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第六章 愛になった
87、アストンとフィオナ
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穏やかな午後のひととき、俺とディーは二人きりで日差しが優しく入る部屋でキスをしていた。すると無遠慮にドアが開いた。
「よぉ、お二人さん!」
「ん、んぶっ、んちゅん、ア、アチュ、トン!?」
キスの最中にアストンが乱入してきて、キスをしながらドアの方を見たら、変な声が出てしまった。
「おお、熱いなお二人さんは。そういえば、前にも街の中で二人すげぇ、濃厚なキスしてたよな」
アストンが楽しそうに大声で話すと、唇を話したディーが不機嫌な声で言う。
「アストン、邪魔だ」
「ふざけんなよ、俺が夜通し馬を走らせて伯爵夫妻を訪ねて、フィオナまでここに連れてきてやったのに、それはないだろうよ」
「その割には、来るのが遅い! 何日かかってるんだ」
「来てやっただろう! ほら、ご所望の俺の嫁も連れて来たぞ」
アストンの大きな体の後ろから、控えめにフィオナが顔を覗かせた。
「殿下、シン君。お二人の誤解は解けたみたいですね」
「フィオナ!」
「シン君、いい顔してるね。なんだか安心しちゃった」
「……フィオナ、沢山心配させてごめん」
「ううん、二人が幸せそうにキスしているのが見られて、すごく嬉しいよ」
うっ、フィオナも見ていたのか。恥ずかしいな。
「フィオナ、遠いところ悪かった。アストン、お前はもういい」
「おいおい、こっちはやっとフィオナを抱き放題なのに、二日で切り上げて来てやったのに、その言い方はないだろうよ!」
「私はまだシンを抱けていないのに、お前だけ嫁を味わったんだ。もういいだろう」
「まだ足りねぇよ」
アストン、フィオナを二日間抱いていたんだね。フィオナが赤い顔してるし。
「とりあえずアストンは黙れ。フィオナ、体は大丈夫か? アストンからこれからのことは聞いたか?」
「お気遣いすいません。大丈夫です……。これからシン君が王都へ戻るまでこちらで一緒に過ごすということですよね」
俺が王都に戻るまで?
「やっぱりフィオナはもうこっちに住むのか? アストンの屋敷に?」
「うん、そうだよ。閨係は卒業したし、アストンも爵位を継いだから僕はこれからアストンと結婚するんだ」
「そうか、それは、おめでとう!」
「ありがとう、だから僕がシン君と一緒に過ごせるのはあと少しかな。なんだか寂しくなっちゃうね」
「え」
「君は王太子妃になる身分だよ。僕なんかが手の届かないところに行ってしまう。もうすぐお別れだよ」
そんな、そんな、王家に入るってことはそういうことなのか? そんなの……。
「ディー、そうなの? 俺はもうフィオナに会えないの?」
「……会いたいか?」
「会いたいよ、俺、フィオナは一生の友達だって思ってる。フィオナは違うの?」
俺は泣きそうな顔でフィオナを見たら、えっ、フィオナ泣いてるし。そんなフィオナを抱きしめたアストンが気まずそうにしていた。
「シン。フィオナを泣かすのはやめてくれよ」
「アストン、ごめん。僕シン君をずっと騙してそばにいたのに、全てを知った今でもシン君は僕のことを友達だって言ってくれて、嬉しくてっ」
フィオナ。俺は騙されたなんて思っていないのに、フィオナは秘密を言えないまま俺のそばにいて、ずっと苦しんでいたんだ。
「フィオナ、良かったらこれからもシンの友達でいてやってくれないか? 王族になったら自由は少なくなるが、それでも私は幼い頃から立場関係なく、アストンと親しくしていた。友でいることにはなんの縛りもない。できれば線を引かずに、今までどおりの関係性でいてあげてほしい。私からもお願いする」
「殿下……ありがとうございます」
ディーとアストンが友達って、とても納得できた。そしてフィオナの恋人がアストンだなんて、この繋がりに感謝した。皆それぞれに人を思いやり、立場を思い、それでも熱い想いがある。
「俺、フィオナに騙されたなんて思っていないよ。むしろ凄く支えられた。俺が嫉妬に醜くなっている姿も見たのに、それなのに俺を諌めて側にいてくれた。俺はこれから分不相応な立場になる。それが怖くもあるんだ。ディーを愛しているけど、それ以外はてんでダメで、また間違ったことをしてしまうかもしれない。そんなとき、俺にはフィオナが必要だし、これからのフィオナもほしい」
「シン君……ありがとう。僕は歳上なのに君の怒りに僕も本気になって怒っちゃったよね。僕こそ偉そうにしたのに、受け入れてくれてありがとう。まだ友達でいてくれる?」
「ずっと友達だよ」
俺たちの友情は不器用に始まったばかりだった。
「よぉ、お二人さん!」
「ん、んぶっ、んちゅん、ア、アチュ、トン!?」
キスの最中にアストンが乱入してきて、キスをしながらドアの方を見たら、変な声が出てしまった。
「おお、熱いなお二人さんは。そういえば、前にも街の中で二人すげぇ、濃厚なキスしてたよな」
アストンが楽しそうに大声で話すと、唇を話したディーが不機嫌な声で言う。
「アストン、邪魔だ」
「ふざけんなよ、俺が夜通し馬を走らせて伯爵夫妻を訪ねて、フィオナまでここに連れてきてやったのに、それはないだろうよ」
「その割には、来るのが遅い! 何日かかってるんだ」
「来てやっただろう! ほら、ご所望の俺の嫁も連れて来たぞ」
アストンの大きな体の後ろから、控えめにフィオナが顔を覗かせた。
「殿下、シン君。お二人の誤解は解けたみたいですね」
「フィオナ!」
「シン君、いい顔してるね。なんだか安心しちゃった」
「……フィオナ、沢山心配させてごめん」
「ううん、二人が幸せそうにキスしているのが見られて、すごく嬉しいよ」
うっ、フィオナも見ていたのか。恥ずかしいな。
「フィオナ、遠いところ悪かった。アストン、お前はもういい」
「おいおい、こっちはやっとフィオナを抱き放題なのに、二日で切り上げて来てやったのに、その言い方はないだろうよ!」
「私はまだシンを抱けていないのに、お前だけ嫁を味わったんだ。もういいだろう」
「まだ足りねぇよ」
アストン、フィオナを二日間抱いていたんだね。フィオナが赤い顔してるし。
「とりあえずアストンは黙れ。フィオナ、体は大丈夫か? アストンからこれからのことは聞いたか?」
「お気遣いすいません。大丈夫です……。これからシン君が王都へ戻るまでこちらで一緒に過ごすということですよね」
俺が王都に戻るまで?
「やっぱりフィオナはもうこっちに住むのか? アストンの屋敷に?」
「うん、そうだよ。閨係は卒業したし、アストンも爵位を継いだから僕はこれからアストンと結婚するんだ」
「そうか、それは、おめでとう!」
「ありがとう、だから僕がシン君と一緒に過ごせるのはあと少しかな。なんだか寂しくなっちゃうね」
「え」
「君は王太子妃になる身分だよ。僕なんかが手の届かないところに行ってしまう。もうすぐお別れだよ」
そんな、そんな、王家に入るってことはそういうことなのか? そんなの……。
「ディー、そうなの? 俺はもうフィオナに会えないの?」
「……会いたいか?」
「会いたいよ、俺、フィオナは一生の友達だって思ってる。フィオナは違うの?」
俺は泣きそうな顔でフィオナを見たら、えっ、フィオナ泣いてるし。そんなフィオナを抱きしめたアストンが気まずそうにしていた。
「シン。フィオナを泣かすのはやめてくれよ」
「アストン、ごめん。僕シン君をずっと騙してそばにいたのに、全てを知った今でもシン君は僕のことを友達だって言ってくれて、嬉しくてっ」
フィオナ。俺は騙されたなんて思っていないのに、フィオナは秘密を言えないまま俺のそばにいて、ずっと苦しんでいたんだ。
「フィオナ、良かったらこれからもシンの友達でいてやってくれないか? 王族になったら自由は少なくなるが、それでも私は幼い頃から立場関係なく、アストンと親しくしていた。友でいることにはなんの縛りもない。できれば線を引かずに、今までどおりの関係性でいてあげてほしい。私からもお願いする」
「殿下……ありがとうございます」
ディーとアストンが友達って、とても納得できた。そしてフィオナの恋人がアストンだなんて、この繋がりに感謝した。皆それぞれに人を思いやり、立場を思い、それでも熱い想いがある。
「俺、フィオナに騙されたなんて思っていないよ。むしろ凄く支えられた。俺が嫉妬に醜くなっている姿も見たのに、それなのに俺を諌めて側にいてくれた。俺はこれから分不相応な立場になる。それが怖くもあるんだ。ディーを愛しているけど、それ以外はてんでダメで、また間違ったことをしてしまうかもしれない。そんなとき、俺にはフィオナが必要だし、これからのフィオナもほしい」
「シン君……ありがとう。僕は歳上なのに君の怒りに僕も本気になって怒っちゃったよね。僕こそ偉そうにしたのに、受け入れてくれてありがとう。まだ友達でいてくれる?」
「ずっと友達だよ」
俺たちの友情は不器用に始まったばかりだった。
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