凌辱夫を溺愛ルートに導く方法

riiko

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外伝~凌辱と溺愛の分岐点~

2 始まりのとき ※ 

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 僕の結婚は陛下がお決めになった。

 だから逆らうことなどできずに、ひとり馴染んだ王都を離れてこの辺境の地までやってきた。第一王子から、辺境伯は怖い人ですぐに暴力をふるう男だと聞いた。

 今まで何人もの女性が泣かされてきたと。

 辺境伯は煩い人間を嫌うので、リリアンは何も話さずにそこにいるだけなら、暴力を振るわれないよと殿下に言われた。だから初めての挨拶の時、僕は黙ってしまった。本当は挨拶くらいしたかったけれど、あまりに大きな男性で威圧感が凄すぎて緊張して声が出なかった。

 そうしたらとても低くて怖い声で挨拶されただけだった。

 その声に大げさに体がびくっとなり、僕の印象はとても悪かったかもしれない。あの時の挨拶を間違えなければ、もっと普通にお話ができたかもしれない。今となっては分からないけれど……初めからお前の態度は酷かったと言われたから、第一印象の時点で僕に悪いところがあったのだろう。

 その後、医者による体のチェックがあると言われて、言われるままに裸になったら、お尻に指を入れられた。男性同士の結婚はここを使うから広げておく必要がある。だから耐えろと医者は言うけれど、僕は初めての痛みに耐えられずにずっと泣いていた。

 傷がつかないようにと、なぜか孔に舌を入れて医者が舐めてきた。

 気持ち悪くて仕方なかったけれど、それが必要だと言われて耐えるしかなかった。僕は何も知らない公爵令息で、結婚をする前の儀式だと言われたら従うしかない。それでも悲しくて恥ずかしくて気持ち悪くてずっと泣いていた。

 しばらくすると、粘着力のある水を後ろの孔に指で入れられた。それを塗られると痒くなって、もっと擦ってもらわないと痒みでどうにかなりそうだった。そこで指で慣らされた後、卑猥な男性器のような形のモノを孔に入れられる。

「いやぁぁぁ――――」

 痛いのに気持ちいい、でも痒い。泣いて叫んでいた。

「ふふ、可愛らしい。性に疎いから仕方ないですね。ヒクヒクとしているリリアン様のココは愛らしい。きっと辺境伯も気に入ってくださるでしょう」
「や、やだっ、やめてくださいっ。いやあ、あっ痛い、痛い、もう抜いてぇ!」

 初夜前に疑似体験をしておけば、あの屈強な男のモノがすんなり挿入できてすぐに夜は終わる。そう言われて、僕は我慢してそれを受け入れた。痒くて痛くてムズムズして苦しくて、とにかく辛いしかなかった。

「痒い、ああ、いやぁ、痛いっ」
「リリアン様。痒いなら私が触ってあげますからね」

 そう言うと先ほどまで入っていた男性器のようなモノは抜かれて、医者は指でまた責めてきた。

「あ、ああ! そこ、だめっ」
「ああ、ここですね。リリアン様の痒いところは、ほら、手なら繊細に触れる」
「あ、やだっ、やだっ、もう嫌だァ! 許してくださいっ、ひっく、ひっ」

 僕があまりに泣くと、医者は感度を上げればすぐに痛くなくなると言い、僕の小さくなっていた男根を口に入れてじゅぼじゅぼと出し入れしていた。気持ちが悪くてたまらなかったけれど、僕は疲れから抵抗をする力がなかった。

 医者は僕の男根を美味しそうにしゃぶっていたが、それを泣きながら耐えた。

 前を医者に舐められて、後ろはまたも大きくて固い男根の無機質なモノが挿入されている。どうして、僕はどうしてこんなことになっているの? 悲しいし、苦しいし、気持ち悪い。早くこの時間が終わってと思っていた。

 しばらくすると医者は満足したのか、解放してくれた。その時には僕の心はどこか遠くへ行っていた。疼くお尻、悲しみを超えた心。人からこんな侮辱的な行為をされたのは初めてで、この後は放心状態のまま部屋でずっと泣いていた。辺境伯からの食事の誘いを断り、翌日の結婚式では泣きはらした顔と痛むお尻のまま出席した。

 宰相として忙しい父がこの日だけ都合をつけて王都から駆けつけてくれたが、どうしても大きな案件を抱えていてすぐに王都へ戻らなければならない父に泣いて縋った。

 父は辛そうな顔をするも、王命を廃止できるように精一杯頼んでみるから少しだけ耐えなさいと言って、王都へ帰っていた。


 ――その日の夜は、一生忘れない。


 旦那様となったオスニアン辺境伯は初めから怒っていて、僕を無茶苦茶に凌辱した。言葉の暴力と性的な暴力、医者にいたぶられた腫れたお尻を見て、淫乱だと罵られた。僕は何も言えず、医者よりも酷い行為に耐えた。

 終わらない初夜。

 医者は、初夜は一度ですぐに終わると言ったのに、終わることはなかった。翌日の昼まで、何度も気絶しては起こされて無理やりお尻に大きな旦那様の男根を挿入された。僕は泣き叫んでずっと抵抗していたけれど最後は力尽きて、されるままになっていた。お尻はさらに腫れて血も出ていた。

 侍従が手当てに来てくれたけれど、僕は泣きながら何を言われていても、聞こえなかった。きっと慰めてくれていたかもしれない。僕の心はもう何も受け入れられなかった。その夜から熱がでて数日寝込んだ。でも熱が引くとまた旦那様は僕を抱きにきた。それが何度も続いたある日、自分の能力である治癒の魔法をお尻にかけてみたら、お尻の痛みが治まった。それからは閨が終わった翌朝、旦那様が出ていったのを確かめてからこっそりその魔法をお尻に施していた。

 朝起きると毎日お腹を壊していた。それを見た侍従のリックは精液がお腹に残るとお腹を壊すから、こうやって自分で指を入れて掻き出すんだと教えてくれた。僕はそれを習って、目が覚めると治癒の魔法とお尻の洗浄を行うようになった。この部屋には夜に旦那様が僕を抱きにくる以外、掃除や給仕にくるのはリックという僕の一つ上の男の子だけだった。いつの間にかリックだけが僕の話し相手として心の支えになってくれた。

 僕の姉のような存在の公爵家からついてきてくれた侍女のジュリは、ここに来たその日のうちに公爵家に帰されてしまった。辺境伯にも侍従はいるから必要ないと言われたらそれに逆らえず、ジュリと涙ながらにお別れをした。ジュリは元気にしているかな?

 僕はいったい、いつまでこんなことをするのだろう。

 妻というものはこの行為をするだけに存在するものなのだろうか? 初めて嫁いだ身としては全く分からなかった。でも母を見ていても、父とそんな関係のようには見えない。兄も、義姉とそんな夜を過ごしているように見えない。だって父も母も、兄も義姉も、僕の前でいつも楽しそうに笑っているし、仲良くしていらっしゃる。なにより家の外にも出かけている。

 僕はこの家、ううん、部屋からも出してもらったことがない。それに誰かの前で旦那様が僕に笑いかけたことも無い。閨では笑っているけれど、楽しいというよりもゆがんだ笑顔に見える。だからこの生活が普通の夫夫ふうふではないと分かる。

 どうして、僕だけこんな生活なの? なにがいけなかったの。誰か、教えて……

 なぜだか王命でこの人に嫁いだ。王国を守った英雄の辺境伯に。嫁ぐ前に僕は一度第一王子に呼ばれたその時にガリアードオスニアンは凶悪な人間で、女子供相手でも容赦なく凌辱する人だと教えられた。巷では英雄と言われるが、実際は性癖の歪んだ恐ろしい男だと聞いた。王子が言うなら間違いないのだろうけど、僕にこの結婚を断る権利はない。

 そしてその時、殿下から手鏡をいただいた。この魔道具は邪な気を浄化してくれる特別なものだと。大事に寝室に置いて、いつでも見るようにと言われた。そうすれば鏡の魔法でリリアンをいつまでも美しく守ってくれるお守りだと。

 そんなことに縋るくらいには、本当に酷い夫だった。いつも泣かされた。体への暴力、とくに夜の営みが鬼畜だった。

 終わらない行為、朝日が昇っても、それでもずっと僕の中に居座る旦那様の男根。意識が戻るとまた始まり泣き叫ぶ。それでもやめてくれないから、最近は泣くことさえも忘れてしまった。次第に旦那様が望むように動くことを覚えていった。そうすることで、少しだけ暴力は減った。

 感情もどこかに置いてこられたらいいのに……まだ僕は夢を見る。いつか愛される夢を。

 それでもいつも、それは儚く散る。
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