ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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番外編

7、子供たちとの夏休み 1

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 毎年恒例、上條家の夏休み!!

 といっても今年は桜と俺の次男である雪弥ゆきやがまだ赤ん坊のため、今年小学生になったしずくと桜とお義父さんという最強アルファ三代で海に行って、俺とお義母さんは雪弥と別荘でお留守番。

「あの三人仲良くしてるかなぁ?」
「あんなそっくりな三人が海にいるとまるでドッペルゲンガーのような、人類の進化を見ているような、ちょっと迷惑な海水浴客ですよね」
「ははっ、言えてる。良太君も言うねぇ」

 雪弥はお義母さんの胸で眠っている。

 俺の息子たちはどうも実の母親よりも祖母の方が好きみたいでちょっと切ないが、まあそれもそのはず、俺が学業に専念している間はお義母さんが雫を預かってくれていたし、雪弥もこうやって見てくれているので本当に助かりっぱなしだった。義理母の由香里ゆかりさんはいまだに若くて美しくてとても40歳を超えているようには見えないから、はたから見たらどちらが母親かわからない。

 お義母さんが息子たちを見てくれるので俺は、未だに桜と二人きりの時間も出来ているから感謝しかない。そういう俺もお義母さんにはいつも甘えていて時々抱きしめてくれるから、ちょっと嬉しい。

 子供時代にただただ甘えるという行動が出来なかった俺は、今それを桜の親で堪能させてもらっている。俺もまだまだ子供な部分があるみたいで、桜に見られると恥ずかしいから、こうやって二人きりの時は隣にくっついて甘えているんだ。

 そこで別荘にいる使用人が、お義母さんに声をかけてきた。

「由香里様、お客様がお見えですがどちらにお通ししますか?」
「えっ、ああ――!! 今日だったっけ!?」
「左様ですが、まさかお忘れに?」
「うん忘れてた!! ここに通して、お茶の用意お願いね」
「もう準備は出来ておりますよ、ではお二人はこのままこちらへお通しいたしますね」

 俺も慌てた。すっかりお義母さんにべったりしてたけど、今日だったか。お義母さんが気まずそうに俺に言ってきた。

「こりゃ雫が怒るな。聞いてたら海に行かなかったって言われそう」
「滞在期間も長いから、俺もすっかり忘れてました。時間たつの早いなぁ」

 そこで使用人に案内されてきたのは、俺のかつての恩人の亜希子あきこさんと祐樹ゆうき君だった。

「良く――ん!! 久しぶりぃ」
「やっほ――!! あら、雪ちゃんまだまだむくむくしてて可愛いわね」

 たくさんの新鮮な魚を持ってきた亜希子さんと、中学生になった息子の祐樹君が笑顔で登場。

「うわっ新鮮! こんなにたくさん、ありがとうございます」
「亜希ちゃん、久しぶりだね」
「あら、由香里さん。相変わらずお綺麗ね!!」

 亜希子さんはこの海の近くに住んでいるので、初めて会った夏からずっと交流が続いていた。ちなみに桜は初めて会った時、亜希子さんからグーパンチを食らわされた。俺を捨てたアルファって印象のまま会ったから仕方ない。桜は亜希子さんにむしろ俺と息子をあの時助けてくれてありがとうって感謝をしていた。桜の巡礼は長いこと続くんだなって俺は見守ったよ。俺はそれだけいろんな人に愛された証拠だと思って、桜が怒られているのを見て嬉しくなったのは内緒だ。

 あれから毎年夏休みは必ずこの親子とも会っているので、もちろん二人はお義母さんとも仲良しだった。

「いつもありがとう、今年もこんなにたくさん持ってきてくれて」
「いいのよ、祐樹が良太君たちに食べさせたいっていって、漁に楽しそうに行ってたからね」
「祐樹君もまた大きくなったね。めっきり漁にはまってるんだ?」
「うん、楽しいからさっ、あっ雪ちゃんまだ眠ってるの?」

 亜希子さんの実家は漁を営んでいて、孫の祐樹君は早くからお手伝いをしてたのでかなりの腕前というか、鍛え上げられた筋肉、俺より全然逞しい。

「起きたみたい! ほら祐樹君、君に雪をたくそうかな。抱っこしてあげて」
「うわっ、可愛いなぁ――!!」

 お義母さんが祐樹君に雪弥を渡して、夜のバーベキューの準備をするとかで亜希子さんと楽しそうにお庭に移動していた。

「ふふ、雪弥は祐樹君のこと大好きみたいだね。笑ってる」
「こんな小さいのに、もう可愛らしい香りがしてるね」
「そう?」

 この子はそういえば、雫がまだお腹にいた時にも匂いを感じ取っていたんだった。凄い特殊能力だ!!

「雫の時とはまた違う香りだけど、この香りもいいね。将来良君に似た美人さんになるな、雪弥は」
「祐樹君は……しばらく会わない間にアルファらしくなっちゃって、もうそんなセリフ言えるようになったの? 人参食べれなかった可愛かった祐樹君も立派になったなぁ」
「良君それ、毎回言うよね。そんな幼少期のことなんて覚えてないのに、それ毎年言うから俺は人参食べれない子供だったんだってことだけは覚えるようになっちゃったよ」
「ははっ、ごめんごめん。なんか祐樹君と会うと、あの時のことがいつも鮮明に浮かんじゃうんだよね、俺にとっては本当にいい思い出だったからさ」
「まぁ、良君がそう言うならいいけどさっ」

 中学生という子供だけどちょっとずつ青年になりつつある、逞しい男の子は今も昔も本当に優しくていい子だった。亜希子さんの息子なら当たり前かな。

 祐樹君と雪弥と一緒に、くつろいでいた。祐樹君の学校の話とか聞いていてとても楽しかった。アルファでもこんなふうに育つ子もいるんだなって思うと、性別って本当は関係なく、バースは個性の一つなんだと思った。現に祐樹君はアルファであっても上流階級に属していないし、亜希子さんも普通の働くお母さんでシングルマザー。そして実家は漁師をしている家系だった。祐樹君もこのまま漁師になりそうな勢いで、今は漁の手伝いが楽しくて仕方ないってところみたいだった。

 そんなふうに思い思いの時間を過ごしていると、雫たちが帰ってきた。




 



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