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第四章 番
68、番として 3 ※
しおりを挟む「えっ、あっ、ごめん、触ったらまずかった? 桐生君のうなじ、本当にガッツリ噛み跡があるなって」
そこで空気が一瞬で変わった。
なぜかって? それは俺の最愛の番様が仁王立ちしてこっちを見ているからだ。明らかに怒っていらっしゃる。怖い空気を纏いながらこちらに歩いてきた。
「他の男にうなじ触らせて、何やっている?」
なぜ俺が怒られる? 触らせたんじゃなくて、触られたんだけど……。でも、俺を触ってしまった片岡君は震えている。
あっ、きっと先輩のフェロモンが片岡君に向けられているんだ。可愛そうに、何も知らないベータにそんな殺人的オーラだすなよ……。
「おい桜、俺の恋人がビビってる! そんな凶暴なフェロモンを浴びせるな! 優、よしよしお前はベータだから、番持ちのうなじ触っちゃダメなんて、知らなかったよね? ごら! 桜やめろ、それ。もういいだろう」
先輩の隣にいるのは、片岡君の恋人、先輩の同級生のサッカー部エースか。
そうか、この二人は付き合っているんだったな。すかさずエースが片岡君を抱き寄せていた。片岡君、泣いちゃっているよ? かわいそうに。先輩もそれを見て相手は男ではないと判断したのだろう、フェロモンが落ち着いた。って、それも酷いな。
「うう、翔、ごめんなさい、俺知らなくて。生徒会長ごめんなさい……桐生君もごめんね」
「ううん、僕もうなじ触られるのが、こんなにダメだったなんて知らなかったから、もともとベータ同士だったし気にしないで。あっ、ところで先輩は、このクラスに何か用事でもあるんですか?」
そう言ったら、先輩は呆れた顔をしてきた。そして、本物の凶悪なフェロモンを俺だけに浴びせてきた。
「ふぁっ、ん? な、なに……これ、」
先輩から凄い香りがしてきたと思ったら、力が急に抜けて、腰を抜かしてしまった。倒れそうになる手前で、先輩に腕を掴まれると俺は発情した。
なんで? こんな教室で、どうしよう、俺、やばいオメガじゃん! なんだよ、これ。涙目になって先輩を見上げると、先輩は笑っていた。
「ほら良太、こんなところではしたない顔をしたらダメだよ。おいで、歩けないでしょ? 抱っこしてあげるからね、うなじの重要性を理解しない子にはお仕置きだよ」
俺を抱き上げた先輩の肩に、頭をもたれかけた。その間も触れ合っている肌が、服で擦れるその感覚が、ざわざわっとして快楽を拾ってしまいそうになった。必死に理性で抑えてふうふう言って我慢した。
「すまないが、番の体調が悪くなったので午後の授業は早退する。先生に伝えといてくれるか? それから翔、その子も早退させろ。俺のフェロモン浴びたから、授業どころじゃないな、お前も休め」
一年のアルファに先輩はすぐに声をかけ、俺の早退を伝えた。そして片岡君も再起不能らしく、恋人に連れられて出ていった。
俺は必死に、勃ち上がるそれをなんとか萎えさせそうともがきながら、先輩の腕に捕まって抱っこ状態で、寮まで連れて行かれた。
「あん んん ふぁっ」
気付けば俺はベッドの上で先輩に組み敷かれて、ある部分が繋がったまま上下に揺すられて喘いでいた。ここまでの記憶がぷっつり切れていた。
確か教室で発情してしまい、そのまま抱きかかえられて、次に自分の喘ぎ声とか……。本当にオメガという性に嫌気がさす。
「ふぁ、あっ」
その間も快感は続く、もう嫌だ、嫌だ、嫌だ、気持ちいい、でも嫌だ。
あの時、自分の意思もなく突然に快楽が襲って、みんなの前なのに立てないくらい腰をぬかしてしまった。それに最中のことも全く覚えてないくらい、セックスにのめり込んでいるこんな自分が本気で嫌だ。
「ん、ぐすんっ、ふぁ、ひっ ひぁっっ、」
俺は本気で泣き出した。
そしたら先輩が慌てて動きを中断して、俺の顔を両手で挟み心配そうな顔で見ている。心配するなら、まずはそのデカイモノを俺の中から取り出せよ、と思いながら俺は涙が止まらない。
「良太、痛かった? どうした? 意識戻ったね、大丈夫だよ、抱いているのはお前の番の俺だ、怖かったか」
なにが大丈夫だ……。一番ダメなやつだろ。
なんで意識ない相手を抱いていたんだよ。一瞬涙が止まった、そしたら後方に入っているモノがでかくなり、俺は思わず感じてしまった。
「んん、あぁ、や、やめて それ、だめ、抜いて……」
そんな言葉は受け入れてもらえず、そこから止まっていた先輩の動きが再開され、スピードを増すと、俺は耐えきれずイッた。
「ああぁぁっっ」
俺の精液は腹に吐き出され、そして直後に先輩は俺の中に精を吐き出して、長い時間かけて出し切るとやっと抜いてくれた。
ほんとに鬼畜だ。昨日は抱くのはゆっくり待つって、同意しないと抱かないとか言っていたのに、翌日にはもうこれだ。俺の発情を同意ととるのか?
じゃあ、俺が悪い? ようやく終わった情事の激しさに、はぁはぁと息切れをしながら事後の気怠さの中、考えていた。
「良太、うなじを他の男に触らせないで? これはダメなやつだよ。俺以外が触って気分悪くてなっただろう。もう俺の匂いが濃くなったね、これで安心だ」
「……」
どういうことだ? 他の奴にうなじを触られたから、マーキングする必要があった?
アルファの行動を俺はもっと勉強するべきだろう、どこに地雷があるのかが全くわからない。抱かれた後の気だるさもあるけど、どうしようもなく腹が立ってきた。
こうやって、知らないうちに抱かれるのを、普通のオメガなら喜ぶのだろうか……、疑問だ。
押しのけて、無言でベッドから降り服を探した。そうすると、まぁ想像通りの行動がおこる、腕を掴まれて後ろから抱きしめられた。
「どうしたの? 午後の授業は休み申請出しておいたから、大丈夫だよ。もう少し、しよう?」
「しません! シャワー浴びます」
「良太は綺麗好きだね! じゃあ一緒に入ろう」
先輩はクスクスと楽しそうに言葉を返す。
「先輩入りたいなら、お先にどうぞ」
「発情中は甘えんぼうなのに、意識戻るとしっかりしちゃうね、残念だな」
言われている間も、胸を後ろから触られその刺激され自然に声が出てしまう。もうこんないやらしい自分が嫌でしょうがないのに。
「あ ん もぉ…やめてください、午後は楽しみにしていた授業があったのに。ただでさえ勉強は遅れているし、成績が下がっちゃう」
「良太は頭がいいから大丈夫だよ」
「それに発情期は終わったはずなのに、なんでまた発情を? 僕の体、変ですよね。みんなの前で発情なんて、オメガなんてもう嫌だ」
「ああ、違う、そんなこと言わないで。もちろん発情は発情期だけだ、番だけがオメガの発情を促せられるフェロモンを出せるんだ。俺を怒らせたお仕置きだったんだよ?」
「な……にそれ、みんなの前で僕を淫乱にしたいんですか?」
「えっ、いや、違う。もちろん俺の前ではエロい良太だけど、みんなには番の俺に甘える可愛いオメガにしか見られてないよ、安心した?」
「……なにが、安心ですか? 先輩といたら、僕は先輩が好きな時に、たとえ人前でもヒートを起こさせられるってことですよね?」
今度は俺が怒る番だった、先輩は俺が急に機嫌悪くすると戸惑うみたいだ。
「先輩の怒るポイントがわからない! お仕置きだって言って、所構わずアンアン言わされて、僕は……学園中の生徒から変な目で見られるんですよね?」
「お前の口からアンアンとか、やばいな。あっいや、違う!」
ますます、怒りがこみあげた。
「とても耐えられない! 先輩の前でだって、自分がなくなるみたいな行為も慣れないのに、それをみんなの前でしろって、そんなの、酷すぎます……ぐすっ、ふっ、ぐすんっ」
先輩がおろおろしだした。
「俺がお前のそんな姿を人に見せる訳ないだろう? 発情させたけど、すぐ抱きかかえてお前の顔も上着をかけて隠した。だから誰もお前が発情しているなんて思ってないよ」
俺は死んでもいいから、番なんて断ればよかったのか? そんな屈辱を味わいながら生きていくなんて、辛すぎる。
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