ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第九章 運命の二人

186、強制発情 2

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「そろそろ効いてきたかな」
「ふっ、ん………」

 先輩が言うように、少ししたら発情の兆しが見えてきた。悔しくて、必死に耐えるも無駄だった。今までだって耐えられたことなんてない、だって発情したらすぐに先輩が抱いてくれていたから、だから耐えたことなんてない。

「苦しい?」
「……」

 俺は、はぁはぁと息が荒くなるも、何も答えなかった。こんな悪あがきもあと数分も持たず、目の前のつがいに泣きつくのはわかっている。だけど理性がある内は縋りたくなかった。

「会わないうちに随分可愛げが無くなっちゃったね。前の良太ならすぐに俺にすり寄ってきたのに」
「先輩も会わないうちに、忍耐覚えたんですか? 前だったらすぐに理性無くして我慢しなかったのに」

 お互いに牽制しあっている。

 この会話になんの意味があるのだろう。発情したオメガとつがいのアルファ、目の前につがい同士が居るのに、俺たちは一体何をしているんだろう。

「欲しくないの?」
「……」

 欲しい、欲しい。

 俺のアルファが欲しい。だけど、まだだ、まだ理性が少しでもある内は絶対に嫌だ。あんな事をした人間に俺は従いたくない。

「そう、残念だけど要らないなら一人で耐えてね」
「えっ」
「どっちにしても、岩峰に汚された体なんてとても抱けないよ」

 俺は驚いた。本気で言っているのか? なんで、じゃあ、なんで発情促進剤を俺にとらせた。散々車の中で抱いといて、なんだ、その台詞は。

「……先輩は何がしたいんですか? この体を抱きたいから、わざわざ促進剤飲ませたんじゃないんですか?」
「いや、そんな汚れた体はごめんだ。発情したら少しは浄化して綺麗になるかなと思ってね、だから今回は薬も飲まず、一人で頑張って色々出し切るんだ」

「えっ、そ…んな…、先輩は発情の苦しさ、知らない訳じゃないですよね? 散々見てきたんだからっ、なんでそんなことするんですか」
「うーん、なんでと言われても。俺、相当怒っているんだよ? 勝手に他の男に抱かれて、しかもこれで二回目だ、お仕置き必要でしょ」

「んんっ……はぁ、はぁ、じゃあ、俺の目の前から消えろよ、あんたの匂いが俺の体をこうさせているんだろ」
「そう言うなよ……俺だってお前のヒートに当てられて耐えているんだ」

 確かに先輩の顔も高揚してきているのがわかるし、ラットを起こしかけている。匂いがどんどん強くなる。先輩のズボンはもう苦しそうで、俺の目の前には、今にもはちきれそうになっているものが形を見せてきている。

「そんなに、おっててッ、何言ってんだよ。耐えられてねぇだろ! 我慢せずに抱けよ!」
「抱いてください、だろう? お前こそ、そんなに前も後ろも濡らして。びちょびちょに音立てて、淫乱なオメガだ」

 目の前の男は一体何をしているんだ。

 そんな臨戦態勢な状態で、なぜまだ会話を続けるのか、そしてこの会話に終わりはあるの? 何を言いたいのか本当にわからない、そして俺の意識もだんだん理性を失っていき、もうどうでもよくなっていた。

「んっ、はぁっ、ふっぅ、ふぅっ」

 もうだめだ。

「あンッ、せん……ぱい、我慢しないで、僕を抱いてくださいっ、オナホみたいにガンガン付いて? お願い」
「……」

 先輩の香りがまた一層、強くなる。間違いなくラットを起こしている。アルファなんてちょろい、次で堕ちる。

「ね、はやく……」

 先輩にすがろうと、抱きついた。そのままいけるって思ったら、思いっきり腕を払いのけられ、俺は地面に崩れ落ちた。

「な、なんで」
「触るな、薄汚いオメガが! そんないやらしい香りをどれだけ岩峰に嗅がせたんだ?」

「……なん、なんなんだよっ! 何がしたいんだよ。いい加減にしろよ、お前が俺をここにひきずってきたんだろう? 勇吾さんと引き離した。なのに、俺を汚いオメガ呼ばわりする。俺の顔なんか見たくないんだろ! だったら、解放しろよっ、俺をっ、優しいあの人に返してよっ」
「くそっ! まだあの男のことを言うのかっ」

 先輩が俺の肩を掴んで、喚いてきた。でも、手が触れただけで、また体が発情を増して辛くなるだけだった。

「あぁぁぅ」

 顔を歪めて俺を虫ケラのように見てくる。

「悪いが、お前のそのイヤラシイ顔を見ていると無性に腹がたつ。発情が終わったらまた逢いにきてやるよ、おもちゃくらいは置いてってやるから、それで楽しめ」

 やっと去っていった。

 俺の前には男性器を形どった卑猥なものが何個か置かれていった。本気でこれを使えって言っているのか? 俺は一体どうなるんだろう、こんなことをさせるためにあんなに時間も金もかけたっていうのか?

 一体先輩は何をしたいんだろう、発情が進むにつれて、もうどうでもよくなった。

 はぁ、はぁ、はぁ。つらい、つらい、ツライ。

 どうして、こんなに寂しい思いをしなきゃいけないの……。少し前まで勇吾さんと幸せに暮らせる未来を夢見ていたのに、今は俺の隣には誰もいない。

 俺の熱を取ってくれる人もいない、あるのは無機質な冷たいおもちゃだけ。

 それに手を伸ばそうとするも、それすらももう握れないくらい身動きが取れなくなった。触ってもないのにどんどん濡れていく。前はちあがりパンパンに腫れてきた、自分の手でさするも、発情のせいで手に力も入らない。

「うん、う、う、ひっく 助けて、ツライっ 体があつ……ぃ、うしろにいれ、 て、あぁ!」

 力が入らなくても、自分の指を後ろに添わせてみる。実際自分で触ったのが初めてで、なんとなく怖いという感情だけがあった。だけど、それもすぐに消えて、ぐちゅぐちゅって音が自分の耳に入ってくる。

 自分で自分を慰めるも、不慣れで良い場所に全く届かない。

「ひっっく、うぅっ、ひっ……ッ」

 誰かを呼んだところで誰もこないのは理解した。だから俺はひたすら、泣いていた。ぐちゅぐちゅという音と俺のすすり泣く鳴き声、それだけが部屋に響いていた。

 わけもわからずそれを繰り返ししていたところで、俺の意識が 落ちていった。
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