211 / 237
最終章 それぞれの選択
210、〜おわりの日〜
しおりを挟む「桜、今までありがとう。俺の一生分の時間はここに凝縮されていたよ。本当に桜が全てだった。愛してくれてありがとう、これからあの人と幸せになってね」
泣かない。
こんな素敵な最後の時間にしてくれた最愛の人に、汚い顔は見せられない。
それに俺は満足している。
たとえ別れの日でも、これが最後の日でも、この人を愛したことが俺の人生でやり尽くした最後のことだから。
「良太も、今度こそ岩峰と穏やかで愛に満ちた人生を送って。本当に愛してた」
桜は泣きそうに笑っている、アルファは表情まで器用だな。
その俺への愛に満ちた顔に満足して、最後に、本当の俺の心からの笑顔を見せた。
「じゃ、行くね」
ここで、この人との人生は終わった。
本当に終わりなんだ。
全てはあの始まりの日に、こんな未来が来ることは決まっていた気がする。俺が桜を捨てたあの日。そしてあれからちょうど一年たった今日、俺が桜に捨てられた終わりの日を、静かに心安らかに迎えられた。
大丈夫、俺はとても幸せだったから。俺は、俺の人生の終着駅へと向かう。
もう迷わない。
固い決意とともに、そう胸に想い、桜の前からしっかりした足取りで歩き出した。
それは良く晴れた、春の始まりだった。
応援ありがとうございます!
30
お気に入りに追加
1,714
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる