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2.1 転生は続く

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  一安心。そう思っていたのに。
 生後半年の事だった。
 まだ言葉がよくわからないから何が起きているか把握しきれなかった。だが、父親と母親が喧嘩し、母が殴られた。
 母は、朝になっても起きて来ない。
 父親は出て行ったまま帰ってこない。
 僕は、そのまま放置されている。
 床をはいずって母親の隣に行った。触って声をかけても身動き一つしない。
 どうやら殺されたみたいだ。
 扉に向かって這う。扉を叩いてみたが何の反応も無い。泣いても誰も来ない。数日が経つが状況は変わらない。
 僕は最後の力で母親の隣にもどり、そこでそのまま死んだ。

「おい、神様。
これって神様の趣味?
流石に笑えないんだけど。
もう少し仲の良い夫婦を選べないのかな」
「いやー、その通り。
結婚する前から険悪だったけど、まさか妻を殺すとは思わなかったよ。
ほんと。
次は夫婦仲の良いところにするからさ。
ポジティブに行こうよ、ポジティブに。
じゃあ、めげずに次、行ってみようか」

・・・
 うん、仲の良い夫婦だ。貧乏そうだけど。
 それにしても二人とも若いな。
 二人とも成人しているのか?
・・・
 しかし寒い。隙間風が入り込む壁、汚い床。
 そしてボロボロの布団。
 いや、布団と言えるのだろうか。ただの布だ。

 それでも母親にしっかりと抱かれ、父親と一緒に狭い中で抱き合い何とか過ごした。
 二人のしゃべる言葉は全くわからないが、愛されているようだ。
・・・
 先に苦しみだしたのは父親だった。そしてすぐに母親も。
 うう、苦しい。熱い。
 すぐに、僕も苦しくなった。
・・・
 両親の動きが少ない。僕はさっきからとても寒くなった。
 寒い、寒い。
 だめだ。
・・・

「流行り病かな。
しょうがないよね。
じゃあ、めげずに次、行ってみようか」
「いや、待ってよ。
あのあと、二人はどうなったの」
「あー二人はさっき死んだよ。
僕の自由にできる魂じゃないから生き返らせることはできないけど」
「そう、それとあんな環境じゃあ、赤ちゃんは育たないでしょ。
ほんとにあんな環境ばかりなの」
「うーん、どうだろう。
最近、他の神からの影響で下界の事はあんまり解らないんだよね。
とりあえず、体を健康にしてあげるよ。
じゃあ行こうか」
「いやいや、僕だけ健康でも前と同じ状況じゃあだめでしょ。
親も死んだんでしょ」
「うーん、解ったよ。
とりあえずもう少し年上の両親でしっかりした家族を選んでみるよ。
じゃあ、めげずに次、行ってみようか」


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