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第五章 王太子の恋 ~ディートリッヒside~
78、王太子のプロポーズ
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私はこれまでの自分の物語を、可能な限りシンに伝えた。
シンとの本当の出会い。カロライン姫との契約。フィオナとアストンの関係や、後宮を騙しムスタフ伯爵夫妻に秘密裏に協力をしてもらっていたこと。シンをエリザベスの親である王弟殿下の養子にして嫁にすると決めていたこと。そして姫とダイスの番契約が終わったらシンに全てを話すと決めていたこと。
初めからシンを愛していたことを。
私の話を真剣に聞いていたシン。途中、涙を流しても、それでもずっと聞いてくれていた。そして全てを聞き終えると――
「ディーは、バカだ」
「ああ、私はバカだ。こんなに大切な人に何度も涙を流させた」
シンは、また涙を流した。
「ディーは、ほんとにバカだよ」
「ああ、本当に私はバカだ」
誰よりも美しく、誰よりも優しい、私の唯一。
そんな彼が、頬を染めて私に言う音色は、愛の言葉にしか聞こえてこない。私を深く愛しているとしか聞き取れない。私はこんなに思慮深い人を、どれだけ傷つけてきたのだろうか。これからは決して、シンを悲しませない。シンに辛い想いをさせない。愛で包むと、心に誓った。
「俺は、何も知らされず、ディーを憎んだこともあった。ディーを好きにならないように必死に抵抗した」
「ああ、全て私が悪かった」
好きになってくれたのに、それを抑えようと苦しんでいたシンを私は知らなかった。
「言ってくれたら、俺だって、俺だってディーを支えられたのに!」
「すまない。全てはシンを守るためだったんだ」
「その話は聞いた! でもっ、でも、俺は悔しいよ。初めから知っていたら、フィオナに嫉妬することもなかったし、姫のことだって」
「嫉妬……してくれたのか?」
「醜いくらいにね」
シンのその感情が嬉しくて仕方なかった。フィオナもそんな嬉しいこと、教えてくれてもいいのに。告白をして、泣いているシンがとても可愛かった。
「シン、これが私の全てだ。もう隠し事はない」
「うん」
シンは戸惑いながらも、全てを受け入れてくれた。私はシンを見つめた。シンも照れながら私をじっと見つめ返してくれた。とても美しい、美しいこの人に、全てを知ってもらった今、改めて彼に求婚をする。
グリーンの透き通る瞳、そして私が愛してやまないこの長く赤く茶色の美しい髪。私の唯一の最上の香りを纏うこのオメガを、もう二度と、絶対に離さない。
私は椅子から降りて、シンの前にひざまずいた。
「シン・ラードヒル殿。どうか、どうか私と結婚をしてください。たったひとりの王太子妃として、番として、このザインガルド王国第一王子である私、ディートリッヒ・ザインガルドの側にいて欲しい。一生をこれから共に生きて行こう。貴方を心より愛している」
「……っ!」
彼の可憐な頬を触り、私は愛を誓った。シンの大きな目が一層大きく開いて、そこから大粒の雫が流れた。その雫が落ちるのがもったいないと思うほどに、美しかった。
「ディーは俺が知らない間に、王太子妃になる教育してたんだろ。それなら……なるしかないだろ?」
「シン……、シンありがとう!」
シンは少し照れたように、泣きながら笑った。その姿が今まで見てきた中で一番美しかった。
「ディー、愛してる。やっと、やっと言えた、うう、俺っ、ずっとディーにそう言いたかったんだ。愛してるってずっと言いたかった。これからはもう、誰に遠慮することなく言ってもいいんだね」
「ああ、むしろ言って欲しい。こんなに嬉しい日はないよ、シン」
シンは椅子から飛び降りてきて、勢いよく私に抱きついてきた。その勢いで、二人で崩れ落ちて笑った。そしてシンは私の胸に顔を埋める形になり、私は下からシンを強く強く抱きしめた。
「俺も……凄く嬉しい。ディー、俺をディーのお嫁さんにして……本当に、好き。ディーが世界で一番好きっ」
「シン、シン、嬉しいよ。シン以外に私の嫁はいない。もう離さない! 愛してる!」
私はシンに誓いのキスをした。
もう二度と逃がさない。シンを二度と泣かせない。この手の中で一生幸せに過ごしていけるように……。
私はこの国で最愛を見つけた。シンと結婚をして、番になって、子供をつくり、この国をシンと支えていく。シンはきっと素晴らしい王妃になる。本当は王宮にずっと囲って何もさせずに側に置いておきたい。それがアルファの本音だが、この男が国のために私のために頑張っていく姿も見てみたいと、夢を見てしまった。
シンならばそれができる。こんなに逞しく美しいオメガは他にいない。
王太子妃としても、恋人としても、妻としても、どんな形でもシンはきっと私を満たしてくれる。彼に見合う男になるように、私もこれから精進しなければと思った。こんな素晴らしい人に出会えたことに、深く感謝をして、彼をこれからずっと愛することを再度誓った。いや、何度でも誓う。彼なしではもうダメだ、この心はたったひとりのオメガに、シンに奪われてしまった。
「シン、愛している。私を受け入れてくれてありがとう」
「うん!」
そして、また神聖な口づけをした。
シンとの本当の出会い。カロライン姫との契約。フィオナとアストンの関係や、後宮を騙しムスタフ伯爵夫妻に秘密裏に協力をしてもらっていたこと。シンをエリザベスの親である王弟殿下の養子にして嫁にすると決めていたこと。そして姫とダイスの番契約が終わったらシンに全てを話すと決めていたこと。
初めからシンを愛していたことを。
私の話を真剣に聞いていたシン。途中、涙を流しても、それでもずっと聞いてくれていた。そして全てを聞き終えると――
「ディーは、バカだ」
「ああ、私はバカだ。こんなに大切な人に何度も涙を流させた」
シンは、また涙を流した。
「ディーは、ほんとにバカだよ」
「ああ、本当に私はバカだ」
誰よりも美しく、誰よりも優しい、私の唯一。
そんな彼が、頬を染めて私に言う音色は、愛の言葉にしか聞こえてこない。私を深く愛しているとしか聞き取れない。私はこんなに思慮深い人を、どれだけ傷つけてきたのだろうか。これからは決して、シンを悲しませない。シンに辛い想いをさせない。愛で包むと、心に誓った。
「俺は、何も知らされず、ディーを憎んだこともあった。ディーを好きにならないように必死に抵抗した」
「ああ、全て私が悪かった」
好きになってくれたのに、それを抑えようと苦しんでいたシンを私は知らなかった。
「言ってくれたら、俺だって、俺だってディーを支えられたのに!」
「すまない。全てはシンを守るためだったんだ」
「その話は聞いた! でもっ、でも、俺は悔しいよ。初めから知っていたら、フィオナに嫉妬することもなかったし、姫のことだって」
「嫉妬……してくれたのか?」
「醜いくらいにね」
シンのその感情が嬉しくて仕方なかった。フィオナもそんな嬉しいこと、教えてくれてもいいのに。告白をして、泣いているシンがとても可愛かった。
「シン、これが私の全てだ。もう隠し事はない」
「うん」
シンは戸惑いながらも、全てを受け入れてくれた。私はシンを見つめた。シンも照れながら私をじっと見つめ返してくれた。とても美しい、美しいこの人に、全てを知ってもらった今、改めて彼に求婚をする。
グリーンの透き通る瞳、そして私が愛してやまないこの長く赤く茶色の美しい髪。私の唯一の最上の香りを纏うこのオメガを、もう二度と、絶対に離さない。
私は椅子から降りて、シンの前にひざまずいた。
「シン・ラードヒル殿。どうか、どうか私と結婚をしてください。たったひとりの王太子妃として、番として、このザインガルド王国第一王子である私、ディートリッヒ・ザインガルドの側にいて欲しい。一生をこれから共に生きて行こう。貴方を心より愛している」
「……っ!」
彼の可憐な頬を触り、私は愛を誓った。シンの大きな目が一層大きく開いて、そこから大粒の雫が流れた。その雫が落ちるのがもったいないと思うほどに、美しかった。
「ディーは俺が知らない間に、王太子妃になる教育してたんだろ。それなら……なるしかないだろ?」
「シン……、シンありがとう!」
シンは少し照れたように、泣きながら笑った。その姿が今まで見てきた中で一番美しかった。
「ディー、愛してる。やっと、やっと言えた、うう、俺っ、ずっとディーにそう言いたかったんだ。愛してるってずっと言いたかった。これからはもう、誰に遠慮することなく言ってもいいんだね」
「ああ、むしろ言って欲しい。こんなに嬉しい日はないよ、シン」
シンは椅子から飛び降りてきて、勢いよく私に抱きついてきた。その勢いで、二人で崩れ落ちて笑った。そしてシンは私の胸に顔を埋める形になり、私は下からシンを強く強く抱きしめた。
「俺も……凄く嬉しい。ディー、俺をディーのお嫁さんにして……本当に、好き。ディーが世界で一番好きっ」
「シン、シン、嬉しいよ。シン以外に私の嫁はいない。もう離さない! 愛してる!」
私はシンに誓いのキスをした。
もう二度と逃がさない。シンを二度と泣かせない。この手の中で一生幸せに過ごしていけるように……。
私はこの国で最愛を見つけた。シンと結婚をして、番になって、子供をつくり、この国をシンと支えていく。シンはきっと素晴らしい王妃になる。本当は王宮にずっと囲って何もさせずに側に置いておきたい。それがアルファの本音だが、この男が国のために私のために頑張っていく姿も見てみたいと、夢を見てしまった。
シンならばそれができる。こんなに逞しく美しいオメガは他にいない。
王太子妃としても、恋人としても、妻としても、どんな形でもシンはきっと私を満たしてくれる。彼に見合う男になるように、私もこれから精進しなければと思った。こんな素晴らしい人に出会えたことに、深く感謝をして、彼をこれからずっと愛することを再度誓った。いや、何度でも誓う。彼なしではもうダメだ、この心はたったひとりのオメガに、シンに奪われてしまった。
「シン、愛している。私を受け入れてくれてありがとう」
「うん!」
そして、また神聖な口づけをした。
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