ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第三章 幸せへの道

56、今後の話 4

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 ジジイの話によると、先輩は俺を本気で好きらしい。

 そしてあの執着具合をみると、先輩の運命であるうんぬん話は多分真実だろうと。

 俺はそんなの感じないと言ったら、強い薬の作用でアルファの一切を感知できなかったからだろうと勇吾さんに言われてしまった。

 アルファ嫌いの俺が、なぜか先輩にだけは最初から違和感を覚えなかったのは、運命の作用だったのだろうとも。ジジイとしても俺が先輩を好きなら、何かしら桐生の利益になる契約をし、つがいのまま俺を上條に渡すことも考えていたらしい。ただで俺を譲る気はなかったみたいだけど。

 そして仮に、俺が嫌がるなら別れさせる方針だったと。別れるも何も、付き合って無いけどな!

 俺を死なせないように手はずを整える準備もあった。そして勝手につがいにしてしまった先輩を懲らしめる……のも忘れないと言っていた。

 どちらにしても契約を交わして、先輩に不利益をかぶせるつもりだったらしい。可愛い孫? を好き勝手されたのが許せない、そこがジジイの本心みたいだ。

 意外に負けん気が強いな。実は今日の顔合わせより前に、俺がつがいにされたと聞いた時点でいろんな想定をして、新たな話が勇吾さんと纏まっていたらしい。

「そういうわけで、お前が嫌なら無理にとは言わないが、儂の希望は今言った通りだ。どう思った?」
「……」

  俺は少し困って勇吾さんを見た、勇吾さんも曖昧な笑顔を向けてきた。

「君の意志に従うよ。研究が続けられるし君を一番近くで支えられるから、僕はむしろ嬉しいくらいだよ? 僕の気持ちはさておき、君の考えを言うといいよ」

 俺は戸惑いながらも、少し不器用に微笑んで、二人に答えた。

「勇吾さんが嫌じゃないなら。少し、恥ずかしいけど……勇吾さんなら最善だと思います」
「そう? それは良かったよ」

 勇吾さんが隣で微笑む。

「むしろ僕は、アルファに嫁がなくて良くなったなら、先輩に噛まれたことは結果良かったです。それに今度こそ治験にきちんと協力できるし、お爺様も勇吾さんも、これで本当にいいんですか?」
「儂は良太が良いならもちろん構わない。ただ二年後、とても辛い経験に耐えなければいけないよ、これだけは覚悟してくれ」

 ジジイが真剣な目で俺に向かって言う。

「良太君、僕も精一杯サポートするから一緒に乗り切ろう。二年後までになんとしても薬の開発を間に合わせるからね」

 優しい人達に支えられて、新たな俺の人生が決まった。ここから先輩が卒業するまでの二年が勝負だ。

 俺の最初の試練が始まるのだった。
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