ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第六章 本心

133、閑話 〜俺の番は変態だ〜

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 ある日、相原君が突然プレゼントをくれた。

「これこないだのデートの時に買ったんだ、でね? 桐生君の分もあるから使って?」

 渡されたものを見るとエプロンだった。しかも、なんか可愛すぎないか? フリルひらひらって。

「えっ、でも、悪いよ」

 というか、要らない。こんな可愛い過ぎるものつけるとか男のくせに痛いじゃないか。

「でも桐生君料理するんでしょ? 僕もね、簡単なのはたまに作るの。で、こういう可愛いエプロンつけるとね、つがいがすごく喜ぶんだ! だから桐生君もたまには色気のある格好で日常過ごしてみたら?」
「色気……」

 確かに自分にはそんなものは無い。じゃあ、これに頼ってみてもいいのか?

「桐生君、生徒会長が好きすぎてたまらないんでしょ? 最近べったりだもんね、みんなもドキドキして見てるんだよ」
「ええっ! そんなのっ、恥ずかしい、見られていたの? 先輩は誰も自分たちのこと見てないからって、言っていたのに……」
「まあ、今更誰がどうとか気にしないけど、桐生君は普段の硬い態度が柔らかくなったってギャップがね、それよりそんなに好きなら、もっと自分を気に入ってもらえるようにとアピールも必要だよ」
「アピール?」

 相原君は力説してくれた。

 つがいがいても関係なくアルファを誘惑する輩はいる、だからつがいというだけで安心はしちゃダメ、もっと好かれる努力をするのも必要だと。

「僕のところはね、このエプロンを裸でするとすんごく喜ぶの」
「裸、エプロン!?」

 周りがこっちを見た、俺の声があまりに大きすぎたようだった。だって、裸にエプロンって、卑猥だよね?

「ふふ、エプロンは料理の時以外でも使える優れものでしょ? それにつがいが帰ってきた時にね、言うと盛り上がるセリフがあるの」

 へ――、なんだろう。

 俺は今、先輩にもっと好きになってもらえる努力ならしてみたい。だってただでさえかっこいいから正直心配だ。他の輩が手を出そうとしてきたら困るから。俺が真剣に聞き返すと、相原君も楽しそうに続きを教えてくれた。

「食事にする? お風呂にする? それとも僕? ていうの、よくドラマとかにでてくる旦那様をベッドに誘う決まり文句なんだよ」
「そ、そうなの? でも、ご飯にするって言われそうだな」
「それもあるかもしれないけど、どっちにしても今夜抱いてって意味だから、順番は気にしなくていいんじゃ無いかな」
「あっ、そういうこと……お誘いのセリフなのか。なんだか恥ずかしいな」
「ふふっ、もう言う気満々じゃん! そのエプロン着けて言ってみてね」

 それを行動に移せるかはわかないけど、でもエプロンのお礼は言った。そしてその日夕食を作る予定だったから、もらったエプロンは純粋に調理をするから着けてみた。

 うん、可愛すぎるな。先輩引かないかな?

 今夜のメニューは豚カツだ。

 俺が料理をするようになると、寮の冷蔵庫には高級なお肉やらが入るようになった。先輩のお家の方が届けてくれるのをありがたく使わせてもらっている。その日は立派な三元豚のお肉があったので豚カツにしようと思った。

 ご飯も後もうすぐで炊けるし、先輩からさっきメールきたから、あと少しで帰ってくるだろうと思って、出来立てを食べて欲しいのでお肉を揚げはじめた。そして付け合わせの野菜を切っている時に先輩が帰ってきたみたい。

 油のパチパチって音で気づかなかったから、後ろから抱きしめられてびっくりした。

「……うわっ! びっくりしたぁ、おかえりなさい!」

 俺は抱きしめられながらも、揚げていたトンカツをキッチンパーパーの上に出した。うん、綺麗に仕上がっている。火を止めた。

「ただいま良太、どうしたの? そんな可愛い格好して」
「これね、相原君がくれたんです」

 そしたら先輩は耳もとで、凄く可愛いよ、似合っているって言ってくれた。目元にキスして、お尻も触られている。あっ、もしかしてお誘いと思われた?

 言い訳くさいけど、料理をするという話しをしたらついでに自分にも買ってくれたと言った。そしたらなぜか! 先輩から例の言葉を言ってと言われた。まだそのフリすらしてなかったのに、エプロンって言ったら必ずやる儀式なのかな?

 恋人は先輩が初めてだから知らなかったけど、先輩にとって俺は、何度目かの恋人だろうし、必ずやってきたシチュエーションなんだろう。

 俺は恥ずかしくなった。

 確かに最近は先輩が好きと自覚して、好きの大安売りはしていた。だが、さすがに発情もしてないのに夜のお誘いをするのは恥ずかしいしハードルが高い!

 なんで俺、このエプロン着けてしまったんだろう。どうしよう、とにかくまだそのレベルに達して無い俺にはできそうにないから、やんわりと断った。

「えっ、でも、まだご飯作ってる最中だから、そのセリフは……お風呂もまだ湧けてないし……」

 付け合わせの野菜を切り始めた、それでもまだ俺のこと後ろから抱きしめているし。そしたら、その二つは選ばないから大丈夫だと言われた。俺は思わず笑ってしまった。

 恥ずかしいけど、でも先輩の希望にはなるべく答えたい、そう思ってしまうほど俺はオメガとしてこのつがいが愛おしくてしょうがない。だからそのセリフを言うと、言い終わる前に先輩がキスをしてきてそのままなし崩し的に寝室へと運ばれた。

「良太だ! お前が欲しいっ」

 そのセリフを聞いた時、俺も欲情したのがわかった。抑えきれない俺の花の香りが先輩めがけて飛んでいった。お前が欲しい、オメガには最高の言葉であった。

 恥ずかしいけど、一生懸命先輩がする行為に俺からも答えた。少し大胆だったかな、でも、でも好きだからいいよね……。

 俺は脱ぎ散らかされた服の中のエプロンを、先輩の下で喘ぎながらもじっと見た。

 ――相原君、ありがとう――

 そして二人のお腹がグウっと鳴って、二人とも笑ってご飯食べようって話になった。ほんの少しの情事だったが俺は最高に幸せを感じていた。

 さっきのトンカツを、カツ丼にリメイクするって先輩に話してから服を着ようとしていたら着るなって言われた。裸エプロンが見たいって。ああ、もうですか?

 でも一度はそうしたけど、恥ずかしくて料理できないっていったら、パンツだけ履かせてくれた。でもその間もずっと先輩のいやらしい目線を感じながらの料理は、拷問のようだった。

「先輩、いい加減、そのフェロモンしまってください! 僕、お腹空いているからご飯ちゃんと作りたい」
「ああ、悪かった。あまりに可愛くてつい欲情した」

 まあ俺に欲情してくれるのは嬉しいけど、でも、先輩って案外、変態? 男が裸エプロンだよ? 俺のつがい、大丈夫かな……。

 ちょっとこの先が不安になった。

 そしてご飯を先輩は美味しい美味しいって言って食べてくれた。俺は抱いてもらえて、ご飯を褒めてもらえて大満足だ。そしたら、先輩の目がまた怪しくなった。
 
 あれ?

「可愛い、さっきからずっとお前が可愛すぎて触りたくて仕方なかったんだ。ご飯を食べてる間は我慢するけど、それ終わったら触っていい? 裸なのにエプロンとか。チラチラ見える乳首もたまらない、その細くて白い足も」

 先輩が俺を見てうっとりしている。エロオヤジみたいなセリフっ! 恥ずかしいっ! 

 言っていることが変態っぽいけど、つがいだから許せる。俺は一生懸命ご飯を食べた、その夜は多分激しくなる。その予感しかしなかったから、途中でへばらないためにも体力は必要だ。

「僕もキッチンにいる時、先輩に見られていて、触って欲しいって思ってましたよ? だから、食事終わったら僕も先輩に触りたいな」

 先輩の喉が大きくごくりって言った、ちょっと怖かった。

 そして俺が食べ終えたのを見ると、そのまま抱きかかえられた。えっ、食後の休憩もなし?エプロンの上から乳首を掴まれた

「ひゃんっ!」
「可愛い!」

 俺の変態アルファは、その夜野獣と化したが、きちんと終わるとお風呂も入れてくれて、食器の後片付けもしてくれた。

 翌朝、起きると隣で微笑みながら、そしてあそこをギンギンにたせて俺を見ている先輩がいた。俺は裸の状態になぜかエプロンだけ丁寧に巻かれていた。

「おはよう良太、可愛いよ」

 確信した、俺のつがいは変態だ。
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