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第五章 戸惑い
93、不安 4
しおりを挟むその後、先輩と食事をしてまた抱いてもらった。そして翌朝、送ってもらって家に帰る。勇吾さんと会うのが気まずかったけど、俺が何かを言う前に、勇吾さんから逆に謝られた。
医者として俺の不安定さは気づいていたが、今後またこういう時期を必ず迎えるのだから、まだ期間が短い今から、離れることを覚えさせた方がいいかと思ったと。
でもそれは間違いで、番になったばかりなので不安になるのは当たり前。それなのに一人で会いに行くまで追い詰めてしまって悪かったと。
勇吾さんは、俺の行動に罪悪感を覚えさせないように、自ら医者としての不甲斐なさを示して俺の自尊心を奪わない様にしてくれたんだと思った。俺は勇吾さんの気持ちに感謝を覚えて、言い訳をするのはやめて、そういう事にしておいた。
そして、先輩との話を少し伝えた。
先輩も不安になっていて連絡できなかったと言われたのと、勇吾さんに毎回体のチェックをさせているのは嫌なので、今後はゴムを使うと約束をもらった。
そしたら、勇吾さんはそんな話したの? と驚いていたから、体についた跡見られるのは恥ずかしいから付けないでとお願いしたから、その流れで勇吾さんは主治医だから体をチェックするって伝えたと言った。
少し違うが、それでいいだろう。
俺は心から安堵したのか、それとも体が番で満たされたからなのかはわからないが、いつもの俺に戻った。あの闇の底に落ちていくような、どうしようもない不安はいったい何だったのか。
さすがに勇吾さんには言えなかった。そんな話をして心配をさせるのはダメだ。今後の予定は絶対なのだから、俺の心を先輩の卒業までに強くするしかない。
夏休みはそうして大多数が過ぎていき、その後は週一回、先輩と会ってホテルで抱いてもらった。泊まりはなぜかジジイから許可が降りなかったからだ。何故だろう? でも先輩ももう無理強いはせず、学校が始まれば毎日一緒だからってそこは譲歩してくれた。
そして夏休みの間に、ジジイに呼ばれて俺と勇吾さんは桐生邸へと向かった。
「良太、夏休みは楽しんでいたようだね」
ジジイ、どこまで知っていやがる。いや、どこまででも知っているんだろうな。
「はい、いろんな経験をさせてもらいました」
「そうか、岩峰君も色々とありがとう。さて、次の発情期がもうじき始まるね、上條君とは仲良くやっているか?」
「………」
俺は何も言えない、どうせ全て知っているこのジジイに隠し事などできないが、そんな俺を察してくれた勇吾さんが俺に微笑んで和ませてくれた。
「総帥、良太君は自分の本分をわきまえて、頑張ってくれていますよ」
牽制された気がした。
「そうか、それは良かった。ところで岩峰君、良太の次の発情期は時期を早めて夏休みの最後の日に、発情させなさい。そして学園に戻らずに、君の家で発情期を迎えさせてくれないか」
「えっ」
「総帥、それは、どういうことですか……」
俺の不安は、終わらなかった。
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