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第二章 運命
33、発情 3 ※
しおりを挟む『ふ…んん……ああ……あっ、イクイク……あ、ああぁ!』
『あん、もうだめ……』
『キスして、口に甘いの、飲ませて!』
『だめ、だめだめ、お願い噛まないで。いや!』
『ああ、噛んで。噛んで、番にして……』
まどろむ意識の中、自分のセリフがたまに頭に入ってくる。何しているんだっけ。
ああそうだ俺はアルファに抱かれているんだ。
『良太愛してる、愛してる、好きだよ、ずっとお前だけ……』
途中甘く低い声が脳天に響いてくる。ああ俺は愛されているんだ。そんな安心感を覚えながら、自分は喜んでいた気がする、そしてまた快楽の中に身を委ねる。
その行為中、一度だけ目の前がチカチカするような、全身を電流が駆け巡るような抗え切れない快感を得た。常に快感に堕ちてはいたが、本当にこの男と繋がった、この男が俺だけのものになったんだって、心まで満たされた瞬間があった。
俺を愛しているって、ひたすら囁くこの男の全てを受け入れた瞬間だった。
サンダルウッドの香りに包まれて、俺自身の出すローズゼラニウムと混じり合えば、それは不思議な香りとなり、二人をより一層深く繋げるようであった。
お互いの強い香りが混じり合い、他の誰もが入り込めない、そんなわがままな香りの融合。
この中にいればどんな辛いことも起きない。ずっと、このまま、この中にいればいいんだ。
ああ、やっと俺は安心できる場所を見つけられた……。
「この香り、好き」
「俺のフェロモン?」
フェロモンって、何だっけ。
「フェロモン? わからない、でも白檀……サンダルウッドだよね? 俺の大好きな匂いだ」
「良太の香りも最高だよ」
「ふふっ、俺なんの香りがする?」
「うーん、なんかのハーブ? 薔薇に近いよね、でもそこまで主張が強くなくて可愛いな」
「ローズゼラニウムだよ」
「ローズゼラニウム? 良太は自分のフェロモン知っていたの?」
そうだ、これは……母さんの香り。
「ううん、でも、俺が発情したらこの匂いになることは知っていたんだ。お爺様が言ったから。俺の母さんもお婆様もローズゼラニウムだったって。きっと俺の香りもそうなるんじゃないかって。オメガなんて嫌だって思っていたけど、大好きな母さんと同じ匂いになれたことだけはすごく嬉しいっ!」
「オメガ、嫌なの?」
「うーん、わかんないやっ。今はアルファに包まれてすごく気持ちいいし、母さんと同じ匂いだし」
「俺に包まれて嬉しい?」
嬉しいよ、この香り凄く好きだもん。
「うん。この匂いほんと好き、落ち着くし安心するね」
「そうか、一生俺の香りだけを感じていたらいいよ。もう離さないからね」
「うん!」
このまま俺は目の前のアルファに身を任せればいい。オメガに抵抗することなんて所詮できない。こうなるべきしてこうなったと、なぜか納得していた。
「あっ、気持ちいっ、それもっとして」
「ああ良太、お前を抱くのは俺だけだ。お前のいい所を知るのは俺だけだからな! 愛している、良太」
「あんっ、イイっ!」
大丈夫だ、この人は俺を傷つけない。ひたすら気持ちよくしてくれる。この男は俺のためなら、なんでもする。そんな自信すらあって、意識が浮上しては、また深い海の中へ落ちていく。
それは数秒のことなのか、それとももう長いこと日にちが過ぎているのか。永遠のような、一瞬のような。
そうだ、もうこの男から逃れられないんだから……ん? この男って、一体誰なんだ? でもそんなのどうでもいいか。
俺だけのアルファが目の前にいる、それだけでいい。
俺だけの香り。
俺だけの……。
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