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第六章 愛になった
85、結婚にむけて
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「アストンはどうした? そなたたちを呼びにいって、一緒にこちらに来たのではないか?」
「ああ、アストン殿でしたら、やっと解禁されたと喜んで、フィオナ殿を連れて馬で先に屋敷へと戻ってしまいました。私たちは馬車で来たんですよ」
「そうか、アストンは……今頃フィオナを抱いているな」
「抱いていますね……」
「ええ、そりゃぁ、抱いておりますよ」
なんの話だよ。三人揃ってアストンがフィオナを抱いている話になってしまったよ。アストン、君の行動が全てばれているみたいだよ。
でも二人もやっと結ばれるときがきたんだな。俺は素直に嬉しかった。フィオナはひとり秘密に耐えて後宮で過ごしていたんだ。それに俺のことを考えてくれたり、会えないアストンを想っていたりと、やっとフィオナも落ち着けるんだ。
「ダイスはどうしている?」
「ダイス殿も姫様から離れなくて、まぁ、それは仕方ないですね。番になったばかりで、しかも姫はまだ不安定な立場ですからね。彼女を守るためにも今はそれくらいがちょうどいいかと」
ダイスが姫と……。
昨日ディーから聞いた長い話は、姫の話が多かった。そこで俺はすげぇ驚いたよ。まさかの姫の番相手がダイスだったなんて。ディーと姫の冷めた関係、そして不安の中でも優しくしてくれた唯一の男ダイス、恋に落ちないわけがないよな。うん。
でも腑に落ちないことがある。ダイスは姫と結婚するためにディーと俺を支えてくれていたんだよな? それなのに、姫と最初に会ったとき、オメガと遊んでいたことを怒ったって話をしていた。ダイスはいったい何でそんな誤解を姫にされてしまったのかって、ディーに聞いたんだ。
そうしたらなんと、ダイスはあくまでも俺がディーに惚れないと、ダイスと姫の関係も始まらないと言っていたそうだ。まぁ、そういう話になっていたからそうなんだろうけど。
初めの頃の俺の警戒心を見て、これは無理じゃないか? とダイスが思ったんだって。ダイスはディーが俺を落とせない限り、よそで遊ぶと宣言して、ひとり夜遊びに繰り出した。それを知った姫が、ディーに早く落とせ早く落とせと催促の手紙を連日のように送り続けていたらしい。姫も、もしかしてダイスに影でもつけていたのかな?
ダイス……俺には男前な優しい男に見えたんだが、お前は遊び人だったのかーい? 紛らわしいことするなよ。姫のあの言葉は、俺がディーの遊び相手で、見限られたっていうようにしか聞こえなかったんだからな!
そんな感じで浮気性のダイスを怒って、プロポーズさせて、番契約を結んだ姫。俺は同じオメガとして尊敬しかなかった。俺がそんなことを脳内で考えていたら、伯爵夫人が話を続けた。
「カロライン姫の契約の証も落ち着いて、痛みも治まったようです。それから妊娠もきっと望めると思います」
「私の結婚の方が先になるか、姫の妊娠が先になるか、楽しみだな」
「ええ、そうですね。ただシン君の発情期を考えると、そんなに猶予はないかと思います」
「えっ、俺の発情期……ですか?」
先生は俺に向き合った。
「そうだよ、代々王族の結婚は同時に番契約がなされる」
「そんなうまく、いくかな?」
「いかせないとだめだよ。今回は姫の番、そして殿下の番が同時期でないと、発表できないくらい大変なことが起きたんだ」
そうだよな。両国を結ぶ大切な結婚を二人して破ったんだ。姫の番契約は、今はまだ王宮の大臣たちだけにしか知らされていない秘密事項だった。
俺とディーの初めての交わりは、まさかの発情期なのか……。ああ、ついに俺もディーと体が結ばれる時が近づいてきた。散々待たされ過ぎて、よく分からない感情になっていたが、やはり緊張もあるし、そのときうまくできるのか不安もあった。俺は思わず隣に座るディーの手をぎゅっと握った。
「夫人、あまりシンを脅すな。大丈夫だ、ここで少しシンと過ごしたら、王都に戻って色々と片付けるから。後は私に任せてくれ、発情期には必ず間に合わせる」
「殿下、そうですね。まずはやっと結ばれたお二人がゆっくりと過ごすことも大切です。王都に戻ったら、それに妃殿下になったらシン君はもっと大変ですからね、今だけは心安らかにお過ごしください」
そんな話で会話は終わった。
「ああ、アストン殿でしたら、やっと解禁されたと喜んで、フィオナ殿を連れて馬で先に屋敷へと戻ってしまいました。私たちは馬車で来たんですよ」
「そうか、アストンは……今頃フィオナを抱いているな」
「抱いていますね……」
「ええ、そりゃぁ、抱いておりますよ」
なんの話だよ。三人揃ってアストンがフィオナを抱いている話になってしまったよ。アストン、君の行動が全てばれているみたいだよ。
でも二人もやっと結ばれるときがきたんだな。俺は素直に嬉しかった。フィオナはひとり秘密に耐えて後宮で過ごしていたんだ。それに俺のことを考えてくれたり、会えないアストンを想っていたりと、やっとフィオナも落ち着けるんだ。
「ダイスはどうしている?」
「ダイス殿も姫様から離れなくて、まぁ、それは仕方ないですね。番になったばかりで、しかも姫はまだ不安定な立場ですからね。彼女を守るためにも今はそれくらいがちょうどいいかと」
ダイスが姫と……。
昨日ディーから聞いた長い話は、姫の話が多かった。そこで俺はすげぇ驚いたよ。まさかの姫の番相手がダイスだったなんて。ディーと姫の冷めた関係、そして不安の中でも優しくしてくれた唯一の男ダイス、恋に落ちないわけがないよな。うん。
でも腑に落ちないことがある。ダイスは姫と結婚するためにディーと俺を支えてくれていたんだよな? それなのに、姫と最初に会ったとき、オメガと遊んでいたことを怒ったって話をしていた。ダイスはいったい何でそんな誤解を姫にされてしまったのかって、ディーに聞いたんだ。
そうしたらなんと、ダイスはあくまでも俺がディーに惚れないと、ダイスと姫の関係も始まらないと言っていたそうだ。まぁ、そういう話になっていたからそうなんだろうけど。
初めの頃の俺の警戒心を見て、これは無理じゃないか? とダイスが思ったんだって。ダイスはディーが俺を落とせない限り、よそで遊ぶと宣言して、ひとり夜遊びに繰り出した。それを知った姫が、ディーに早く落とせ早く落とせと催促の手紙を連日のように送り続けていたらしい。姫も、もしかしてダイスに影でもつけていたのかな?
ダイス……俺には男前な優しい男に見えたんだが、お前は遊び人だったのかーい? 紛らわしいことするなよ。姫のあの言葉は、俺がディーの遊び相手で、見限られたっていうようにしか聞こえなかったんだからな!
そんな感じで浮気性のダイスを怒って、プロポーズさせて、番契約を結んだ姫。俺は同じオメガとして尊敬しかなかった。俺がそんなことを脳内で考えていたら、伯爵夫人が話を続けた。
「カロライン姫の契約の証も落ち着いて、痛みも治まったようです。それから妊娠もきっと望めると思います」
「私の結婚の方が先になるか、姫の妊娠が先になるか、楽しみだな」
「ええ、そうですね。ただシン君の発情期を考えると、そんなに猶予はないかと思います」
「えっ、俺の発情期……ですか?」
先生は俺に向き合った。
「そうだよ、代々王族の結婚は同時に番契約がなされる」
「そんなうまく、いくかな?」
「いかせないとだめだよ。今回は姫の番、そして殿下の番が同時期でないと、発表できないくらい大変なことが起きたんだ」
そうだよな。両国を結ぶ大切な結婚を二人して破ったんだ。姫の番契約は、今はまだ王宮の大臣たちだけにしか知らされていない秘密事項だった。
俺とディーの初めての交わりは、まさかの発情期なのか……。ああ、ついに俺もディーと体が結ばれる時が近づいてきた。散々待たされ過ぎて、よく分からない感情になっていたが、やはり緊張もあるし、そのときうまくできるのか不安もあった。俺は思わず隣に座るディーの手をぎゅっと握った。
「夫人、あまりシンを脅すな。大丈夫だ、ここで少しシンと過ごしたら、王都に戻って色々と片付けるから。後は私に任せてくれ、発情期には必ず間に合わせる」
「殿下、そうですね。まずはやっと結ばれたお二人がゆっくりと過ごすことも大切です。王都に戻ったら、それに妃殿下になったらシン君はもっと大変ですからね、今だけは心安らかにお過ごしください」
そんな話で会話は終わった。
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