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第三章 幸せへの道
65、閑話 〜白崎忍の家庭の事情〜
しおりを挟む「あ――。もう疲れたよぅ。今日も桜にこき使われた!」
「忍、うるさい。たまに帰ってきた時くらい、大人しくしてよね」
桜の家からぐったりとして実家に帰ると、そこには俺の最愛の女がいる。
「うぉ! さっちゃんいたの?」
「いたら悪い?」
「ううん! 嬉しすぎて疲れが吹っ飛んだよぅ」
「ふふっ、素直でよろしい」
「んちゅぅ、んちゅっ、ベッド行こう」
「やめて! 何盛ってんの? 今は朝よ」
俺はさっちゃんにキスをしまくって、まだ朝だけどベッドへ誘う。番が目の前にいるのに、朝とか夜とか関係なくね? 俺はやりたい盛りの男子高校生!
「え! 抱きたいっ、抱きたいっ、抱きた――い」
「忍、朝から節操ないぞ。さつきちゃんが困っているだろう、やめなさい」
朝から玄関先で騒いでいたら、ちょうど親父が出勤のため、家を出るところだった。
「お義父様! 今日も素敵! あっ、ネクタイが」
そう言って、さっちゃんは親父の胸元に触る。そしてお決まりだけど、俺の母さん登場!
「さつき! 俺の旦那に気安く触るな!」
「うるさいな、減るもんじゃないでしょ! マジ姑うざいぃ!」
「お兄ちゃんと言いなさい!」
「はい、はいはぁい! お義父さま、今日もお仕事頑張ってねっ、んちゅっ」
「さっちゃん――!?」
さっちゃんが親父のほほにキスをした。我が家の名物、カオスの朝。俺の母は男オメガ、そして父は男アルファで、二人は夫婦で番だ。
それから我が家をカオスにしているのが、俺の最愛の番で婚約者のさつき。女オメガでなんと母さんのひとまわり年下の妹、だから俺の叔母さんにあたる。でも俺の番だ!
七歳上の年上女房さ! エロイ響き。
さつきは、昔から親父が好きだったらしい。子供の頃から家に出入りするアルファは、さつきの一回り離れた兄である恋人に会いにきていただけ。でもさつきは恋をしてしまった。
さつきの恋敵であったのは、俺の母さん。それでも親父への愛は止まらなかった。
でも俺が生まれると、さっちゃんは親父に似てくる俺にべったり。俺も物心ついた頃から近くにいたオメガがさっちゃん。子供の頃からさっちゃんに狙われていたわけよ、んで、さっちゃんのヒートに誘惑されて、俺は番にしちゃったの。十三歳の時にね、童貞アルファがいきなりヒートオメガ前にしたら、うん、壮絶。
でも俺は幼い頃からさっちゃんが大好きだったから、問題ない。
さっちゃんも俺を愛してくれているし、親父への愛はもうすでにただのパフォーマンス。それに惑わされていちいち反応するのが母さんだけ。でも母さんの嫉妬を喜ぶ親父は、それをやめないでと、影でさっちゃんにこっそりお願いしていた。
う――ん。みんな、歪んでいるよね!
俺は楽しくて快楽が多ければ問題ない。毎日楽しいからいい! でも自分の番があまり親父にベタベタするのはやっぱりイラってするから、ベッドでお仕置きはするけどね。さっちゃんは俺にお仕置きされたくて、やっているのがバレバレ、そこも愛らしいけど。
母さんもなんだかんだ言って、さっちゃんのことは可愛い妹だから、この毎朝のバカなやりとりもそこまで気にしてない。
うちの家族は基本、ゆるゆるなんだよね。このゆるさ、少しは隣のガッチガチな上條家一人息子に分けてあげたいわ。
桜には、子供の頃からさっちゃんのことをずっと話していた。
番になる前から、実は大好きでたまらなかった。さっちゃんは、自分から誘って既成事実を作らせたみたいに思っているみたいだけど、実は俺の方からさっちゃんのヒートを誘発させた。アルファとしてフェロモンを出せるようになって楽しくて、さっちゃんを意識的に誘ってみた。そしたらひっかかった!
さっちゃんのヒートの日も、抑制剤を隠して二人きりにする状況を作り、俺を誘うように誘導した。
これが俺の秘密。
だって十三歳の子供が襲われた方が、大人は逃げられないでしょ。俺はすでにさっちゃんって決めていたから! 母さんは激怒したけど、俺の愛で、さっちゃんを包んで両親を説得したら、さっちゃんは改めて俺に惚れてくれたし、めでたし!
あとは俺が十八歳になった時、入籍するだけ。でも、実は今さっちゃんのお腹には俺の子供が育っている、計画的に孕ませた、そしたら絶対に逃げられないでしょ。
俺が十三歳で番にしたのも、まだ高校生の今、さつきを孕ませたのも、全て俺の計画だったんだ。さつきは今二十四歳だから、妊娠は問題ないでしょ?
さっちゃんは、俺に丸め込まれただけなのに、自分からそう仕組んだって思い込んでいるところがめちゃくちゃ可愛い。
したたかな女ではあるけど、俺がその上をいっている。俺の番はちょろくて、エロ可愛いんだな。
あぁ! 桜の面倒さえなければ寮暮らしなんてやめて、さっちゃんと暮らしているのに! 今は週末だけ実家でさっちゃんと過ごしている、平日も学園抜け出して、ちょいちょい抱きに行くけどね。
桜の問題が片付くまでは穏やかに暮らせないか。でも、あの二人は一緒の部屋になって一ヶ月で番契約を果たした。すげぇ早い展開だったわ。
ってかさ、桜のやつ俺のシチュ真似ているよね? あのあどけない桐生少年をまんまと丸め込んで、まるで桐生君のヒートで自分は抗えないラットを起こしたみたいに持っていったけどさ、あれ相当な計画的な発情誘導だからね? 桜の自作自演。
そんな素直な桐生君は、騙されているとも知らずに自分のせいだと罪悪感を植えつけられている。今はギクシャクした関係だと言っていたけど、でも彼の性格からして桜に懐柔されるのも時間の問題だな。あの二人はきっと上手くいくだろう。そう思って、俺は今日も番を愛でた。
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