上 下
414 / 532
第5章 シドニア訪問編

5.10.8 シドニア学園攻防戦

しおりを挟む
「解呪が終わりました。ジルベール様はエリン様の前に」
 僕はコハクに言われたことに少し疑問を感じつつ、エリンに近づき前にたった。
 僕の移動を確認してコハクがエリンの腕から腕輪を外した。すると、その直後にエリンの力が抜けて僕の方に倒れてきた。僕は、慌てて彼女を支える。
「ジルベール様、エリン様をお願いします。わたくしは周りを見て来ます」
「え、コハク。エリンは大丈夫なの?」
 鑑定で調べた結果は、単なる睡眠状態で他に異常は見られなかった。その結果が少し信じられず、コハクにも聞いてみる。
「はい、呪いの影響を少し受けているので精神的に疲れています。この腕輪によって強制的に精霊達を集めたことによる影響は体力と魔力の消耗です。稼働時間から一晩も眠れば大丈夫でしょう」
「そう。エイミー、コハクの護衛を頼む」
 僕は倒れたエリンをお姫様抱っこで抱き、近く降ろせそうなところを探す。そして適度に平らな所を見つけ、いったんそこに降ろした。
 もう少しこの事件の事情が知りたくて、知って居そうな人を探すが、立っているのはルビースカリナ様ぐらいだ。
「ルビースカリナ様、トルステン様は剣を手に持ったまま倒れていましたが理由をご存じですか。確か彼は魔法が主で剣は使えるレベルでは無かった。それに性格的にも剣で戦いを挑むように思えないのですが」
「トルステン? どの男のことだ」
 予想外だ。公爵家の嫡男ぐらいは知ってるよね。僕のことは覚えていたのだから。
「え。…… えっと、そこの男子ですよ」
 少し離れたところで床に座って休憩しているトルステン様を指さした。
「ああ、あれか。うむ。あれが最初に魔力を暴走するなら魔力を放出してしまえば良いと言ったのだ。そして魔力を放出後に剣を持って戦いを挑んだ。最初にわたくしを助けようとした男だ。確か。……多分、そうだと思う。それよりも、皆が回復してきたようだな。わたくしもあの者達に礼を言わねばならん」
 意外だ、自分を助けるのは当たり前と言うかと思ったけど。意外なことにルビースカリナ様は精霊魔法によって回復し意識を取り戻した人達一人一人に声をかけ始めた。

 ルビースカリナ様が離れたので、エリンの隣に立った。

 ステパンに殆ど魔力が残ってなかった理由はトルステン様の捨て身の攻撃による影響だったようだ。こんな戦い方は僕には無理だな。僕の魔力を短時間で一気に使い切るのは無理だ。
 あまり情報があつまらなかったが、自分なりに整理してみる。
 この世界には竜を封印するための神具がある。僕の知らない過去に作られた物だ。それも想定を上回る効果のあった。コハクが知らなければ対処にも困っただろう。
 この神具は普通の魔道具による魔法禁止と効果も違った。
 例えばラルクバッハの王城にあるような魔力低減は高度な魔力操作ができれば普段の倍以上の魔力を消費することで魔法は発動する。
 また手錠のような魔法を禁止する道具でも爆発的な魔力をぶつけることで魔法の発動できる。
 だが、今回のこれは魔力が多いほど危険なのだ。
 竜の対策と言っていたが、ティアマトのように僕よりもさらに高い魔力を持っていれば危険なのは間違いない。
 今までの魔法禁止の魔道具は、僕や竜にとってはあまり脅威では無かったが、今回の神具は竜だけでなく僕にとって相性が悪い。

 さっきストレージにしまったが、詳しく調べて対抗できる方法があるのか調べた方がよさそうだ。ティアマトかバハムートに聞いた方が良いかもしれない。
 僕はトルステン様のような方法はとれないのだ。
 今現在の僕の持つ膨大な魔力は、短時間で簡単には放出できない。聖獣を3体、最大級で呼びだせば空になるが、その場合は聖獣が危険になるし虎鉄はまだ呼び出せない。
 それ以外だと、短時間で魔力を減らすことができるのは神格化だ。

 あれ、もしかして神格化すれば、そもそも神具の影響を受けないのではないか。あれは神の力を使える状態。神具と言っても神と同じ状態である神格化の方が優勢ではないか?
 竜を封印するための神具と言ったが、もしかして神格化できるバハムートには効かないのではないか。
 やっぱり後で、ティアマトに聞いておこう。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

実は私が国を守っていたと知ってましたか? 知らない? それなら終わりです

サイコちゃん
恋愛
ノアは平民のため、地位の高い聖女候補達にいじめられていた。しかしノアは自分自身が聖女であることをすでに知っており、この国の運命は彼女の手に握られていた。ある時、ノアは聖女候補達が王子と関係を持っている場面を見てしまい、悲惨な暴行を受けそうになる。しかもその場にいた王子は見て見ぬ振りをした。その瞬間、ノアは国を捨てる決断をする――

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

今日も聖女は拳をふるう

こう7
ファンタジー
この世界オーロラルでは、12歳になると各国の各町にある教会で洗礼式が行われる。 その際、神様から聖女の称号を承ると、どんな傷も病気もあっという間に直す回復魔法を習得出来る。 そんな称号を手に入れたのは、小さな小さな村に住んでいる1人の女の子だった。 女の子はふと思う、「どんだけ怪我しても治るなら、いくらでも強い敵に突貫出来る!」。 これは、男勝りの脳筋少女アリスの物語。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

処理中です...