ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第六章 本心

139、冬の休暇 5

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 大晦日、約束通り先輩は勇吾さんの元へと俺を返してくれた。

 そしてお正月は勇吾さんと絢香、岬と家族として過ごした。次の日にはジジイの用意したプライベートジェットに乗って、ジジイの持っている島へと旅行に出かけた。

 絢香も一緒に行った。

 あの時の出来事が無かったかのように、ジジイはいつも通りの穏やかな口調で俺にも接してきた。俺はもともとジジイとは打ち解けてない関係だったので、急によそよそしくなるというような問題もなく、絢香にはいつも通りの祖父と孫の関係に見えただろう。

 勇吾さんだって、大人だ。ジジイは仕事相手なのだから立場をわきまえた態度。俺とジジイ、勇吾さんの関わり方は何一つ違和感なかった。

 勇吾さんと岬、華に絢香、ジジイと俺。変な組み合わせだが先輩を捨てた後、みんなが家族になる。

 学園が始まるギリギリまで海の見えるそんな豪華な別荘で過ごした。絢香も幸せそうで、それを見たら色々黙っていて良かったって感じた。

 俺がジジイと親密になるなんてない、いつも通り岬と楽しく遊んで冬休みの思い出作りを楽しんでいた。

 年が明け少ししたら俺は二年に上がる。先輩は最終学年だ。

 俺と先輩の残された時間は、もう一年しかない。その一年で俺は何ができるのだろうか? 先輩を想ったら苦しくてたまらない。本当なら期限を待たずに、俺を嫌いになって諦めてもらいたい。

 自然に別れられたら、俺の罪悪感も消えるのではないだろうか。

 絢香はもう大丈夫。

 そう思えるほどジジイの愛情も嘘ではなさそうに見える。あの時言った言葉は本当なのだろうか? 俺を叱咤するために打った芝居なんじゃないだろうか? 俺にはわからない、人の感情も、嘘も、真実も。

 何一つ、大丈夫と言える決定打がない。

 愛を感じる毎日の中、最愛の人を裏切るくらいなら早くにつがいを解除されて死にたい、段々とそう思うようになってきてしまった。

 そう、苦しいんだ。

 愛を知れば知るほどに、苦しくてたまらない。全てから解放されたい、自分は強く、強くって思う反面、そう思うのは弱いからなのだといい加減理解している。

 死んで楽になる、でもそんな魅惑の最後を選べないなんて承知だ。

 新しい一年の始まりに、最愛の人から嫌われますようにとそんな哀しくて浅はかな望みを、そっと願った。
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