ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第六章 本心

128、三度目の正直 1

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 俺の行動でいろんな人を傷つけた。これからはなるべく大人しく生きようと、先輩を愛しつつも穏やかな日常を過ごしていた。

 無難に学園生活を送り、週末は勇吾さんの家に行く、前と何も変わらない。

 そして三回目の発情期はもうすぐだ。

 勇吾さんからはどうするって聞かれたけど、俺は先輩と過ごしたい。二回目の発情時は嫌で仕方なかったしジジイの意向で匿ってもらった。あの時からジジイは俺が先輩になびくのを避けたかったのだろうか、今となってはわからないけど。

「心配してくれてありがとう、先輩がもうマンションへ篭る準備してたよ。だから危険は無いと思う」
「そう、無理だと思ったらすぐに連絡するんだよ」
「あのさ、俺の発情期、今更聞くの恥ずかしいんだけど……どんな感じだった? 淫乱だと自分でも自覚してるんだ。だから正直あの痴態を見せるのは恥ずかしくてしょうがないし、本当は誰にも見せたくない」
「良太君、オメガなら発情期は当たり前にくるものなんだから、君がそんな風に考えなくていい。それにつがいならオメガのイヤらしい姿はたまらないと思うよ」

 俺は自分で聞いたのに、恥ずかしくてたまらなくなった。そんな俺に気づいた勇吾さんは、そっと自分に抱き寄せて耳元で話を続けた。

「わかってる? 僕は君の婚約者なんだよ。君を抱かせるのは辛いんだ。良太君の発情期を見てから少し君への見方が変わったんだ。君を早く抱きたいって思った」
「俺だって、勇吾さんに嫌な想いさせるのはしんどい。言葉に表せないくらいお世話になってるから、俺のことでこれ以上煩わしい思いはさせたくないとは、思ってる。ほんとにごめんなさい」

 勇吾さんは俺の額にキスをして、そして向き合った状態になった。

「僕は良太君が好きだ。たとえ今は他の男のものだとしても。だから好きな子のことで煩わしいなんてないから、困らせてごめんね」

 昔の俺なら勇吾さんのその言葉は自分が必要とされている、居ていい存在なんだって思えただろうけど、今の俺は先輩が好きで、先輩も俺が好き。俺のどうしようもない生い立ちさえなければ、障害さえなければ、今すぐに先輩だけのものになりたい。

 だけどもう決定している未来がある。

 俺が先輩を好きになったからって、一緒になれない。あと一年と少し、先輩と……好きな人と過ごせる時間を大切にして、それで全て忘れて勇吾さんに嫁がなければいけないんだ。

「勇吾さん、ありがとう。俺、幸せだよ、先輩の卒業までは我慢させちゃうけど、必ずその後は勇吾さんだけの存在になるから」

 勇吾さんが微笑んで俺の頭を撫でてきた。

「そろそろ発情期に入りそうだね、ホルモン値を見る限り、もうすぐだ。発情前はホルモンバランスが崩れるから不安になるんだよ? さあ君の王子様のところへと送り届けるとするかな」
「勇吾さん……」

 俺は勇吾さんの胸にすっぽりと自分から体重を預けた。

 先輩が好きで仕方ないけど、でも勇吾さんをとても大事だって思う心も本当だ。そんな俺の不安定な気持ちを察知したのか? 勇吾さんは何も言わず俺を抱きしめて、背中をぽんぽんってしてくれていた。

 俺は自然に涙が出て勇吾さんのシャツを濡らしてしまったが、勇吾さんはそのまま動かずにいつまでも俺を抱きしめて、大丈夫だよって言ってくれた。
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