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4.3 伯爵家の息子として生まれる
しおりを挟むアウロスの噂を聞いた。彼は中央部にあるカルーシア王国で亡くなった第3王子に忠誠を誓っていたが、第3王子の命で北の国に出かけている最中に主が死亡。悲報を聞くも、主の頼みを成し遂げるまではと5年間北のシュリングル王国に滞在した。同僚のアロイスが農業を、彼は国政に助力した。戦争によって疲弊した彼の国は以前の活気を取り戻しつつあるそうだ。
そして、カルーシア王国に戻った後、アースの兄からの依頼を受け現在この国の王都に使者として滞在しているらしい。
「父上、最近、カウイル圏のサクラニア王国に不穏な動きがあるそうではないですか。母上も荷重な身です。臣下を増やし、体制の強化が必要だと思います。ちょうどアウロス様が来ているとの事。彼を呼び助力をお願いしませんか」
「アウロス様は、王家から声がかかるほどの優秀な方だ。我々への助力は願いたいところだが、彼はカルーシア王国で亡くなった第3王子に忠誠を誓っている。今は、第3王子の指示した事も終わり、第3王子の兄である第2王子から頼まれた事に協力していると聞いている。私の元で働く事は無いだろう。」
「無理ならば無理でも良いのです。手紙を出したいのです」
「ああ、解った。手紙を出すだけならば良いだろう。だが、返事がなくとも恨むでは無いぞ。彼のお方はそれほどの方なのだからな」
「はい」
手紙には彼にだけ解る事を書いた。
『ウルカヌス神の神徒に使える使徒アウロスよ。
神徒である我は復活しせり。我の元へと来るように』
彼が、アースヴェルギウス王子が神徒であり、アウロスをその使徒と呼んだのは二人だけの誓いだ。アウロスは、アースヴェルギウスが転生を繰り返している者だと気が付いていた。そして僕の事を神が遣わした神徒だと呼んだ。そして自分は神徒に使える使徒になる。そういう誓いを交わしたのだ。
だから、この手紙を受け取れば、すぐにここに来るはずなのだけど。
そうして相応の時間が経過した時、訪問者あり。そう、アウロスがやって来たのだ。
「アース、アウロス様がやって来たぞ。今謁見の間に通した。わしではなく、そなたに会いにらしいぞ。どうする」
「行きます」
謁見の間に行くと彼が待っていた。
「アースアシュリー様、おはつに。わたくしはアウロス。お呼びにより、はせ参じました」
「アウロス殿。呼び出しに応じてくれてありがとう。僕からの用事は一つ。これからは僕に仕えて欲しい」
「お受けします。ウルカヌス神の使徒アウロスは、これよりアースアシュリー様の臣下として働きます」
即座に、躊躇なく答えた。アウロスは見た目は30前、中年のおじさんではなく好青年。そんな雰囲気の青年が、強い意志を込めて答えた。
「その、アウロス殿。横から口をはさんで申し訳ないのだが、これの父として聞きたい。
そなたは王家からの声がかかるほどの実力者と聞く。なぜ戸惑いも無くこのような幼子に使えると言えるのだ」
「わたくしがウルカヌス神の使徒となっています。私の主はウルカヌス神が遣わした神徒のみ。そして、アース様がその神徒、わたくしがお仕えするのは当たり前の事です」
なぜ解らないのかなー。そんな感じがする。イケメンって何を言ってもよく似合う。
「では、そなたの言い分としてはアースヴェルギウス王子も、このアースアシュリーもウルカヌス神が遣わした神徒だと言うのか」
「はい、一目見てその存在が確かだと確信しました。彼は神徒です。私が忠誠を誓うべき相手です」
うん、アウロスはやっぱり僕が元王子だってことを確信してるな。
「そうか、そうまで言うならばそうなのだろう。では、アウロス殿。この領地でアースアシュリーの部下として努めて欲しい」
「はい」
こうして、再びアウロスがアースの部下になった。いや言い方を変えると僕がアウロスの主になった、かもしれない。
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