旧転生者はめぐりあう

佐藤醤油

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5部 10歳後半

5.17 婚約破棄? どうしてそうなった

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夕食前に、久しぶりにスザンヌとマリアと個別面会。
コテツの捜索に行ってから暫くしっかりと時間をとれてませんでしたから。

スザンヌが「今日の格好は、いつもと違って更にかっこいいですね」と
「なんか変えましたか?」とマリアが聞いてきた。

「エリンと言うシドニアの侍女が選んで着せてくれました。
髪のセットなども少し変わってます」と説明した。
そして「彼女を領地に誘ったら、来てくれるの事になったから、これからおしゃれになりますよ」

と言うと、スザンヌが怪訝な顔をする。

あれ?

ちょっと補足説明しとこう。
「かっこよくしてくれるから、スザンヌとマリアが喜んでくれるかなと思って誘ったんですよ。
どのみち侍女は必要なので、そういった人の方が良いでしょ」と言うと、

スザンヌが
「いえ、ジルベール様が選んだ方に文句を言うことはありません。
それも私達が喜ぶためなんて、嬉しいです。
シドニアから連れてきたら、紹介してくださいね」
淡々と語るスー。

「ええ、もちろん」と、とりあえず答えておこう。

「それは、王妃にも伝えても良いでしょうか?」とスー。
「ええ、なにか問題でも」
「1妃様の国からですから、少なくとも1妃様には伝えないと。
それにお母様がずっとジルベール様のおめがねにかなう専属侍女を探していたので、
探す必要が無くなった事を伝えないと」
未だ淡々と説明するスー。

え、やっぱり怒ってる?

「ああ、そういえば、探してましたね。
フィリップ王子の専属侍女と一緒に教育したいけど、ジルさまが良いなと言わないから、どうしようと言ってましたね」
とマリアはいつもの感じで、特に変わらずにこにこしてる。

「え、そんな事を。
ところで、今さらだけど専属侍女って何の事?
ただ、服をコーディネイトして貰おうと思って誘っただけなんですけど」
と、私がおろおろと返事をする。

「え、やっぱり。ジルさま、それはちょっとまずくないですか?」とスー。
ああ、失敗してるねという顔だ。

「まずいの?」

「他国の王城から引き抜いたのでしょ。
しかも直接お声かけしてますから、あちらはジルベール様専属侍女としての身請だと思ってますよ。
それは、侍女としての地位で言うと、最高級の地位への大抜擢ですよ」
とスーが驚いた顔で説明する。

「それで、普通の侍女と一緒だと、やばい?」

「だって、私達が公爵夫人になった場合、その次が主の専属侍女ですよ。
侍女長も専属侍女の下です。唯一、主指定の執事長が対等な立場でしょうか。
あちらもそう考えて受けてるだろうし、シドニアの王妃様もそう考えていると思います」

「そんなの全然考えて無かったよ。
スーやマリアが喜ぶかなと思っただけなのに」

「うーん、やっぱりそういうことまで考えてなかったのですね。
聞いたときに、ちょっと不安に思いましたよ。
急にジルさまがお母様の思い通りに、それも自ら積極的に動くなんておかしいと思ったんですよね。
とりあえず、ジルさまの考えは内緒にしましょう」スーが。

「さすがお姉様、そこまで考えていたのですね。
そうですね。この話は、私達だけの秘密ですね。
思い違いがあったにせよ、その方が専属侍女で決まりですね。
私は、ジルベール様がお選びになった方なら、大歓迎ですよ。
ああ、どんな人でしょう。
優しい、お姉さまなら良いな」
とマリアは嬉しそうに。

「うん、安易な考えだったのは封印します。
スー、マリアありがとう。
もう誘ってしまったから後には引けないし。
彼女なら、このまま専属侍女にしても問題ないと思うし。
今日は時間が無いので、とりあえず王妃様には今週中に私から言います。
聞かれるまでは黙っていてください。
お願いします。
まずは今日、領地に戻ってお母様に言わないと」

「「はーい」」
スーは、私の考えが読めるのかな?

「お話は変わりますけど、シドニアからの手紙に、ジルさまを王にしたいからシドニアの王女の中から一人婚約者に選べないかと書いてあったそうですよ。
でもお父様が、ジルさまをあちらに送ると、私とマリアが他国に着いて行かないといけないので、断ったと言ってました。
かわりに、フィリップを出しても良いと返事したそうでけど。
まあ、フィリップが気に入る王女がいればですけど」

「それは、また、王様らしい回答ですね。
でも、その断り方だと、スーやマリアと婚約してなければ、私はシドニア送りだったと言うことですね。
二人に感謝です。
フィリップ王子には悪いけど」

「ああでも、フィリップも、この国にいれば王にはなれませんから、行くのは良い事だと思いますけど」とスーが。

「そうですね、シドニアの4人の王女はスーやマリアと比べると劣る感はありますが。
一般的なレベルで見れば、美少女の部類ですしね」

「ジルさま、気に入った子がいました?」
とマリアが聞いてきた。

シドニアの王女は、リアン13歳、クラリス12歳、イリアーナ10歳、コラン8歳の4人。

「リアン様はスザンヌ姉さまと同じ年、一番下のコラン様は、私と一つ違い。皆様可愛いですよね」とマリアが続ける。

「いや、私にはスーとマリアがいますから、浮気はしませんよ」

「でも、侍女を入れるでしょ?」とスーが。
「いや、さっき説明したとおり。でもごめんなさい」
とりあえず、謝る。

マリアがくすくす笑っていた。
さて、そんな話をしていると夕食の時間になった。

今日の夕食は、サフィーナ様も参加している。
コハクは別室で待機中。
結局、サフィーナ様のところで落ち着いたようだ。

侍女兼護衛。
と言っても、さっき会った時は襟巻きになっていてびっくりした。
変身出来るらしい。

サフィーナ様は、
「寒い季節には、おしゃれだし、暖かいし、気持ち良いの」と
なんとまあ、便利な。

普段は、狐耳付き侍女の姿で歩き回り、状況に応じて変身する。
今日は、侍女の待機室で、襟巻きから、小型の銀狐になって眠ってまっているそうです。

ところで夕食の時ですが、どうもサフィーナ様とルカ王子がギクシャクしている感じがする。
今は、サフィーナ様が話しかけて、ボーとしているのか反応が薄い。
スザンヌに何かあったのか聞いたが、知らないと。

しかし、その奇妙な感覚を見て、ルカ王子に何か言い忘れていたような。
ぱっと思い出せないなー。

食事の後に、こっそり1妃様に聞いたら
「あの事件で自信をなくしているのよ。
サフィーナを危ない目に合わせたのが許せないらしくて」
とのこと。

ふーん、許せないねー。
でも、ルカ王子が悪い訳では無いでしょ?
何か、理由が別か?

「さらに、婚約を破棄しよう」と言ってるの。
うん? 婚約破棄。
男性側から婚約破棄をするケースに、相手の女性が不義を働いた場合があったな。

まてよ、不義?

あ、思い出した。
もしかして、ルカ王子、サフィーナ様がやられちゃったと思ってないか?
ルカ王子にこの後で個別に話をさせて欲しいと申し込むと、王も入れて話がしたいとルカ王子の方から言ってきた。

食事の後に、王の私室に移動して王とルカ王子、私で話を始めた。

まず、サフィーナ様の状況について説明。
聖獣の白虎王コテツの召還に成功した時、アロノニア様が直接手は貸さないが、私を送り込むぐらいは手伝ってやろうと言って、有無を言わさず転移させたからあの場にいたこと。

そして、アロノニア様に誓って、サフィーナ様は不義の前に助けていること。

しかし裸の男に襲われる寸前で、しかも3人もの男に羽交い絞めにされ、恐怖の記憶があったはずなので、侍女含め忘却の魔法を使って直前10分間の記憶を消しました。

もし、ルカ王子の思いと、彼女の証言に食い違いがあったとしてもそれは記憶消去のせいで、嘘を言っている訳ではないから婚約破棄などするべきでは無いと説明しました。

王子、どうか思いとどまってね。

王様が、すごくびっくりしている。
え、今の話で、何か言っちゃった?

【後書き】
さて、王子の婚約破棄物語では無かったですね。
ところで、ジルベールは何を言ってしまったのでしょうか?
1.裸の男がのところ
2.ジルベールの口が達者すぎる
3.その他 
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