ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第八章 束の間の幸せ

180、決着 4

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「絢香っ!」

 部屋に入ると、すでに情事が終わった絢香がシーツに包まれてうずくまっていた。

「良っ! あなた無事だったのね」
「ごめんっ、絢香にまたこんなこと」

 俺は絢香に抱きついて涙を流した。

 最後に絢香という高い代償を払ったが、これで絢香はもうあの男の影に怯えることがない、そういうことか。向こうでは警察に取り押さえられてる正親が、喚いている声が聞こえた。

「くそっ、桜っ! こんなことしてタダで済むと思うな、離せっ」

 きっと、絢香を取り戻せると思ったのだろうが、先輩に裏切られたんだ。

「おまえがっ! おまえさえいなければ桜も俺も絢香だって苦しまなかった。お前が全ての元凶だっ」

 ――そんなこと、わかっている――

 俺に気付いたあいつは、取り押さえられながらも恨み言を言う、そして先輩の低い声がしてきた。

「うるさい、黙れ。そもそも俺の良太をオークションになんて売らなければこんな複雑になってなかった。あんたは今後上條とは一切関わりがなくなる。今までよくも隠れて色々やってくれたな。収賄、誘拐、強姦、これらの罪で一生豚箱から出てこられない。罪を償なえ」

 いつのまにか先輩が後ろに立っていた。お爺様と話を進めるんじゃなかったのか? この男、そんなに色々と犯罪に手を染めていたのか。

「先輩、なんでここに」
「ああ、良太が心配でね。それにまだ婚姻届のサインもらってないから、これで書けるね?」

 絢香から引き離されて、俺を後ろから抱きしめてきた。何を言っているんだ。

「まだ岬の確認が終わってない、岬はどこ!」
「あっ、あっ、みさちゃんがっ」

 絢香がすごく怯えている、何を見たんだ。

「先輩っ! 岬は?」

 すると先輩がもう一つのドアを開いた、そこから岬の泣き声がする、絢香をそこに残して岬の声の方に向かうと、裸の男が岬の前で汚いモノを見せて喜んでいる。岬が怯えて動けずにずっと泣いている。

「何やっているんだ! くそっ変態野郎」

 俺が岬に近寄ろうとすると、先輩から体を拘束された。そして後ろから耳元を舐められた。俺は久し振りの先輩の行為にぞくってした。

「離せっ、岬を助けてくれるんでしょ?」
「俺、そんなこと言った? 岩峰も目の前で大事な子を奪われる思いをするべきだと思わない? 俺が良太を奪われたように。ここの映像は彼らの部屋にそのまま流れているよ、岩峰は身動き取れず苦しんでいるだろうね」

 なんてことを!

「そんなことしたら、あんたをっ、一生許さないっ、離せっ、岬はまだ子供だ。こんなことして心に傷が付くっ、俺みたいな思いをさせないで欲しい」

 岬は俺の声に気づき、こっちを見て助けを求める。

「りょうくん? りょうくんっ、怖いよ、ぱぱ――っ」
「岬っ! くそっ離せっ」

 岬が怯えきっている、あんな汚い男にを目の前で見て、気持ちが悪くて怖いに決まっている。

「良太は、そういえば変態にキスを奪われたんだったね、じゃあ俺の良太の苦しみを岬君にも味わってもらおうか」
「はっ……何をっ、やだ」

 先輩が男に目を配ると、男は岬の顔を舐めた。

「いやぁぁ――、ひっ、やだ、やだ、やだ」

 岬が涙を流して怖がっている、その間に男は岬の唇に食らいついた、俺は泣いて先輩にすがった。

「岬! 先輩お願い……もうやめて、なんでもするからっ」
「じゃあ、ここで脱いで股を開いて、俺のモノを自分かられろ。みんなにお前が俺のモノだというところを見せてあげて。画面の向こうの人にね。そしたら岬君を解放してあげる」

 この場で公開セックスを? でも俺の羞恥心より岬の保護だ。俺は迷いなく急いで服を脱ぐ、ズボンを脱いだ瞬間、先輩は俺のキスマークだらけの体を見ると、脱ぐことをやめさせた。

「もういい! そんな体見せるな、さぁカメラによく見えるように俺にキスして、俺が勃《た》つくらいの濃厚なやつを」

 そのまま先輩の唇を貪った。

 その間も岬は泣いて大変なことになっている。俺の思考の時間さえ必要ない、早くしなければっ、久しぶりのつがいの唾液は俺を興奮させた。こんな状況なのに気持ち良くてたまらない。

「んんっ はんっ、早くっ」
「良太のキスが上手になっていることに腹がたつけど、まあこれ以上お前の発情する顔を前の男に見せてやるつもりはない、あの子を解放してあげるよ」

 先輩の合図と共に男は服を着て、ニタニタと笑いながらその場を出ていった。

 なんて胸糞悪い奴らだ。俺は早く岬の心を沈めてやりたかった。俺の時はその場で助けてくれる人なんていなかったからこじれてしまったけど、今ならまだ岬は大丈夫だと信じて行動を心に決めた。

「先輩、今からすることだけは邪魔しないで欲しい。昔、先輩がしてくれて俺が救われたことだからっ」

 先輩は何も言わなかったから、俺は岬に駆け寄った。泣いている岬に、自分のシャツを脱いで体にかけた。

「岬っ、こんな目に合わせてごめんねっ、よく頑張ったね。パパのところに帰ろう」
「ううっ、ううっっ……りょうくんっ、」

 俺は強いくらい抱きしめた。

「ぎもち悪いよっ、怖かったよ、うううっっ、わあぁぁ――んッ」

 俺はそのまま岬の唇に、自分の唇を当てた。

「んんっ?」

 岬は大きいな目を一層大きく見開き俺を見た。

 この出来事に驚いて涙が一瞬止まった。それを見て俺はふっと笑って、丁寧に舐め周し、岬の唾液を吸い込んだ。岬はうう、ううっと言いながらも、その行為を受け入れていた。そして俺が唇を解放すると、息切れながら岬は話した。

「はぁっ、はぁ。りょ……うくん?」
「岬、これが岬のファーストキスだ。さっきのは、犬に舐められたのと同じ。俺とじゃ嫌だった? 俺は岬とキスできてすごく気持ちよかった」

 俺は頭を撫でて、一生懸命と思いを伝えた。

「い……やじゃない、僕のファーストキスはりょうくんなの?」
「そうだよ、好きな人としたキスじゃなきゃ、カウントされない。岬は俺のこと好きだから、これが初めてのキスだよ、好きだよね? 俺は岬が大好きだよ」
「うん、好き、大好き」

 さっきまで力なく垂れていた手が伸びて、俺の首にぎゅっと巻きついてきた、

「良かった。これからはもう怖いことはないよ、パパと会って抱きしめてもらおうね」

 岬はそこで安心したのか。意識を失ったので、後ろに控えていていた桐生の護衛である、藤堂さんに岬を預けた。

 先輩はその場で俺に婚姻届を書かせて、会見に出るからと俺に護衛をつけて出ていった。俺は残された部屋で絢香との最後のお別れの時間をもらったんだ。

 お爺様と勇吾さんにはもう会わせてもらえないとさっき言われた。ろくに別れの挨拶もさせてくれないくらい、二人のことは恨めしいんだろう。ただ、絢香だけには時間をくれた。

「絢香、巻き込んでごめんね、俺は先輩と一緒になるから、もう俺のことは忘れて。今まで俺を育ててくれて、愛してくれてありがとう、愛してる」
「良……私こそ、まさかこんなことになるなんて思ってなかった、もうこれしか方法がないの?」

 岬が凌辱されている場面を、絢香は見せられていた。そしてなんでそうなっているのかも、絢香のつがいから聞かされていたのだった。だからもうこれ以上何もできないことは絢香も理解はしていた。

「うん、ごめんね」
「あなたのこと愛している、あなたを一生守るつもりでいたのに、いつのまにか私はあなたに守られっぱなしだったね、本当にごめんね」
「そんなことない。絢香との日々は俺にとってかけがえのないものだったよ。絢香がいたから俺は生きてこられた。もう行くね、お爺様と勇吾さん、岬のことよろしくね、絢香はどうか幸せになって、それだけが俺の望みだから」

 絢香は泣き崩れたけど、それ以上ここに滞在することは叶わなかった。

 俺は、先輩の護衛に引き渡されてそのまま違う部屋へと連れていかれた。すぐに先輩が俺を抱くから、下準備をしておけと先輩の護衛から伝言を聞かされ、風呂に入れられた。そして先輩の用意した服を着て、生中継で繋がっている会見の映像を見ていた。
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