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第六章 本心
131、三度目の正直 4
しおりを挟む幸せな夢を見ていた気がした。ふいに寝過ぎたなぁと思って目を開いたら、思考が纏まらない。
あれれ?
ベッドに寝ていた横には俺をじっと見ている愛しい番と目が合った。とても熱い目線に少し戸惑った。セックスでもしていた……のか? 事後のような気怠さと、愛されて満たされた感覚に包まれていた。
先輩はふいに心配そうな顔で話しかけた。
「良太? どした、まだ辛い? もう少し、しようか?」
俺を引き寄せて、濃厚なキスをされる。俺は全くこの状況が理解できずにいたけれど、キスは嬉しいので何も考えずに先輩の口を堪能していた。
何だっけ? 今日はいつだっけ? 今の状況は……。
キス、気持ちいな。
「ん? もう発情が終わったのかな、匂いが薄くなっているね」
あっ、そうか発情していたのか。
でも先輩のキスは気持ちよくて、まだ続けて欲しいからそのまま俺からもキスを返しては、ごくんと溢れた水を飲み込む。この状況を終わらせたくなくて、俺はバカな嘘をついた。
「まだ発情してる、もっと、してください」
そのセリフを赤い顔をして言ったらしい。発情が終わったのはバレてるのにどうしても記憶にない部分が多いから、きちんと抱いて欲しいって思ってしまった。
「赤い顔して言って、可愛いな。いつもの恥じらいのある良太に戻ってるね。それじゃ発情終わってるのバレバレだよ、ふふっ、そんなに俺に抱いて欲しい?」
「意地悪言わないで……して欲しいから嘘ついたのに」
「はは、ごめんね、俺もお前をいつだって抱いていたいから嬉しいよ」
そしてそのまま俺の記憶に残る情事となった。俺はいつもよりも乱れた気がした。体が快楽を求めている、頭はしっかりしているからとても恥ずかしかった。
終わってベッドでまどろんでいる最中、俺は気になることを聞いた。
「先輩、僕のお世話凄くしてましたよね? あまり覚えてないけど、今回は所々お風呂やご飯を食べさせてくれてるのわかりました」
今回は食事をとった記憶さえ残っていた。
「俺も少し成長していたみたいで、初めての時よりきちんと良太の世話できたかな? いままで練習した甲斐があったな」
「ありがとうございます。僕の世話もそうだけど、ずっとエッチして先輩こそ体力大丈夫なんですか? ヒート明けてからもおねだりしちゃったし」
先輩はそんな心配は必要ないと言った。
ベータでは発情期を一緒に全うするのは無理だろうけど、アルファにはラットと呼ばれる発情があるから、オメガと一緒でその時は性欲に支配され続け、オメガの発情が収まらない限り、その体力はオメガ以上になるとの事……。
すげー、アルファ。
てことは勇吾さんと結婚しても、あの苦しい発情の波は治ることは無いのかな。そして勇吾さんはベータだから俺の発情に付き合い切る精力が無い?
結局は抑制剤で抑える発情を過ごすことになるの? 俺が不安な顔になると先輩は何を勘違いしたのか、見当違いの答えが返ってきた。
「俺は生涯、お前の発情に応える体力は維持する。お爺さんなっても鍛え続けるから安心して?」
「ふふ、お爺さんって、そんな歳まで僕を抱くんですか? その頃は僕だってしわくちゃのおじいちゃんで、見るに耐えられないかもしれませんよ?」
「俺はお前が年をとっても、たとえ事故にあって醜くなったとしても、愛し続ける自信があるよ」
「なんですか、それ」
俺は笑ってしまった。
「お前が身を隠しても、俺にはその匂いでお前を判断できる、そういうことだよ。見た目とか関係なしに愛している」
「僕、今とても幸せです。あなたを本当に受け入れた発情期だったから」
「俺もだよ」
「好き、本当に大好き、愛しています」
そして俺は自分から愛しい番にキスをした。
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