凌辱夫を溺愛ルートに導く方法

riiko

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51 ガリアード・オスニアン辺境伯2 ~ガリアード視点~

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 結婚が決まるも、私は辺境伯領での仕事も立て込み王都へ行く時間が取れなかった。

 しかし、あの花のような人が我が屋敷にくるのは楽しみで仕方なかった。本来ならデートでもして恋人時代も楽しみたいところだが、貴族の結婚とはそんな流れを必要としないのが寂しい。

 幼い頃から婚約者として過ごしていたなら違っただろうが、王命だ。多くは望めないので、結婚してから楽しめばいいそう思っていた。

 リリアンを迎える準備を屋敷中で使用人達がしていた。皆“王国の花”と呼ばれる、麗しの令息が嫁にくるのを楽しみにしていた。

 そんな中、私の護衛騎士ヤンの妻リックが部屋に訪ねてきた。

「どうした? リック」
「ガリアード様は、男性との経験ありますか? たしかいつも対象は女性でしたよね?」
「ああ、そうだな。男を抱いたことはない」

 それなのに、リリアンを一目見た時に男とか女とかそういう次元はもう関係なかった。

「でしたよね、旦那からガリアード様に男同士のやり方を伝授するように言われてきました!」
「それはありがたいが……リックが私に指導を? ヤンがそれを許したのか?」

 そんなわけがない。こいつの旦那のヤンは妻命で嫉妬深い男だった。まず男と二人きりになどするだけでも許さないようなやつだった。この屋敷で幼い頃から働いているリックは恋多き男で結婚前はかなりやんちゃだったし、最近は私の友である第二王子のサリファスと割と本気で付き合っていた。

 二人の愛は、あっけなく終わりの時を迎えた……。それは仕方がないことだった。サリファスはリックとは絶対に結婚できないのだから。

 なぜならあいつは腐っても王子だからだ。リックのような貴族でもない男を嫁にできるわけがない。仮にリックを嫁にするなら妾にならいいだろうが、リックみたいな奔放な男には王宮という窮屈な場所は無理だろう。サリファスに本気で相談された時は、なんて言っていいか分からなかった。

 リックは自分をちゃんとわかっていて、リックもサリファスを本気で思うからこそ、王子との関係は早く終わらせなければと思っていたみたいで、二人の恋愛を見ているのは微笑ましい反面、少し辛かった。お互いがお互いを想っている。それなのに結ばれない身分。

 サリファスも第一王子である兄がもっとまともな人間だったら、王子としての身分を捨ててリックを選び共に生きる選択をしたかもしれないが、第一王子に国を任せたら国民が困るのが目に見えて分かっていたから、王子としての責任として自分が王太子になって、国を導くという尊い志を持っていた。

 それで愛するリックとの関係は遊びという風にリックと世間を騙した。

 本気の相手だと他の人間にバレると、リックはサリファスの弱点として狙われかねない、そう思って辺境伯の屋敷には第二王子の遊び人がたくさんいる、そういう流れにして、友人である私に会うついでに愛人と遊ぶ、気が抜ける場所として気に入っているくらいに周りには思わせていた。

 リックも本当はサリファスの本気をわかっていたと思う。

 ただお互いを思って遊びだと言いはっていた。見ていて本当に辛い関係だった。そんな中、戦の場で知り合った貴族の出であるヤンが私のことを慕って、辺境で騎士として鍛えてほしいと我が領土にきた。そこでリックが辛い恋をしている現状を見ているうちに、リックに惚れてしまった。ヤンは身分を捨ててリックを嫁にする決意のもと猛アタックをしてリックをサリファスから奪った。

 最初こそ、サリファスの未来を思ってリックは別れを選びヤンを利用していただけのように見えたが、ヤンの努力の末、リックはいつの間にかヤンを愛し二人は結婚した。サリファスも失恋の痛手の最中に出会った女性に、運命を感じて結婚まで約束する程になった。そしてその女性は貴族の身分も持っていた。結果お互いを想って別れたことが報われた。

 こんな恋もあるのだなと思って見ていたが、私はそんな燃えるような恋など一生しないだろうと思っていた。結婚は貴族にとって必要なこと。妻が家を切り盛りして夫は外で働く。そのために必要な処置だと思っていたが、私は思いの外、リリアンを娶るのを楽しみにしていた。

 今思えば、きっと一目惚れだった。

「ガリアード様? 聞いてますか? 旦那はガリアード様なら問題ないって言ってたし、男を抱くのはいろいろと知識がないと大変なんですよ。ヤンは男を知らなかったけど、俺が詳しかったから誘導できました。きっと“王国の花”は清いでしょ? お互い知識がないままだとほんと悲惨なんで、ヤンは自分の経験からもガリアード様に失敗してほしくないって言うから、しょうがなく経験豊富な俺が来ました!」
「そ、そうか。確かに箱入り令息に辛い思いをさせるわけにはいかないな。頼むリック」

 そうしてリックから基本的なことを学んだ。もちろん座学だけだ、実演などしていないし、見てもないし触ってもいない。

 そんな嫁を迎える準備中に、王家から数人が派遣された。

 王命による結婚なので、すべてが不足なくおこなわれるのを確認する必要があると言われた。その中には王家から派遣された医師がいた、その男がリリアンの診察を、リリアンが到着した日におこなうという。貴族には必要なことがある、それは清いからだかどうかの確認と、初夜後の確認。通常なら屋敷のお抱え医師が診察をするが、これは国王が決めた結婚なので王家の指示のもとおこなう必要があった。

「辺境伯様、この度は私が第一王子から任命されて、奥様になられるワインバーグ公爵令息の診察をおこなうことになりました」
「第一王子? 陛下ではなく?」
「はい。ワインバーグ公爵令息のことは、第一王子がくれぐれも頼むと直々に申されておりましたので……」
「それはどういう意味だ? 私の妻になる人は第一王子と親しいのか?」

 医者は言葉を濁そうとした。私はサリファスから第一王子がリリアンに懸想していると聞いていたから、気になって仕方なかった。

「その……私は詳しくはわかりませんが、二人は密かに想い合っていて恋仲という噂が王宮内ではありました。第一王子もワインバーグ公爵令息も、一緒になるにはあまりに身分が高すぎ諦めたとか。それで第一王子は愛する人がせめて辛くないようにと私に初夜後の確認とサポートも直々に頼まれたのです」
「な、なんだって……第一王子は、愛する人と言ったのか?」

 この医者は何を暴露するんだ。そんなこと嫁ぐ前の夫になる男に言うなんて。

「でも大丈夫です。ちゃんと処女確認は正当に診察しますので、せめて結婚前にそれだけは真実を見極めて貴方様にお伝えさせていただきます」
「それは、嫁にくるリリアンはすでに第一王子と関係があったとでも言いたいのか? 王命による結婚で、しかも相手は公爵家の人間だぞ、滅多なことを言うとお前の立場も危ういとわかっているのか?」
「私は医者としての職務を全うするためだけにここに来ました。たとえ王命が汚れたものになろうとも真実を言うことをお約束いたします」

 なんだか頭が痛くなってきた。

 あのような可憐な人が、まさかもう手垢がついている? たしかに式典にくるという噂があったのに、リリアンは来なかった。それは私への褒美になることを拒んだから? 第一王子が出席する場所で、他の男への結婚を受け入れることが出来なかったから? だからあの場には父親しかいなかっただろうか。まさか結婚前にこんな裏切りにあうなど、思ってもいなかった。

 不信感が募る中、リリアンを迎えた。

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