ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第八章 束の間の幸せ

175、婚約期間 5

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 あれからまた穏やかな日は続いていた。

 お爺様が一度だけ岩峰家を訪ねてきた。俺はもう一切の外出を許されなかったので、会いに来てくれたのだった。まあ、でもそのまま絢香を連れてったから、ただ絢香を迎えにきただけだったような気もしないけど?

 お爺様は、簡単に調査結果を教えてくれた。

 それだけなら人づてに伝えればいいのに、やっぱり俺の顔をきちんと見たかったんだって、少し照れながら言っていた。絢香も隣で素直じゃないんですからって、クスクスと笑っていた。

「上條はきっと、新薬が何かを嗅ぎつけている。厳重に外部に漏れないようにしていたが、それでも良太と岩峰君が体を重ねたという事実から、大体の予測はしているんだろうと思う」
「じゃあ、なおさら先輩と復縁する必要もないのはわかると思うんですが」

 お爺様は呆れたように言った。

「良太、つがいだ、しかも運命。執着するアルファを甘く見てはいけない。現に岩峰君になびいているお前を見ても諦めない。普通なら不貞を犯したオメガをまだ好きでいるというのは難しいんだよ、言い方は悪いが所有物を取られたらたちまち興味を失せるというのもアルファの特徴だ。だが、上條桜は違う。必ずお前を連れ戻すだろう」
「……そ、んな」

 絢香が俺の手をぎゅっとした。

「大丈夫よ、きっと、お爺様も勇吾さんも貴方を守ってくれるわ」
「絢香っ」
「脅してしまったかな、安心しなさい。お前は何がなんでも守るよ」

 それでも不安な顔を隠せなかった。

 先輩がやるというなら必ずやるだろう。そういうところはつがいの時から理解していた。そしてお爺様は、そんな俺の不安を消してくれるかのような言葉を言ってくれた。

「良太、少し早いが入籍を早めよう。そしたら彼はもう手が出せない、日取りは後で岩峰君から聞きなさい」
「お爺様、ありがとうございます」
「これから慌ただしくなるな。お前は何も考えないで、彼に愛されることだけを受け止めていればいい」

 お爺様と絢香は仲良さげに二人車に乗り込んでいった。俺は二人の関係に心が救われるような気持ちになった。勇吾さんはまだ仕事、そして岬は幼稚園に行っているからもうすぐ帰ってくるだろう。

 今は俺が何を考えたからって状況が変わるわけじゃない、ゆっくりお茶を飲んで愛しい二人の帰りを待つことにした。
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