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2.2 転生は続く

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 新しく生まれたところは、二人とも成人済みのようだ。それでもあまり環境は改善していない。家は、以前と同じく隙間風の入りまくる環境だ。
 母は基本的には家にいて、暇を見つけては繕い物をしているようだ。窓が無いので外の景色はわからない。窓が無いわりに、部屋の中は明るい。なにやら良くわからない原理だ。これが魔法だろうか。こんなしょぼい家に住んでいるのに魔法が使えるとは、この世界は貴族しか魔法が使えない世界では無いと言うことか。

 生まれで最初に感じたことは、家の中がとても寒いと言うことだ。
 その寒さから冬では無いかと思った。薪が少ないのだろう、家の中がとてつもなく寒い。外はもっと寒いのだろうが、家の中も暖房を使っていると思えないぐらいに寒い。もっと薪を入れてよ。暖房プリーズと赤ちゃんが騒いでもただオギャー泣くだけだ、無力だ。
 だが、以前よりはましな布団にくるまれ、なんとか死なずに成長した。

 そして、ようやく暖房無しで過ごせるようになった。恐らく春になったのだろう。
 その頃になると、母親も日中働きに行く用になった。
 まあご飯をしっかりと食べて貰わなければ母乳が出ないので、僕は大人しく過ごすと言う協力をした。

 母親が出かけ、大人しく眠っている時、不穏な音がした。目が覚めると目の前に巨大なネズミがいた。
 猫と言っても良いぐらいの大きさだ。いわゆる大ネズミという物だろうか。何を食べてこんなにおおきくなったのか。ふと考えて気が付いた。
 身に危険を感じ、追い払おうと手足を時バタさせるが状況に変化なし。
 気を大きくしたネズミは僕の手足バタバタをよけながらくらいついてきた。
「ギャー」
 大きな声で叫んだ。手をかじられた。
 手から血が噴き出る。途端に血の匂いが充満する。
 かみついたネズミは声に驚いて逃げ出した。だが一安心とはいかない。
 僕が騒ぎ続けても大きな動きが無い。親も来ない状況を確認したのか、再び襲って来た。さらに状況は悪い方向へ。血の匂いにつられてか、新たなネズミも見える。
 そしてネズミたちが食いついてきた。
 痛かった。
 ものすごく痛かった。
 幸いなのは途中からはアドレナリンが出たおかげなのか痛みを感じなくなったことだろう。意識はすぐに消え、そのまま死んだ。

・・・

「神様、さすがにこれは酷いと思う。
まったく笑えないよ。
生きながらネズミに食べられるって、どんな仕打ちですか」
「いやー、ごめんごめん。
でも、途中で痛みを感じなくはしてあげたろ」
「神様、下界の様子は見れないと言ってませんでしたか」
「うん、君の周りは見えるんだ。それ以外はあんまり見えない。
ぼやっとした状況しかわからないんだ。
君が生まれて初めて周りの環境が解る感じ」
「ふーん、まあ信じましょう」

「じゃあ、次ね。さあ頑張っていこうか」
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