ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第九章 運命の二人

185、強制発情 1

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 いつのまにか先輩のマンションについていた。

 車の中で散々犯されて、俺は意識を失っていた。あれからどれくらいの時間がたったのだろうか。以前よく過ごしていた、見慣れたベッドの中で目が覚めた俺の耳には、先輩が誰かと話している声が聞こえていた。これから俺は、いったいどうなるのだろう。

 絢香をつがいに犯させて、岬の体を好きに触らせた。こんなことをする先輩を、俺はこの先、許すことはない。でも車の中での快感は、忘れられない懐かしい交わりであった。勇吾さんとの行為が決して満足してなかった訳ではないのに、本物は違う、それしか言えない。

 この疼くオメガの体が憎かった。

 思い出に浸ってベッドにいても仕方ない。起き上がってベッドルームを出ると、パソコンを前に誰かと電話をしているみたいだったが、先輩は俺に気付き作業を中断した。

「良太、おいで」

 俺は動けなくなった、そうすると先輩はこっちにきて俺を抱えて自分の膝の上に座らせた。俺は胸に手を押し出して離れようとしたが許されず、逆に胸に顔を埋めさせられて抱き込まれる形となった。もう抵抗はやめて言葉で伝えた。

「許さないっ、あんたのことっ、これで俺が手に入ったとでも思う? ますます憎くてたまらない」
「そう、俺もお前が憎いよ」

 低い声で言われた。

「じゃあ、なんで結婚するんだよ。お互い憎いなら一緒にいるべきじゃないっ、んんっっ」

 先輩の言葉が予想外だった、顔を上げて言い返すと、唇を塞がられた。

「んっ、やめっ、やめろっ」

 グチュっ、静かな部屋にそれだけが響く、ようやく解放されてから先輩が呟いた。

「その言葉使い久しぶりだね。良太を初めて抱いた後も、そんな風に砕けた話し方で怒っていた」

 そうだっ、俺は怒りのあまり素がでていた。でも、もう隠す必要もない。嫌われてもいいし、というかこれ嫌がらせに近いから、すでに嫌われているのかもしれない。

「そう、これが俺の本性。先輩はどんな俺でいて欲しい? あの二年間は先輩につがい解除されない演技で俺なりに演じたかわいいオメガ。ああいうの、好きだった?」

 侮辱を込めた感情で言い放った。

「勇吾さんと結婚するのに必要だから、勇吾さんが薬を開発する間、あんたのつがいでいてやったんだよ。盛りのついたアルファに犯された可哀想な俺を勇吾さんはずっと支えてくれていた。俺が愛してるのはあの人だけ……あんたの出る幕なんてなかったんだ、なのにっ」

 俺を抱き込みながら、支えている手は優しく俺の背中をさすっている。

「俺は、散々良太に傷つけられてきた。結婚したのに、まだそれを続けるの? もう岩峰のところには戻れないのに、それに良太のせいで岬君は大変なトラウマを植え付けられた。父親として良太を許すと思う? お前とさえ出会わなければ、岬君はいつまでも純粋で可愛いままだったのに」

 岬を汚した張本人が、こいつが憎い。

「何が言いたいんだっ、俺と口喧嘩するためにここに連れてきたの?」
「それもいいね、良太はいつも本音を隠してきたから、そういうはっきりした物言いも新鮮でたまらないな」

 俺は相当疲弊していた。

 小馬鹿にしたり、あざ笑ったりとわざと怒らせるようなことを言っているのに、何がしたいんだろう。俺の本性をばらしたけど、やはり壁を作った方がやりやすいことに気が付いた。

「先輩は……僕に何を求めているんですか? 学生時代みたいな従順なつがい? おとなしい後輩? それともやんちゃなオメガ?」
「あれ、もう話し方戻しちゃうの?」
「意味のないやりとりはやめませんか? 言ってください。あなたが望むオメガをすればいいですか? それとも、こんなオメガはいい加減嫌になったと解放してくれますか?」

 俺の顔を覗き込んで、そしてまた唇にキスをしてきた。なんなんだ! あらかじめソファの前のテーブルに用意されていた、水と薬を差し出してきた。

「これを飲んで」
「えっ、何、これ」
「発情促進剤」
「は?」

 何言っているんだ? なんで発情をさせる?

「早く飲んで」

 俺が戸惑っていると、無理やり口を開けさせられて薬が入れられた。吐き出そうとするもそのまま水を口移しで含まれ、ゴクンと飲み込んでしまった。

 全く意味がわからないまま、何も言えずにそのまま寝室へと連れて行かれた。
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