ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第六章 本心

135、冬の休暇 1

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 季節は穏やかに移り過ぎ、冬になった。

「さむっ」

 明け方、寒さに身震いして目が覚めた。

 隣に眠る先輩を見て、まだ起きる時間じゃ無いんだって思いトイレにそっと行った。寒くて白湯を飲んでからそっとベッドに戻って端っこで丸まっていたら、先輩がモゾっとした。

「良太? どした、寒いの?」
「あっ、起こしてごめんなさい。ちょっと裸足で歩いたらひんやりして」

 先輩がフワっと俺を包みこんでくれた。

「あったかい……」
「良太は足が冷えてるね、手も、可哀想に俺にくっついてくれればいいのに」

「僕の冷たい体が当たったら、先輩が冷えちゃうから……」
「俺は冷えないよ、でもこれじゃ温まらないかな、ちょっと芯から温めるか」
「えっ? んんんっ」

 先輩は俺にキスをする、どんどん濃厚になっていき息が切れそうになった。その間も先輩は乳首を念入りに触ってきた。もちろんいやらしい触り方だった。俺の体はどんどん熱を帯びていった。

「あんっ、先輩、もうあったまったから」
「そう? でも俺が冷えてきちゃたかな、良太の中で温めて?」

 冷えたなんて嘘だ。

 触ってくる手も熱いし、先輩の硬くなったそれも熱を持っている。でも俺も中途半端に欲情させられてしまい、体は温まったけどもっともっとって求めてしまう。

「早く僕の中であったまって、んっ、あっ」

 明け方から何をしているんだか。体もだけど、心まで温まった。

 そして少し寝て、先輩に起こされるまでぐっすりだった。いつも通り朝食を食べていると、先輩が新聞を読みながら話を始めた。

「もうすぐ冬休みだね、今年こそ良太を俺のマンションで過ごさせたいんだけど、岩峰先生に言ってもいい?」

 あっ、そうだ。

 夏休みは結局あまり、頻繁には会えてなかった。それに、あの頃の俺は先輩を避けていたし。でも今は大好きで一緒にいたい大切な存在だ。

「僕も、先輩と一緒にずっと過ごしたい……でもどうだろう、全部は難しいかも」
「それはわかってるよ。だけどこんなに愛しい良太ともう離れて過ごすのは耐えられないよ」

 俺はテーブルにシリアルを置いて少し困惑しながら話していたら、先輩はソファから立って隣に座った。

「僕も……辛いです」
「同じ気持ちでいてくれて嬉しい。岩峰先生には俺からそれとなく話してみるから任せてくれる?」

「頼りっ、ぱなしでごめんなさい、お願いします。でもあっちは僕の家族でもあるんです。もちろん先輩とは、過ごしたいけど」
「ああ、そうだよね。大丈夫、任せて」

 先輩は早速勇吾さんに連絡したみたいだった。

 翌週末、勇吾さんの家に言った時に話を聞かされた。夜、二人で勇吾さんの部屋でまったりと話をしていた時にその話になったんだ。

 俺はあれから先輩にどうなったかは聞いてない。だから結果を知らされてないけど、先輩とはもう話は大方済んでいたみたいだ。

「君たちはつがいとして初めからいろいろあり過ぎて、今が穏やかな付き合いをしているのはわかっているけど、僕としては妬けるんだよね」
「ふふ、勇吾さんにそう言ってもらえて光栄だよ。先輩も気を使ってくれるようになったし、確かに落ち着いてる……かな。俺も、先輩にいちいち歯向かわなくなったし」

 勇吾さんは穏やかだけど、ちょっと不本意な感じが見えた。付き合いは先輩よりは長いから、勇吾さんの本音もわかりやすく見える時がある。

「それで今回の冬休みの件も、断れなかったの?」

 ううん、断れなかったんじゃなくて、断りたくなかった。俺は先輩と過ごしたかった。そう言えたらどんなに楽になるだろう。そんなの、言えるはずもないから頷いた。

「まあ、良太君が拒絶したら、またあの横暴アルファになる可能性もあるもんね、良太君はアルファの扱いが上手くなったね」
「……勇吾さん、怒ってるの? 俺が先輩を受け入れているから」

 当たり前だよね、こんな淫乱オメガに怒りがわかない訳がない。

「違うよ、そうしなければいけないのもそうさせているのも僕だから、君のせいじゃない」

 優しい勇吾さんは、いつもこうやって大人な対応をして俺を安心させてくれる、そして俺を引き寄せて抱きしめた。このくらいの触れ合いなら、家族としてもちろん俺は嬉しく思うけれど、やはり一人の男として見るには今は先輩で手一杯だった。

 でも、俺はこの冬どうなるんだろう。

 勇吾さんも、俺たちを無理に引き離すのは、せっかく良好な関係を結んでいるのに得策ではないと言った。だから、前半の大晦日までを先輩と過ごして、後半年明けからは勇吾さんと過ごす。

 どっちにしても年始は家の集まりもあるだろうから、先輩の家族と会わせるわけにもいかない。それを言えばちょうどいいだろうと言った。年始にみんなで家族旅行にでも行こうか、それで始業式までは会えないと言えばいい。勇吾さんの中で何か計画がたったのだろう。

 そしたらクリスマスは先輩と過ごせるんだ、俺は内心嬉しくなった。

 翌朝、絢香が悲しんだ。

「良とクリスマスを楽しめないなんて、酷すぎる! 勇吾さんもどうして許可したのよ」
「でもお正月はずっと一緒だよ? 新年の始まりに家族で過ごす方が良くない?」

 勇吾さんが絢香をなだめる。

 なんだか俺がいない間に、二人は本当の家族みたいになっている。日常会話がとても穏やかで安心する空間だった。俺と岬はそんな二人に構わずに遊んでいた。

「クリスマス、りょう君、おうちにいないの?」

 向こうの会話が聞こえて岬が気になったのだろう、絢香の声いつになくデカかったもんな。俺はククって笑って答えた。

「うん、大晦日には帰ってくるからね、プレゼントは何がいい? いっぱい用意するよ」
「わーい! じゃあね、考えとくね」

 子供は無邪気でいいな。

 そしてあっという間に真冬の寒さを迎えて、クリスマスとなった。
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