達が家族を含めて1000人。平民の住民が9000人
蓄えた食料を全て持ち出すことはできない。水は魔法で賄うことにして、持てるだけの食料を持って休憩もそこそこに移動した。
敵が、先行部隊出していれば追い付かれる。あちらの兵力は1万だ。兵力を5つに分けてもこちらの兵士よりも多い。追いかけるだけの余裕のある兵力があるのだ。
僕らは最後尾で移動し、全員を励ましながら隣の領地を目指した。
隣の領地までは最短で数日。ただあまりに大人数なので、通常の倍ほどの時間がかかる。
出発から4日。もう少しで隣の領地へと入れるはずだった。
だが、その先の丘に広がるおよそ2千の兵士は全て敵兵だった。
経路違いで前に出られた。戻ってもダメ、進む事もできず。
まずい、非常にまずい状況だ。
戦略級の攻撃魔法や防御魔法は、父上とほぼ同等、系統によっては僕の方が効果が高いぐらいだ。総魔力量も僕の方が多く、魔法の訓練はほぼ終わりだ。現状、戦略級以上の天災級と呼ばれる魔法があるらしいが、それはこの国には存在しないので勉強できない。
占領された土地からの流出者は去年の秋から冬にかけて大量に発生してしまった。あらかじめ受け入れ態勢は取っていたが、想定以上の人の増加で、食料を持ってくる人がもう少し少なければ足りなくなるところだった。
これほどの人が逃げ出し、逃げ先がこことわかると、問題が起きそうな気がして困っている。だが逃げてくる者達を受け入れないわけにはいかない。
今年が問題だ。入手した情報では不作では無い。昨年よりは実りが多く、例年通りだと。
今年は人の脱出は少ないだろうと考えている。
秋になった。 秋の収穫祭も無事に終わり、こちらの農作物は良く取れた。想定よりも多い収穫に喜んでいた。それに鉄鉱石も順調に鉄にでき、王都へも多くの鉄を送り出せた。余剰もあるので、農具、生活用品を鉄器で作り改善を進めている。
例年通りならばもうじき雪が降り始める。長い冬が始まるのだ。
戦略の常識から考えるとこの時期に戦争は無い。
攻めるのに数日だとしても、雪で帰れなくなる。そうすると食料が足りない。仮設のテントで冬を越すことなどできない。だから戦争は無い。
そんな思い込みをしていた中で、皆は冬越しの準備に勤しんでいた。
伝令が駆け抜ける。
しまった、油断してしまった。敵に裏をかかれた。
どういうつもりか解らないが、1万もの大軍がこちらに向かっている。平時のあちらの戦力が数千と聞いていたが、1万の軍隊をいつ用意したのか。
こちらの兵力は兵士が500人、それに平民の動員数が1千人程度。
相手側がいつも2千人程度の兵力を残していたので、攻める事は不可能だが、防衛だけならギリギリだった。
それが5千となると防衛すら不可能だ。
「どうやら、あれらは我々貴族や兵士を皆殺しにしてここの建物や食料を当てにしているのだろう。そうでなければ冬を越す手段がない。1万の行軍なら到達まで時間がかかるだろう。この街の収容限界がそもそも1万人だ。
相手側はその情報を元に移動していると思われる。
そうなると、戦いを行わない労働の担い手達も殺される可能性がある。だから街全員、皆で退避しよう。街を明け渡すしかない」
伝令を出し、荷車に荷物を詰め込み急いで脱出の用意をする。
街の維持に必要な最小の人を残して、僕らは街を出た。
貴族、および貴族に準じる者達が家族を含めて1000人。平民の住民が9000人
蓄えた食料を全て持ち出すことはできない。水は魔法で賄うことにして、持てるだけの食料を持って休憩もそこそこに移動した。
敵が、先行部隊出していれば追い付かれる。あちらの兵力は1万だ。兵力を5つに分けてもこちらの兵士よりも多い。追いかけるだけの余裕のある兵力があるのだ。
僕らは最後尾で移動し、全員を励ましながら隣の領地を目指した。
隣の領地までは最短で数日。ただあまりに大人数なので、通常の倍ほどの時間がかかる。
出発から4日。もう少しで隣の領地へと入れるはずだった。
だが、その先の丘に広がるおよそ2千の兵士は全て敵兵だった。
経路違いで前に出られた。戻ってもダメ、進む事もできず。
まずい、非常にまずい状況だ。
11
お気に入りに追加
361
あなたにおすすめの小説
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる