凌辱夫を溺愛ルートに導く方法

riiko

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22 第二王子

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「よう! ガリアード……、とワインバーグ公爵令息」

 応接室へ行くと、そこにはイケメンがいた。正統派イケメン、細身で脱いだら筋肉あります的な感じ、普段は王族に見えないように着古したシャツを着ている……ここアニメ調べ。もちろん今日も友人の家にふらりと来る感じで、俺正装しなくてもかっこいいんだぜ、みたいな白シャツを着ているけどそれが最高に似合う男。たちまち王宮で王子様ファッションしたら、整ったイケメン。

 でも俺の好みはダンゼン、ガタイのイイ、ガリアード! 筋肉モリ男は男の憧れ。

「殿下、リリアンはもう私の嫁で、オスニアン辺境伯夫人です」

 そうだよ! 俺のこと、とってつけたみたいな言い方しやがって。俺はもう立派なこの屋敷の夫人だからな! ガリアードが俺を見て微笑む。この部屋に入る時から手を繋いでいたから、その手を俺もぎゅってした。

「へぇ、そうか。それはおめでたいな」

 第二王子は不穏な笑顔を見せる。なんかリリアン、最初から嫌われていないか? 公爵家の出だから何度か貴族のパーティーには参加しているが、第二王子と正式に会うのは初めてだった。だいたいこの人、公の場に滅多に表れない。本当に大事な行事にしか来ない謎の第二王子。

 アニメ情報からすると、街で遊んだり恋をしたりで忙しい人。でも仕事もしっかりしていて、第一王子の酷い政策の後始末をしたり、政治を立て直す仲間づくりをしていたり、影で王国を支えていた。しかし今のリリアンはそんなことを知らないので、そんな初対面に近いリリアンからしたら、この王子の態度は相当悪いと思う。

 一瞬で、自分が疎まれていると悟れるくらいには、親友の妻に対する態度ではなかった。そっちがその気なら、こちらだってただやられるわけにはいかない。

「殿下はじめまして、ワインバーグ公爵家から嫁いでまいりましたリリアンと申します。今後はオスニアン辺境伯夫人として、精一杯、夫であるガリアード様を支えていきたいと思っております、よろしくお願いいたします」
「ああ、俺は第二王子のサリファスだ。こいつとは幼い頃からの腐れ縁でな、俺の大事な友だ、もしガリアードを裏切る奴がいたら、俺はそいつをどうするか、わからない」
「……」

 牽制された。その圧に驚いて、思わずガリアードにくっついた。もしや、俺の死亡フラグはこいつ次第なのか? とりあえず夫をたてる可愛い妻を演じるしかない。

「リリアン? 大丈夫だ、殿下はだいたい初めて会った人にこうやって、無駄に威圧するだけだ。殿下、私の大事な人に失礼な態度はおやめください」
「無駄に威圧って酷いな。俺は意味のあることしかしないぞ? ガリアードは相変わらず固い! 悪かったリリアン」
「い、いえ」

 全然悪かったなんて思っていないその態度。確かにアニメでは第二王子は、第一王子ほど王子王子していなくて、第一王子は王子の定番のような見た目だった。カールした金髪とグリーンの瞳で美形、でも第二王子は母親から引き継いだ黒髪を短く整えて爽やかな感じ、焼けた肌、しゅっとした体形は細マッチョで剣もお手の物だった。

 王子としてよりも、市井に紛れて平民を装っていた変わった人だった。そしてどんどん仲間を作っていく人懐っこい人種……さすが主人公。身分関係なく接してくれるので街では大変人気だった。恋をした相手は、下級貴族だったがそんな身分の違いを乗り越えて、熱烈猛アタックをして結婚する。

 その王子の嫁のことは後に、成り上がり令嬢物語とも言われるようになった。下級貴族の令嬢が下町で恋をした相手は、実は第二王子でした。そして第一王子を倒してこの国の王になりましたっていう話は、第二王子が王になってから、王都では人気の観劇の題材の一つだった。

 アニメでもこの手の話が人気となり、スピンオフで、「貧乏貴族の私は年配伯爵の愛人になるはずが、第二王子に惚れられて第一王子を見事成敗して王妃になりました」というタイトルから全てがわかってしまうという、購買意欲をそそられるありがたい小説が発刊された。

 王子は王家の特徴であるグリーンの瞳を魔法で隠して、黒くして目立たないように市井に出ては、街の様子を観察していた。そして、そこでギルドに通って仲間を作っていく、騎士として正統派なガリアード、街のギルド、そして貴族として影響力のあるオスニアン公爵家が最終的に第二王子の味方になり、武力、市井での人気、貴族への影響力、全てを備えて第一王子を倒す。最終的には王子の恋人の女性が王子を導いたのも大きいというあげマン令嬢と恋をして国民に祝福されて結婚する抜かりない男、サリファス。

 もちろん主人公なので、大人気。

 そんな男が、目の前で暢気にお茶を飲んでいる。そして態度がデカイ。

「殿下、いくらなんでも結婚翌日の新婚家庭に来るのはいささか、失礼ではないでしょうか?」
「お前、そういうの興味なさそうだったじゃん。初夜済ませて終わり、もう済んだだろう。だったら今一番ホットな政治の話をしようと思ってさ。早く対処した方がいいこともあるだろ、でも驚いた。まさか手を繋いで登場するとは! はは、ガリアードどういう心境の変化だよ!? お前この結婚を嫌がってたじゃないか」
「えっ」

 嫌がっていた……やはり嫌がっていたのか? 

初めから惚れていたけど、医者の非処女発言と淫乱発言で、凌辱夫になったんじゃないの? 俺調べではそうだったのに、まさか違うの? 初めからリリアンが嫌だった? でも王都で見かけてうっとりしたんだろ? どういうことだよ。初夜を迎えて舞い上がっていた。すっかり乙女志向な社畜になっていたみたいで、そんな自分にもダブルでショックを受けていた。

「リリアン、違う! 言っただろう? リリアンが第一王子と繋がっているという情報が入ったって、それで結婚前にそのことを殿下に相談しただけだ。嫌がっていたわけではない、それに今ではリリアンが居なくては生きていけない、愛している!」
「わぉ! 出会ってまだ三日目だろう? リリアンすげぇな、ガリアードをそこまで落とすなんて。実は魔性か?」
「殿下! 私の妻を侮辱するのはおやめください。全て誤解だったんです」
「誤解ねぇ、俺はまだ自分の目で見たわけじゃないからな、いくら親友が落とされたからって、俺に“王国の花“は通用しない」

 完全に嫌われている。でもガリアードの愛は本物だった。

「ガリアード様、僕のこと想ってくれてありがとうございます。殿下、どうして僕がそのように誤解をされたのかはわかりませんが、僕は……ガリアード様をお慕いしております」
「リリアン、私もあなたを愛している。こんなわがまま王子は放っておいて、私の部屋で愛を語る続きをしようか」
「ガリアード様! 僕も愛を語る続き……したいと思っておりました」

 なんだ、やっとヤル気になってくれたのか? こんなチャンス見逃せない。悪いが第二王子、帰ってくれ。

「ちょ、ちょっと待て! お前ら酷くないか!? 俺、この国の王子。その扱い、泣いちゃうぞ!」
「殿下も王子なら王子らしく、王宮で仕事をされたらどうですか? いつも勝手に我が屋の庭に来られて、庭師が毎回驚いて腰を抜かして、可哀想じゃありませんか! 無駄な魔法はほどほどにしてください。いつか不法侵入で捕まりますよ」
「大丈夫だよ、庭師のトムはもう俺の友達だ。友に会えて毎回腰を抜かすなんて、可愛い奴だよな。それに不法侵入にはならないぞ、俺と関わりのないところには行けないし、何度も行って魔力をなじませたところじゃなくちゃ、この魔法使えないからな。だから俺の行けるところは行きつけだけだ、良かったな、心の友! おまえの家は俺の家、はは」

 なんだそれは、そんな魔法……知っていたけど。某大型ネコ型ロボの世界にいる、いじめっ子代表と同じようなセリフを言っている。本当に親友かよ!?

「まぁ、そんなおふざけは程ほどにして、本題に入るぞ、座れ、ついでにリリアンも話を聞くんだ」
「……リリアン、このわがまま王子の話を聞いたら、二人きりになろうな。ちょっとだけ我慢をして、私の隣にいてくれるか?」
「はい、ガリアード様」

 王子は呆れた顔で俺たちを見ていたが、話をしたくて仕方ないらしく、すぐに本題に入った。そして溺愛夫になってくれたガリアードはリリアンの腰に手を回して、終始くっついたまた隣に座っていた。お腹にガリアードの手の大きさと温かさが触れていて、その手の上から自分の手を重ねて、触れて、俺はちょっとうっとりしていた。
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