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第四章 番
77、閑話 〜初めてのスパイ活動〜
しおりを挟む先輩は、いつもリビングで仕事をする。書斎があるのに、あっちの部屋は相変わらず資料とか荷物とかでいっぱいだ。
今日もリビングでは、先輩がパソコン見ながら電話をして資料について話しをしている。まるで会社で仕事をしているかのような空間になる。そういう時は、俺がいて邪魔じゃないのか心配になって聞いたことがある。
そしたらむしろ隣にいて欲しいって。同じ空間に居ないと不安になるとか……乙女か!?
俺を他人に見せたくないし生活の場を晒すのも嫌だから、ネットを介して顔を写しての会議はしないって。安心して隣にいてって言われた。
普段、俺はソファの下に座って目の前のテーブルに手をついて、ソファを背もたれがわりにして勉強する。仕事は先輩がいると落ち着かないから、生徒会の用事で部屋にいない隙にしている。
俺が勉強している時、先輩は隣に座ってパソコンを置いて仕事をするか、ソファに座りながら下に座っている俺を撫でてタブレットを読んだりしている。
たまにやらしい手つきで触ったりしてくるから、実は嫌だったりもする。
でも勉強中、ふと俺のノートを見てここが違うとか指摘してくれるのは有難い。そのままちゃっかり勉強を教えてもらったりもする。アルファのくせに教え方も上手だし、家庭教師としては最高だ。
「先輩に教えてもらうと勉強が進んで助かります! でも仕事の邪魔になっていませんか?」
「いや、俺も息抜きになるよ。それに教わっている子が優秀だから、教えるのも楽しい」
そのような会話になるわけで、先輩が苦痛じゃないなら俺は利用させてもらっている。
こんな風に勉強を教えてもらうので、感謝の気持ちを言うと、必ず、じゃあご褒美って言われるんだ。ご褒美? でも俺に与えられるものなんてたかが知れているし、困っていたら首元にキスがくる。
「これでいいよ、良太にキスをする、俺はこのご褒美があればやる気がでる」
そしていちゃついてくるオマケ付だ、だからあまり教えてもらわないようにしている。いちいちくっついてくるのも面倒くさいから。
そして今、先輩がソファに座っていて、難しい顔でパソコンに向き合いながらスピーカーで話をしている。英語だった。でも、俺、英語わかるんだよね、こっそり聞いていると仕事関係の話で医療系の内容だった。これってもしかしてジジイへの手土産になるかな?
俺はついにスパイ活動をしてみようと思った。開いているパソコンの画面も気になるし。コーヒーが入ったマグカップをニ杯持って、テーブルに静かに置いた。
先輩は話しながらも俺を見て、目でありがとうって答えてくれた。だから俺はそのまま隣に座って、俺の分のコーヒーを飲んだ。話の内容に聞き耳をたてているけど、実際俺には全く理解できない医療系の内容だったので、会話は諦めた。
次にパソコンの中身だけでも何か重要な案件でも隠されていないかと思い、覗くことにした。でもただ除いても思いっきり怪しいので、先輩にくっつくふりしてみてやろうと思った。
俺は今から、馬鹿なオメガになるんだ! そう自分に言い聞かせて、甘える風を装い自然にスパイ活動に専念する決意した。
先輩の片方の腕に手を回して、くっついて座り、腕に頭を預けて、よし! この場所ならパソコンをわざと覗いているのがバレない。横から抱っこちゃん状態。
ただ、目の前にパソコンがあるってポジションだ。先輩の方に顔を傾けて体重を預けてみた。ふむふむ、これは統計? なんのだろう、とじっとパソコンを見ていたら、先輩は慣れない光景に驚いたのか、少し固まっているのが感じ取れた。
「どうしたの!? っ良太」
スピーカーにしていたので、向こう側の人が先輩の急な大声に、どうしたっていう声かけてきた。だから俺は一旦顔を上げて先輩を見上げた。
シーって、俺は指を口に当ててジェスチャーした。
「甘えているだけ、仕事続けて?」
小声でそう囁いて、そのまま胸に体重を、預け……られない!?
先輩が急いで電話を終わらせて、そのまま俺をソファに押し倒してきた。
「ひゃっ!?」
俺はさっきまでまったりモードだったのに、いきなり世界が反転してビビった!
「良太! 寂しい思いをさせてすまなかった」
早急に唇を貪られて、反論する言葉も出せないまま、うん。なし崩しだ。俺の行為を寂しかったがための行動にとられてしまった。
「はんっ あっ、あっ、だめっ」
「だめじゃないだろう? 愛しているよ」
そのまましつこいくらい念入りに、夜中に突入するまで抱き続けられたのは言うまでもない。
ああ、俺のスパイ活動が!
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