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5.7 子爵家の息子として生まれる

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 僕は順調に育ち9歳になった。
 ここに来れば住む家を準備してくれると言う噂が広まり、徐々に平民が増えている。鉱山で働く者、農業を行う者などだ。たまに兵士希望者もいる。
 移動してくる者はやはり若者たちだ。
 その中に、占領された土地に住んでいた人達がこっそりと入っている。どうやらあの地域を脱出し、こちらに流れてきたらしい。
 彼らは元々同じ神を信仰していたが、占領後に再洗礼を受け別の神を信仰するようになっていた。なので、移住してこの地に住むにはウルカヌス神を崇める為に再度洗礼を行う必要がある。今の所、誰も改宗を拒否する事も無く応じてくれる。
 この地は、「神徒の為に作られた町である」その事は住民皆が知っている。なので、自然と教会に訪れ祈りを捧げる者達が増えている。
 今のこの地は、神の希望に沿っており熱心な信者が増えているのだ。このまま順調にいけば、10年後には反撃ができそうだ。


 最近流れ着いた者達の情報で、占領地区に僕らの噂が広がっている事が解った。最初は元の地で暮せずに逃げ出した人達。その人達が帰ってこないから先は無いのかもしれないが、望みをかけ、同じ道を選ぶ者もいる。
 そうした流れは終わり、今は最初から知って抜け出した人が出始めた。その者達は、豊かであるとまでは聞いていない。だが、生活が出来そうな土地があると聞いて出走してきたらしい。
 こちらに辿りついた者達は、おぼろげに流れている情報以上に豊かな生活に驚いていた。どうやら占領された地域はここよりも少し南とはいえ、農作物の育成状況はあまり変わらない。農業のやり方が改革前と言う事もあり、食料生産が思わしくなく。
 そういう状況が続いている。そんな中で以前よりも多い軍隊を維持しているのだ。生活は苦しい。
 占領した者達がそれ以上に先へ侵攻しない理由の一つは、抱えてしまった住民の世話ですら手一杯。宗教を広め、信徒を増やす事が目的だとしても、これ以上の貧民達を抱える事が出来ない。食料が足りないのだから。

 平民達によると、あの地ではウルカヌス神を信じるよりもスヴァローグ神を信じた方が良い生活ができると言われ、改宗をしたらしい。だが現実には生活は変わらない。確かに収穫量が少し変わった時もあったらしい。だが税は増え、手元に残る食料は逆に少なくなっている。
 現状が我慢できない若者たちは夜中にそっと逃げだしている者がいる。今年は夏の段階で既に秋の収穫量が例年よりも少ない事が解っているようだ。
 税の支払いをすると生きていけない農家もあるから、収穫した食料を持って逃げ出す人が多いだろうとアウロスが予測していた。

 それを聞いたこの地の人々は、かつての同胞達を救おうと言い出し始めている。

 国境沿いの警備は、完璧なわけはなく、どこかに穴がある。その穴を使って農民を逃がそうと言っている。
 だが、農民数名の移動ならばまだしも、軍となれば最小でも10名。隊での移動は目立つ。万一、相手にばれて敵が攻めてくれば今の戦力では防ぐ事すら難しいのだ。残念ながら領地に入ってからの手助け、それ以上は慎んで欲しいとお願いをした。
 残念だが、簡単に人を救うことはできないのだ。
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